14.オオチョンマゲモドキの優先順位
新年あけましておめでとうございます。
三が日も過ぎてからおっとり刀ではありますが…
更に言えばかなり久しぶりの更新ですが、本年もまったり天使たちの様なマイペースで更新していくと思いますので、気が向いたら見てやって頂けると嬉しいです。
おはようござるます。ラファエルでござるよ。
挨拶は前々から模索中なのでござる。所謂、暗中模索でござるな。
ハニエル殿にそう申したらば、「大げさであります」と一笑に付されたでござるよ…一蹴ではないでござる。小さな一文字が異なるだけで酷く心が抉られるでござるよ…ぐすん。
ちなみに、物理的に一蹴されると体が抉られるでござる。
只今朝の7時半を回った辺りでござる。
これより本日の戦にござる…否、正確には既に戦は始まっているでござるが、拙者の出番はもう少し先でござろう。今はハニエル殿やザドキエル殿による情報戦の時間にござる故。
本日の戦はどうやらカマエル殿が一歩リードの様でござった。
ハニエル殿もザドキエル殿も殆ど怒声と申して過言でない程に強い語気でやりとりしてるでござる。
内々の通信回線だから良い様なものの、もしこれが普通に声として外に漏れたり、まかり間違って空殿の通信機に繋がろうものなら……うむ、これ以上は拙者の天動機関の平穏の為、考えてはならぬでござる。天動機関に過負荷をかけてはいけないのでござるよ。
『追跡班に告ぐであります! たった今陸が登校したでありますが、ターゲットは本体、ユニット共に消息不明! プランをCからBへ変更、本体グループはいざとなったら変形も許可するであります! あまり参考にはならないでありますが最後に目撃されたのは倉庫、キッチンであります!』
『つーわけだ! 各々探索を開始してくれっ』
「ラファエル、承ったでござる。ユニットにて追跡を開始致すでござる」
『ガブリエル、了解である』
『ルシフェル……了解…』
『えーと…メタトロン、了解』
ここからは拙者たちの戦にござる!
◆
それにしても…
陸殿が登校する時に本体もユニットも補足すら出来ていないというのは珍しいでござるな。多いのはどちらかを囮にもう一方で逃走を謀る、という状況にござるが…本日はどの様な手を使ったのかどちらもが上手く逃げおおせたでござる。
隠密的な性質を持っているわけでもござらぬのに、小学生に近づく為だけにここまで見事な雲隠れをするカマエル殿の本気度はちと常識を逸しているとは思わぬでござらぬか?
そも、ある特定の分野においては良識を欠片も余すことなく海底深くに埋め立てているカマエル殿に常識を当てはめてはならぬのでござろうか。
さて本日の拙者でござるが、今は陸殿の通学路から少し離れたオフィスビルが多くなってくる辺りを探索中にござる。
ここが担当地区というわけではござらぬ。むしろ担当する地区など決めてしまえばカマエル殿に各人の裏をかかれてまんまと逃げられるでござるよ。
…そういう知恵が回る辺り、拙者たちのリーダーとして申し分ないのでござるが。
いやさ、本当にその頭を何ゆえもっとまともな方向に向けないのか、拙者たち一同理解に苦しんでいるでござるよ。
ハニエル殿なんかはもっと物理的に苦しんでいるでござるが…
しかし斯く言う拙者も実は今苦しんでいることがあるのでござる。
それはほんの数週間前からのことにござった。
なんと……
拙者の愛してやまぬテレビ番組の再放送が始まったのでござる!!!
その名も『三つ子が斬り捨てる!』!
あ、この題字の「!」のところ!ここなんか特に格好良いのでござるよ!
内容はとある小さな村で生まれ、家の事情により赤ん坊の頃にバラバラに引き取られた三つ子の侍(?)が成長の末に再会を果たし、自分たちの生みの親を探す為に日本全国を旅しながら悪党どもを斬って斬って斬り捨てる!という、使い古されたよくある王道の勧善懲悪ものでござるな。
が、しかし!しかしでござる!
それだけ使い使われ古くなって擦り切れて、それでも使われるというのはそれだけ多くの者に受け入れられ、楽しまれているということにござる。
この番組もその例に漏れず、一騎当千の強さでもってばったばったと敵を斬っていくシーンには毎週わくわくさせられているでござるよ!
拙者もレヴォルドどもをあんな風に成敗してみたいものにござるな…
まぁ、合神すれば剣を使うでござるが、やはり拙者個人でも使いたいでござるしどうせなら刀の方が良いでござる。なんと言っても武士の魂にござる故。
…ここは博士殿に直談判しかないでござるな!
「そうと決まれば早速…むっ?」
博士殿に連絡をと思ったところで拙者が自分の力を使い独自に使用しているセンサーに引っかかるものがあったでござる。
これは…この微妙に歪んで捉え辛い反応は…
「どうやら当たりの様でござるな? しかも恐らくは…」
拙者は空気中に含まれる極々少量の電子や、機械類は言わずもがな、生き物ですら体内に流れている微弱な電気の動きを読み取り、知覚範囲内で『怪しい(ここ、重要でござる)動き』をする者がおらぬか監視しているのでござるが、『特に(ここ、もっと重要でござる)怪しい動き』をするものが引っかかったのでござる。
どの様にしているのか見当が付かぬが、カマエル殿は拙者たち皆が備えている各種センサー(熱源、生体、音響、電磁気、光源、振動etc.etc.)も、拙者の力も歪ませ、こちらの包囲を振り切るのでござる。
あいや、しかし!
拙者らも敵に好き勝手をさせておくわけにはゆかぬのでござる!
センサーの類は日々(開発主任:ハニエル殿、助手兼雑事全般:)博士殿の手によって新しくなっているのでござる!
勿論拙者とて指を咥えてをれを見ているわけではござらぬ。
そこ!咥える口が無いとか申しているのはどこのルシフェル殿にござるかっ!
あ、ハニエル殿の博士殿への教育的指導は見てすらおらぬでござるよ?
拙者は何も見ていないでGOZARU。極々平穏の開発風景にGOZASOUROU。
ごほんっ。
詰まる所、拙者も鍛錬を重ねてカマエル殿を逃さぬ様日々進化しているのでござる。
その甲斐あってか、最近では無理やりに拙者の力を掻い潜ろうとするカマエル殿もなんとか捕捉出来るようになってきたでござるよ。
そして今日。
拙者が捕らえたのは特殊性癖に囚われし血濡れ(っぽい色をした)ボディ。
「むっ…ラファエル、ですか」
「待っていたでござるよ」
「まさかここで見つかるとは思いませんでした」
まぁ、カマエル殿のことにござるな。
しかも本体でござる。
まだ変形前のスポーツカー形態にござるが、これはちと難儀でござるな。
「相手の裏を読むのはカマエル殿の専売特許ではござらん故な」
「ふふ。まさか、そこまで自惚れてはいませんよ。ですが貴方が私の動きを捉えていたのには驚きましたね…いいえ、貴方であればこそ、といったところでしょうか」
「それは過大評価にござるよ。皆それぞれが全力を尽くしてカマエル殿を追っているでござる」
そう、拙者が雷の力を利用しているように、ルシフェル殿は大地の力を用いて地中で待ち伏せ近寄れば岩で押しつぶし、ザドキエル殿は水によりカマエル殿の好きそうな子供の虚像を映して罠を張り触れようとしたところで高圧の水流をかぶせ、ハニエル殿は風に乗ってカマエル殿がいそうな場所を虱潰して発見報告を聞けば自信を砲弾の様に吹き飛ばし局地的なダウンバーストでその場に着、地……おや?皆、力の使い方が力技過ぎるのでは…いや、力なのでござるからそれを使うは技であってつまり何をどうしても力技でござるな。
うむ。拙者も自分で何を言っているのか分からなくなってきたでござる。
仕切り直して。
「悪いでござるが、カマエル殿にはここで諦めて頂くでござるよ」
「強気ですね? ですが、私は今本体なのに対して、ラファエル、貴方は仮ボディ。七転八倒してもこちらに優勢だということを忘れていませんか?」
「…」
そう、カマエル殿の申す通りでござる。
天動機関が持つ力を扱えるとは申しても、拙者の仮ボディは力の源を抱えているわけではござらぬ。
今の拙者が正面からぶつかってカマエル殿を抑えられる道理は無いでござる。
しかし…
「カマエル殿、拙者とて武士の端くれ」
「いや、私も貴方も一応天使です…」
「武士の端くれ。幼子たちの身に危険が迫っていると知り、それを見て見ぬ振りは出来ぬでござる」
ハニエル殿から博士殿への戯れはそもそも見てぬでござるから無効にGOZARU!
「然らば、この身に代えてでも悪しきを挫いて、平和を守るでござるっ!」
「ふ…その心意気は貴方らしいですね。ならばその覚悟、この目で確かめさせてもらいましょう!」
「いざ、尋常に…!」
「勝負です!」
そう宣言したカマエル殿が急加速し拙者に接近し、
「うぉおおおおおおおおおお!!!」
「アースフィシュア………」
「おぉぉおおおぉおっ!!!?」
突如開いた穴に落ちたでござる。
「……本体確保…完了」
『でかしたっ!』
穴から現れたのはルシフェル殿にござった。
まぁ、カマエル殿を捕捉した時点で拙者が救援要請したのでござるが。
『残るは仮ボディのみであります! 各員、引き続き掃討戦をっ』
『ガブリエルである。カマエルの仮ボディを発見したぞ。どうにも動く気配は無い様であるが誰か手を貸してほしいのだが』
『『でかしたっ!』』
『こちらメタトロン。今ガブリエルさんの近くにいるから迎えに行くよ』
「…了解」
「任せたでござるよ」
どうやら本日も無事に悪は滅びたようにござるな。
いや、実に気分が良いでござる!
「……ラファエル」
「? どうしたでござるか、ルシフェル殿」
ロボット形態からトラックへ変形し荷台にカマエル殿を(相当乱暴な手段にて)乗せ終えたルシフェル殿が何が気になったのか拙者に問いかけてきたでござる。
はて?なんでござろう?
「尋常は……どこに、消えたのか…?」
「ふむ? …ああ、カマエル殿に申した言葉でござるか?」
「…(コクリ)」
どうもカマエル殿が穴に落ちる前に拙者が申したことが気になっていたようにござるが、
「カマエル殿よりも時代劇の方が大事でござる故」
「………武士は、どこへ…行った」
「ルシフェル殿、偉大なる先達たちはとても為になる言葉を残してくれているのでござるよ」
「?」
「それはそれ、これはこれ」
さて、今日のお話はなんでござったかな?
拙者、ルンルンにござるよ!
「………口だけ侍…」
ラファエルの行動は間違えてはいない。
いないけど、尋常にと宣言したが故のこの残念感。
まぁ、ここの天使たちは大体残念ですが。




