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勇者天聖バクテンオー  作者: 獅子糖
とある一日
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3.侵略者の活動事情

 我が名はユリア・カレント。選ばれし者が集う『革命家』(レヴォルド)の幹部が一人。


 私の任務はにっくき(てんし)たちの観察と情報収集。加えて現地(にほん)の諜報活動もしているわ。

 天使たちに関しては主にその弱点となり得るものを探っている。如何にして奴らを下すか、私の作戦行動にかかっていると言っても過言ではないわね。

 現地の諜報活動は生活水準、文化、思想といったこの地に根差しているモノ、コト全般を対象としているわ。


 さて諸君。ここまで聞けば私の役目の重大性が分かってもらえるでしょう。

 ・・・なに?分からないですって?

 そこは嘘でも分かったことにしておきなさい!話が進まないでしょうっ!


 ん、んんっ!

 さて、ここまで聞いて私の役目の重大性をしかと、し・か・と!理解した諸君。

 私が今何処にいるか分かるかしら?

 ふふふふふ・・・聞いて驚きなさい!

 私はっ、今っ、天使どものっ、最・大の弱点と言える、『天城陸』と同じ教室にいるのよ!!!


「陸君、今日も一緒に帰っても良い?」

「うん、もちろん」


 ふ、ふはははははは!どうよこの私の手腕は!このちびっ子めは何の疑いも無く私に付いて来よるわ!

 私だからこそできるこの鮮やかに、流れる様に、敵の懐に入り込む様を褒めても良いのよ?ん?ん?


「? どうかしたの、莉愛ちゃん?」

「にゃ・・・っんでもない、よ? あ、あは、あははははは・・・」

「そう? だったら良いけど」


 ふぅ・・・危ない危ない。思わずニヤけてしまっていたようね。


 いったい盗んだセフィラをどんな使い方しているのだが、非常に屈辱的なことに戦闘に関して私たちは天使たちに遅れを取ってしまっているのが現状なのよ。そんな中で戦う力を持たないちびっ子は必ずや天使たちを出し抜く鍵となるわ。鍵っ子というやつね。

 私はこのか・・・ちびっ子から決定的な天使の弱点を探る為、こうしてクラスメイト、神戸莉愛として潜入し近付いている。

 ん?そのまま人質にすれば良いだろって?


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対に断わる・・・。


 かつて私がまだここに潜入する前、この学校全体を人質として取った事があったのよ。

 結果は・・・・・・・・・いや、マジで思い出したくない・・・本当・・・あれは悪夢以外の何物でもなかったわょ・・・何が天使よっあの赤い悪魔がっ!『革命家』壊滅の危機だったわよ!本気で死を覚悟したわよっ!!あと一歩逃げるのが遅れてたら死゛んでだゎよ゛!?

 泣いてないゎよっ!!


「お待たせ莉愛ちゃん。 帰ろ?」

「ひっ・・・!? う、うん、帰ろっ」

「本当にどうしたの? さっきから何か変だよ?」

「大丈夫、大丈夫っ。 どうもしないから、ほらほらぁ、早く帰ろうっ」

「う、うん・・・」


 ・・・と、とにかく!このちびっ子、何かガードが固くて天使たちの情報も性格だとか家庭でのちょっとしたエピソード程度しか話さないのよね。こうなると天使の情報を得るには天使たちの住み処に潜入するのが一番手っ取り早いのよ。危険な賭けではあるけど、ここで退くわけにはいかないわ。

 そういえばこっちの言葉だとこういう状況を現す言葉があったはずよね。何と言ったかしら?

 そう確か、『お(けつ)に入れ歯 はいお穴』!

 ・・・こちらの文化はお尻に強いこだわりでもあるのかしら?

 まあ良いわ。

 とにかく!今日こそはこのちびっ子の家まで漕ぎつけてやるわっ。


 ◆


「でね、ガブがどこからか子猫を拾ってきちゃって大変だったんだ~」


 早速ちゃ~~んす!ガブが誰だか知らないけど、その猫をダシにしてちびっ子の家にお邪魔すれば・・・


「そうなんだ? あ、その子猫見てみたいな。 陸君の家に見に行っても良い?」

「あ、ごめん。 その子猫もううちにいないんだ。 ちょっと遠い親戚のおじさんちで飼ってもらってるんだ」

「そ、そっか・・・残念・・・」


 ちっ!本当に残念だわ。

 しょうがない、他の手を探すか。例えば色仕掛けなんてどうよ。これまで試したことは無かったけど、良いアイディアなんじゃないかしら?

 どうして今まで気が付かなかったのかしら。そうよ、こんなちびっ子私の魅力で一発でKOじゃないっ。

 そうと決まれば早速・・・


「ね、ねえ陸く」

「あれ、ラファ・・・じゃないや。 サムライ?」


 くっ!やるじゃないっ、ガキのくせに私のこのセックシィなアピールを潰してくれるなんて。


「おぉ、陸殿。 おかえりなさいでござる」

「ただいま・・・って言うにはちょっと早い気もするけど。 うん、ただいま」


 って、あら?今日はいつもの緑の主夫じゃなくて黄色のチョンマゲなのね。

 こいつは青い不良と黒いゴリラ(としか表現できないあのフォルム)と合体するやつね。

 どっちでも良いけど、ここは相手に付け入る隙を作らせる為にもちゃんとあいさつして好印象を与えておくべきところね。


「こんにちは」

「こんにちはでござる、莉愛殿」

「今日はアームズはどうしたの?」

「どうやら空殿が忘れ物をしたようなので、急いで届けに行っているでござる。 珍しいこともあるものでござるね」


 あの凶暴な姉か・・・なんて言うか、こいつらって性格が極端に振り切ってるわよね。

 弟の方はこんな(すなお)なのに何故姉の方はあんな(ぼうくん)なのか、理解に苦しむわ。


「珍しいかなあ? 空姉ちゃん結構、おっちょこちょいだよ」

「お、おっちょこちょいってあんまり聞かないね・・・」


 そして出たわねちびっ子の謎語彙。私の調査では主に中高年くらいからしか聞かない様な単語がちびっ子の口からはちょいちょい飛び出してくるのよね。

 これくらいの子だとこれが普通なのかと錯覚してしまいそうになるけど、他のクラスメイトからはまず聞かない。

 もしかして天使たちの影響か何かなのかしら?ホント碌なことしないわね、こいつらは。


 いや、ちびっ子の教育は今はどうでも良いのよ。

 今大切なのは如何にして不自然にならない様にこいつらの根城に潜り込むか、これだけよ。

 だからなんとしても突破口を開くのよっ。


「あ、そ・・・それでね、陸く」

「サムライ? 何で一人でそんな大きく頷いてるの・・・?」


 くっ!またしても!?


「気にしなくて良いでござる。 陸殿は大船に乗った気でいればそれで良いのでござる」


 え、何言ってるのこのチョンマゲ?会話がまるで繋がってないわよ。


「だからどういう」

「ジョリーロジャーの掲げられたおっきな木造船を用意するでござるからな」

「いや明らかに海賊船だし・・・」


 そうね、それは紛うかた無き海賊船ね。


「む? 海賊が来ても平気でござる。 拙者が船ごと切って捨てるでござるよ!」

「「それ自分の船切っちゃってるから!?」」


 本当に何言ってるのこいつ!? 自分で作って自分で切って何がしたいの!?

 バっカじゃないの!!?

 ハァ・・・ハァ・・・あ、あまりの衝撃にちょっとエキサイトしてしまったわ・・・

 大体、こいつジョリーロジャーが何か分かって言ってるのかしら?


 って、違うっ、そうじゃない、そこじゃないわ!


「というわけで二人とも安心するでござる」

「「何が『というわけ』なの!?」」


 だ、ダメだわ・・・こいつが何を言っているのか私には理解できない!

 思わずちびっ子と一緒に絶叫してしまったじゃないの・・・


「はっはっは、二人とも仲が良いでござるな。 仲良きことは美しきかな、でござるよ」

「「・・・」」


 ふざけているとしか思えないっ・・・!

 バカにするのもいい加減にしなさいよこのチョンマゲがああぁぁぁ!!!


「り、りりりりっり莉愛殿ぉ!!!」

「え、ひゃい!?」


 何なにnaniナニなにナニNANIなに何!?今度は何~!?


「こ、ここおおこおーーーー! これは拙者の口からは酷く申し上げにくいのでござるが!」

「な、ななな何か?」


 も、もももしかしてバレた!?私の正体バレちゃった!!?

 マズイ!ここでバレたとなると任務が非常にやりづらくなるわ・・・!


「少し耳をお貸し頂きたいのでござるが・・・っ」


 な、何とかしないと。でもここで拒否すれば相手に変な確信を与えてしまうかもしれない・・・

 背に腹は代えられないわ!


「・・・い、良いですよ」

「では失礼して・・・ごにょごにょごにょにょにょにょごにょご(ご想像にお任せします♪)」

「なっ!? ~~~~~っ!!!」


 こ、ここおこここおこここここここ、この・・・っ!!!

 言うに事欠いて何てことを言ってるのよ、バカロボット!痴漢!死ね!

 有り得ないでしょ!女の子にこんな往来で何言ってるのよまぢで!


「え、ど、どうしたの莉愛ちゃん?」

「ぉ」

「「お?」」

「覚えてなさいよ、この変態ロボットぉ~~~~~~!!!」


 ◆


 我が名はユリア・カレント。選ばれし者が集う『革命家』の幹部が一人。

 にっっっっっくき(ばかやろう)たちと戦っている。

ユリア・カレントが間違えたことわざは『虎穴に入らずんば虎児を得ず』でした。

あと前話でチョンマゲは仮ボディと本体が結びつかないと思っていましたが、一応色はそれぞれに対応している様です。

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