6話 あっという間の30年
学園生活はあっという間だった。いろんなイベントがあったがボクはほとんど参加していない、ずっと勉強していた。それはもう友達出来ないくらい勉強した。
筆記試験は全てトップ、勿論主席で卒業だ。魔法も全属性をトップレベルで会得している。そして無事に希望していた王立図書館へ就職する事が出来た。
司書の仕事の合間や休日は魔法の研究と知識の探求に費やす。給料もある程度を実家に送金し、残りは念の為に貯蓄してある31歳の誕生日を過ぎて連絡が取れなくなったら手紙とともに全て家族へ送るように手配もしてあるので安心だ。
「本当にあっという間だったな。ちゃんと神域へ行けるといいんだが。」
この30年間で本当に沢山の事を知った。そして経験した。まず『無限の魅力』の効果はすごい、どこへ行ってもみんなが好意的に接してくれる。男性でも女性でも商店では毎回おまけが付いて来るし酒場に行けば必ず女性から声を掛けられる。おかげで酒場には行けなくなってしまった。
なぜなら酒と女の誘惑に負けそうになるからだ。あれは本当に恐ろしい経験だった。なにがあったかは伏せさせて貰うが、とにかく酒と女は本当にろくな事にならないという事を理解して欲しい。
そして人間だけではなく動物にも好かれるみたいだ、すこし撫でてやるとすぐに懐かれてしまう。おかげで一人でも寂しくなかったので助かったのだが。
そしてこの人生の一番の収穫は間違いなく『叡智』のスキルを覚えた事だろう。司書長になり禁書庫への出入りが可能になってから数年、すべての本を読み終えた瞬間だった。突然激しい頭痛と睡魔が襲い意識を失ったのだ。目が覚めた時には頭が冴え生まれたばかりの頃のようにすっきりとした気分だった。
「なんだこれは、頭が軽い!一体なにが起きたんだ・・・!」
『叡智』・・・数多の書物を記憶し、必要な時に必要なことだけを理解する事が 出来る。
ステータスを確認するとスキルが増えていた。それを見た瞬間に遺失スキルの『叡智』である事が理解出来た。禁書の中、古代のスキル辞典に記載されていたのだ、このスキルは書物を10万冊読み、その内容をきちんと理解する事で発現する、現代では取得している者がほとんどいないスキルだったのだ。
「ははっ、すごいぞ!今まで書物から得た知識をより正確に理解出来る!」
この30年努力して本当に良かった。俺は1回目の地球の人生ではまったく努力しなかった、なるようになると人生を甘く見て、そして失敗した。運良く転生してからは幸せになる為に沢山勉強した、この人生で童貞を捨てる事は出来なかったけど絶対にここへ戻ってくる、そして絶対に幸せな人生を掴んでみせる!
「俺はもう一度この世界へ帰ってくるからな!」
空を見て力一杯に叫んでやった。充実した気分だ。あとはこのまま神域からの迎えを待てばいい、そうすれば転生できるはずなのだ。
「大丈夫だよな、きっと神様は見ててくれるよな。」
「とうさん、かあさん、戻ってきたらいっぱい親孝行するからね。地球のとうちゃん、かあちゃん、もうすぐ帰るよ。駄目な息子だけど今度こそちゃんと親孝行するから勘弁してくれよな。」
そして期待と不安を抱えて眠りについた。