31話 クロ覚醒
「よし、じゃあ次の学校の休みの日はダンジョン行こう。だから、それまでクロの覚醒とすぐに出来るスキルの鍛錬をやるよ。」
「よ、よろしくお願いします。お手柔らかに・・・。」
「クロ、君の中にはものすごい才能が眠ってるんだ。後はそれに自分で気付くだけなんだよ。だから君の為に俺は全力で行くよ。」
クロがこの世の終わりみたいな顔してて、ちょっと笑ってしまった。そしたらローズに叩かれてしまった。取り合えず今日は解散してまた明日みんなで集まる事にした。
「じゃあ訓練場に行こうか。大丈夫、怪我してもちゃんと治せるから。」
「そういう問題じゃニャいんですけどね・・・はははっ。」
乾いた笑いのクロを引き連れてローズと3人で訓練場に向かう。その間ずっとローズが励ましていたがクロの顔色は優れない。
「じゃあ行くぞ。自分の力を信じて、その力を感じるんだ!」
俺はスキルを使わずにまずは軽く殴りかかる。普通の人と同じくらいのスピードならクロも簡単にかわせるようだ。パンチとキックをギリギリかわせるくらいのスピードと力で連続して繰り出す。かわし、流しながら耐えているがどこか自信がないように見える。
「クロ大丈夫だ。当たっても痛くない。それにちゃんと動けてるじゃないか、君は強い。そして才能があるよ。」
俺はクロを鼓舞しながら徐々にスピードを上げていく。しかしクロもそのスピードに着いて来ている。これなら大丈夫だ。俺は最後にちょっとだけ強めの一撃を繰り出す。
「うっ!?」
俺のパンチはクロの左肩に直撃した。
「もう終わりか?」
「もう1回お願いします!ちょっとだけ分かって来た気がするんです!」
クロの表情が変わった。目に力がある、これなら彼女は覚醒出来るかもしれない。俺は最初から強めの攻撃を繰り出していく、右のパンチを受け流し左のキックをしゃがんでかわす。そのまま踵落としに行くが受け止め俺を弾き飛ばそうと力を入れてきた。逆らわず後ろに飛ぶ。クロは加速し俺の着地に合わせて右腕を思い切り振りぬいてきた。俺はその手を受け止める。
「やるじゃなか!最後だ。全力の右ストレートを放つ、受け止めてみろ!」
俺は一言告げて右ストレートを全力で放つ。クロは集中し身体の正面で腕をクロスさせ防御の構えを見せる。そして俺のストレートがヒットしクロは吹き飛んで行った。
「クロ!?ジンやりすぎじゃないのか!」
ローズがクロに駆け寄って行く。
「ローズまだだ!まだ終わってない!」
クロは立っていた。満身創痍、もしかしたら骨が折れてるかもしれない、それでも立っている。彼女の目は熱く燃えている、目は死んでいない。
「掴んだようだな。よくやった、お疲れ様だクロ。」
「はい・・・。」
クロは駆け寄ってきたローズに抱き留められ意識を失った。俺はクロに回復魔法を掛け、傷を癒した。
「頑張ったなクロ、見事だった。私はお前に教えられたようだ。」
その日はローズにクロを任せてそれぞれの部屋に帰った。ローズにはクロの事を考えながら光魔法を使い続けるように指示しておいた、相手の事を思って魔法を使う事によって成長しやすくなるのだ。
☆
クロが覚醒してから3日、それぞれには課題を出しておいた。そして今日はいよいよダンジョンに挑戦する日だ。
「じゃあ今から転移するよ、緊張しなくても平気だから俺の手を取って。」
そして俺達は懐かしいダンジョンへと転移した。まずは1人だけLvの低いクロが先行して進む事になる、祝福があるのでLvは上がりやすくなっているはずだが、やはり実際に戦闘して経験を積むのも大事だ。経験がないといざという時に身体が動かないからだ。
今日はスノーとイズミも出して周囲の警戒とサポートをしてもらっている。
「狼の子も居たんですね、どの子もとってもかわいいですね!」
クロはイズミを見た瞬間にテンションが爆発した。ローズも興味があるようでチラチラ見て落ち着かない、多分照れがあって素直になれないのだろう、かわいい奴だ。進行自体は何事もなく順調に進んでいる。
大体真ん中くらいまで進んでこの日は終了にした。あまりやりすぎて身体の調子を悪くしても意味がないので限界のすこし手前で切り上げる。この調子なら計画より早く成長出来そうだ。
「また次の休みにダンジョンに来る。今日は疲れを残さないように早めに寝るように。」
2人は素直に頷いて来た時と同じように手を取り学園へと転移で帰宅した。
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