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勇者天聖バクテンオー  作者: 獅子糖
とある一日
7/23

5(本番).灰ぱーナチュラル

ほいじゃ、もぉちょっくらワシの話に付き合ぅてくれや。

 ワシら、今日も今日とてレヴォルドめらとやり合ぉてきての、さっきまでその後の手入れをしとったんじゃ。今日のワシらは2番手じゃった。なんぞ急いどるみたいじゃったんでな、1番手は白いの―メタ公に譲ってやったわ。

 じゃが、さして待つことも無くそれも終わって、今は行きつけの山へ移動中(つーりんぐなぅ)じゃ。ワシは自然の中におるのが好きでの、こん好き具合に関しちゃ人には負けん自信があるんじゃ。じゃからそん意気込みを表す為んな、”超”自然主義を自負しとるんじゃ。

 じゃからこん道程もワシの楽しみみたいなもんなんじゃ。

 しっかし博士んとこから山まではちぃと距離があっての、行くんは本体のままでなんじゃ。

 ワシの身体はグレーを基調とした色ぉのオフロードカーでの、山道などむしろワシのフィールドじゃ。

 ついでに言えばの、水陸両用じゃ。


「皆は今日も元気にやっとるかのぉ」


 そうして山への入り口が見えてくればワシの心はまるで羽毛に抱かれているかの様に安らいでくるのじゃよ。

 羽毛に抱かれる感覚というものはイマイチ分からんがのぉ!

 ワシらの身体を包むだけの羽毛なぞそうそう集まるわけがないしのっ!


 ◆


 やはりこの山は良い所じゃ。空気も澄んどるし、動物たちも伸び伸びしちょる。

 ここらの動物(もん)とはもぉかれこれ10年近い付き合いになるのかの。

 なんと言うてもワシが仮の依代、ユニット:ビースト(獣と言いつつ人型じゃがの!)で活動しとった頃からじゃからな。ほんに時が経つのは早いもんじゃ。

 陸坊はまだ生まれたばかりじゃったが、あと2年もすれば小学校も卒業じゃて・・・ワシらも歳ぃ取るはずじゃ。

 それにじゃ、この山で初めて共んなった鹿三郎は未だに元気んしちょるが、これまでん寿命やらなんやらで亡くのぉたもんらも少のぉないしの、生きとっても老衰で動けのぉなっとるもんもおる。ワシもちぃとばかしは共ん協力できるが、山のもんらには山のもんらのやり方やルールがあるんじゃ。必要以上ん手出しはせん様、鹿三郎らから言われてもおるしの・・・。

 理解も納得もしとるが、寂し思ぅんくらいは許されてもえぇじゃろ。


「ぴー♪」

「おぉ兎吾郎(うさごろう)よ、今日はなんぞ機嫌が良さそうじゃが、何かあったんかの」


 しかし、じゃ。

 別れもあれば出会いもあるもんでの。こん兎吾郎もここ1年くらいで良ぉ話をする様んなったんじゃ。


「ぴ~ぴ~」

「なんとっ、よぉやっと生まれたんか! そいつぁめでてぇの! ほいで、母親はどがぁな様子じゃ?」

「ぴーっぴっ」

「うぅむ、何よりじゃ、何よりじゃ。 どぉれ、ワシも一つ祝ってやるとするかの」


 野兎の兎吾郎が届けてくれた話はワシにとっても実に喜ばしいことじゃった。

 元々どこぞからこの辺りに入り込んで悪さしとった野良犬(♂)がおったんじゃが、山の者たちが気が付かんうちにいなくなりおったと思われとった。じゃが最近になってソイツが番いを連れて戻りおってな。しかもその番いは身重じゃった。これはいかんと山のもんたち集めて、番いのメスの安全を確保しとったんじゃ。

 兎吾郎の話はそん仔犬(こども)が無事に生まれ、母犬(ははおや)も元気そうじゃという知らせじゃ。

 そいでこん話には実は裏があっての・・・あん悪タレばこっそり共らん縄張りから離したんはワシなんじゃ。あまりんも目についたもんじゃからな、連れ出して思ぅ様に説教くれてやったんじゃ。したらしばらく姿を見ん様になった・・・ちゅうな。

 そん小僧のことば気になっちょったんもあって、まぁ帰って来よったときはちぃと過保護んなってしもぉたんはワシも自覚しとるんじゃがな。


「ぴっ」

「? どうしたんじゃ」

「ぴぴーっ」

「おぉ、そうじゃそうじゃ。 これはすまんかったのぉ」


 悪タレんこと考えとったら、行き道しないに兎吾郎が足を止めこちらを振り向くから何じゃと思ぉたが、そうじゃったな。こっからは道を外れるでな、この格好(くるま)では進めんのじゃった。

 いやさ進もうと思ぉて分け入れば進めるんじゃが・・・それじゃと無駄ぁに木を倒さにゃならんし、倒れた木ぃに共らが巻き込まれでもしょうもんなら一大事じゃ。

 然らば。


変ー身(チェーンジ)っ!」


 掛け声と(とも)にワシの身体が変化してゆき―


 ――ガシャン ガショッ ウィーン ガキン!!


 ほんの数瞬ばかりでそこには二足歩行のぶち格好良かロボットが現れたんじゃ!

 まぁワシの事じゃがなっ!

 


「待たせたの。 ほいじゃ、ひとっ走りと行こぉかの。 兎吾郎こっちん来るんじゃ」

「ぴ」

「うしっ、しっかと掴まっとるんじゃぞ」


 ワシは兎吾郎を抱えて木から木へと跳び移って移動したんじゃ。

 なに?走っとらんて?

 そがぁなこと気にせんでえぇんじゃ!



「ひゃんっ」

「くぅん」

「くぁ~・・・」

「ぅおんっ」


 着いた先んおった母子らは、兎吾郎ん言うとった通り産後の経過は悪ぅはなさそうじゃった。

 しかも三つ子とぁ・・・これは百歳まで長生きしそうじゃな!縁起が良か!


 しっかしのぉ・・・山の共らが動けん母犬の為か、食いもんを集めてきとるの。共らでも普通じゃったらこがなことはしないんじゃが・・・これは鹿三郎にゃワシがこの小僧を逃がしたこたぁバレとるかもしれの。

 ・・・ま、えぇかの。折角の気遣いじゃ、あえて聞く必要もないじゃろ。


「それじゃったらどれ。 ワシからは餞別代わりん母子の健康診断でもしちゃろぉかの」


 む、見くびるでないぞ?ワシはこれでも特別高性能なロボットなんじゃ。

 仮の依代(ビースト)の身体ならいざ知らず、本体(こっち)なら生き物の健康状態を見るなぞ朝飯前じゃ。

 朝飯食ぅたことないがの!


「どれどれ・・・」

「くぅ~ん」

「ぬぉ!? こ、これは・・・!」

『!?』

「母子共に経過は順調じゃの。 良き哉、良き哉じゃ」

『・・・・・・』


 ふぅむ・・・周りの共らん目ぇが急に冷やかになったの。

 これはあれじゃ。ザーの字やルー助辺りがよぉカ太郎(”ちからたろう”や無かぞ?)に向けとる目ぇじゃ。


「ワシとてジョーク程度は口にするでの。 そがぁな目ぇで見んでも良かろぉて」

「わ゛ふっ」

「くぃーっ」

「ふおっ! なんじゃ鹿三郎、お主もおったんか。 おるんなら先に声をかけておいて欲しかったの」

「・・・」


 むぉ。なんじゃ鹿三郎の目が「今かけただろ」とでも言うてそぉな気がするの。

 気がするだけじゃがの!


「くぃ~~~~~・・・」


 おぉ、おぉ。鹿三郎の視線の温度がみるみる下がっちょる。

 ここは早いとこ連れ出して、有耶無耶にしちゃる作戦で行こぉかの。


「子供らも眠そうにしとるし、ワシらはこれで失礼するでの。 小僧や、嫁さんと子供らをちゃんと大切にするんじゃぞ?」

「ばぅ!」

「それとの、次ん何かしおったら・・・そうじゃの、ワシがその子供らを掻っ攫ぉて行くからの」

「わひゅ!?」

「がははははは! 別ん生きて行く為ん必要なことじゃったら何も言わんからの。 あくまでいらん悪さをしおったらじゃ。 何、分からんことがあれば鹿三郎にでも聞けば良いじゃろぉし、たまにならワシもおるでの。 それにの・・・」

「(ごくりっ)」

「嫁さんも子供らもおれば寂しないじゃろ?」

「わ゛、ゎふん・・・」

「がははは! 分からんとでも思ぉとったかの? ま、また来るでの、元気ん嫁さんらを守っとるんじゃぞ」

「くぃーーっ」

「ぴぃー!」


 ワシらは最後に一声ずつかけ、兎吾郎を抱え直して鹿三郎ともっと奥ん方まで進みだしたんじゃ。


 これからワシはあんまし共らが食わんよな木の実やら野草やらを集めて、ささやかな宴会の準備じゃ。

 あまり遅ぉなると他の天使らや(あね)さんらはともかく、陸坊が心配するでの。ワシはえぇとこで切り上げて引き上げるつもりじゃから、その詫びも兼ての食事調達じゃ。

 それに小僧(しゅやく)は不在じゃがその分ワシが賑やかしたるからの、ささやかとは言ぃおるが静かではおられんじゃろ。そうやって騒いどれば、どうせそのうち他ん共らも集まって来るじゃろぉしな。

 ほいじゃ、早速もう一仕事頑張るとするかの!



 はて?ワシがどうやって共らと話しとるか、じゃと?

 そげなもん、念話(テレパス)に決まっとるじゃろ。

 

自然が好きと主張する為「超自然」を誤用していたが、いつの間にか正しい意味での超自然的能力(テレパスとか他にも)を得ていたというお話。

天使の口調がうっとおしいというか胡散臭いというかうzt(検閲削除)のばっかりですね・・・

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