5話 1回目の学園生活
「さて、今日は入学式か楽しみだな。」
ボクは王都に着いた日に会ったクロの事を考えていた。童貞を守ると誓っていてもあんな美少女を見たら心が揺れてしまう、しかも耳も尻尾もある、モフモフが出来る!どうしても気持ちが昂ぶってしまう。しょうがないよね童貞だもん。
学園の中央広場はすでに多くの生徒で溢れていた、軽く見回しても千人以上は居るんじゃないだろうか。種族もさまざまだエルフやドワーフ、猫獣人や鳥獣人なんかも見える、初めて見るような種族の子もいるんだな。
「ゴホン、ようこそ『シンフォニア学園』へ!ワシが学園長のオルガモ=シンフォニアじゃ。諸君は今日から我が学園の生徒となる。夢と希望を持って勉学に励むがよい!全ての道は己の力で切り開くのじゃ!」
学園長はエルフのおじいちゃんなのかな?すごい迫力だった。『鑑定』をかけて見たけどまったく見えなかったな、しかもこんな大勢の中でしっかりとボクの目を見てきた、もしかしたら気付かれたのかもしれないな。気をつけよう。
まずは適正職業診断、そして属性診断、筆記試験、体力測定だったな。ここはしっかりやらないとな。ボクの狙いは文官コースだ、このコースは戦闘の授業がなく将来の官僚を目指すクラスになる。童貞を守る為にもこの人生でモンスターを倒す訳にはいかないのだ。
適正職業診断の結果は「魔法使い見習い」。称号の『魔法使い』があるから当然といえば当然の結果かもしれない。そして属性診断は基本属性全てに反応した。
「まさか火・水・風・土・光の基本属性全てに適正があるとは、かなりの素質ですね、すぐ学園長へ連絡して下さい。」
担当の人が慌てている。それもそのはずで「魔法使い見習い」に適正が出るのは10人中2人ほど、さらにその中で2属性に適正があるのは1/10、3属性なら1/200、4属性だと1/5000、5属性全てだと1/10000という数字になる。この学園でも数十年に1人いるかどうかなのだ。
ちなみに筆記試験はほぼ満点、体力測定は並という結果だった。全ての検査が終わった後にボクは学園長室へ呼び出されていた。
「ふむ。お主がジンか。全属性に適正があったそうじゃな。お主はどのクラスに行きたいのじゃ?どこへ行っても優秀な成績を収めると思うが。」
「はい、わたしは文官コースを希望します。将来は図書館の司書になりたいのです。そしてあらゆる書物を読み、魔法を研究したいと考えています。」
勿論考えがある。王立図書館には禁書があり、一部の人間しか立ち入る事が出来ない、そこにはきっと役に立つ書物があるはずなのだ。今回の人生で、出来るだけこの世界の知識と魔法の勉強をしたいのだ。その為にも学園で主席となり王立図書館に司書を目指す。
「なるほどの、魔法の研究がしたいか。それならば確かに司書はいいかもしれんの。しかし勿体無い、お主ならばいずれ宮廷魔術士にもなれそうなものを。」
学園長が鋭い眼光でこちらを見ている。この感じはもしかして・・・。
「まぁ、よいであろう。文官クラスへ行くがよい。そして正しい魔法の使い方を学ぶのじゃぞ。」
どうやら学園長にはボクが『鑑定』を使っていた事を気付かれていたようだ。
優しい口調でしっかりとお灸を据えられてしまった。
中央広場に戻ると丁度クラス割りが発表されている所だった。どうやらあの子は冒険者コースのようだ、残念だが今は諦めるしかないな。気持ちを入れ替えて明日からしっかり勉強しよう。