前途多難?事は素直に進まない…
とりあえず、じいさん'sの一人(1番偉そうなの)を連れて部屋の扉を開ける…
あっ…ノックしなかった…
まぁ良いか…あっちの世界じゃ無いし…
「待たせたの、この者が此度、異世界より召喚された勇者じゃ」
じいさん、いきなり話し始めるし…
あぁ…中に入ったら皆、唖然としてたよ。
「いきなり、すみません…なし崩しに紹介されてしまった勇者?…らしいです…」
言いながら見回してどんなメンバーか確認する。
全部で4人か…
まず大柄な剣士風の…お兄さんかな?オジサンって年には見えないし…
次にローブに三角帽子をかぶった、まんまアニメや漫画に出てきそうな魔法使いの女の子。
これで実はお兄さんが魔法使いで女の子が剣士だったらどうしょうかとも思うが、そんなドッキリは無いだろう…
で、最後にこっちには見向きもしないバカップル…
革鎧で軽装って事はシーフ、レンジャーの類いかな?
そんな風に考えていたら
「さて、ワシは一旦、席を外すが、直ぐに戻るので皆の者は今暫く此処で待っておれ」
とかなんとか言ってさっさと行ってしまった…
さて、色々と問題がある為に間がもたない…
でも最初に言っておかないと後で困るから、さっさと現状を伝えて判断は向こうに任せよう…
うん、それが良い…
「おい、あんた…」
ギャー!?先に声をかけられた~ッ!!
「そんな身なりだが勇者ってくらいだ…」
剣士のお兄さんが椅子から立ち上がる…
これは、お約束で『強いんだろう』とか『手合わせしないか』言ってくるパターンだ!?
「そう言うのはやめときましょう、どう頑張っても貴方には勝てませんし…」
スライム以下の自分に、こっちの世界の本物の剣士なんかとやり合ったら撫でられただけで死にかねない…だから先手をうって断っておくつもり…が…
「俺には勝てない?大した自信じゃないか…って事は、相当すげぇ祝福を貰ったんだろうな」
え?何でそうなるのかな?『貴方じゃ勝てない』では無くて『貴方には勝てない』ってちゃんと言ったはず…
うん、間違い無い…
焦って周りを見てもよく考えたら現時点で、うちの味方は誰も居ない…
バカップルは相変わらず、こっちには見向きもしないし魔法使いの娘と目があったが、どうしたの?って感じで首をコテンと傾げてる…
うお~ッ!!何か凄く可愛い!!…が今はそんな場合じゃない!!
間近に迫った生命の危機に思考速度がメタリックな宇宙の刑事さんの変身時間くらい加速中だ!
何がいけなかった?言葉の壁?それは罰ゲームで無効化してるはず…だとするとニュアンス?
もう一度、自分の言葉を反芻してみる
『貴方には勝てません』
あぁ…間違えてるじゃん…
凄く些細な違いだけれど『貴方に』なら、ほぼ誤解されなかったと思う。
これが『貴方には』だと受ける側によって良くも悪くもとられる『自分は貴方には』勝てないととるか『貴方には自分に』勝てないととられるか…
とにかく、さっさと間違いを訂正しよう!!
「すみません、誤解されたなら謝ります。正確には、うちでは貴方には勝てないと言いたかったのですけど…」
「は…?」
「申し訳無いですが祝福とやらが何なのかまずわかりませんし、そんなモノを貰った覚えもありません…」
あ、剣士の兄さん固まった…
そんなに凄い事は言ってないんだけど?
「ちょっと、待てッ!!召喚された勇者ってのは必ず何かしらの祝福って言われるスキルをもらってるのはガキでも知ってる常識だぞ!!貰って無い訳がないだろ!!」
そう言う事か、この世界では【召喚された勇者】は【強力な祝福】を持っているってのが世間に広まって常識にまでなっていると…
「でもその常識とやらは、きちんと召喚の儀式なり何なりを完了した勇者様に適用されるもので、もしも儀式の召喚の部分だけで終了したら、どうですか?だいたい貴方は召喚の儀式の手順って知ってますか?」
言われて考え込む剣士の兄さん…この人も案外すなおだなぁ…と…こんな事で時間をとっても仕方がない。
「まぁ、そんな訳で、うちは何の力も無い異世界の役立たずなオジサンなんですよ。で、今から話すのが重要なのですが…あぁ~自己紹介もして無いのでなんですが剣士のお兄さんとそっちの魔女ッ娘は何か致命的な失敗しませんでしたかね?貴族怒らせたとか…あっちのバカップルは見ただけで理由はわかるからいいんだけど…」
とりあえず、あとどれくらいでじいさん'sが帰って来るかわからない…だいぶ遠回りをしたけどもとのルートに戻れたと思うから自分の思惑を話してしまおう。