12.ボケ即斬
どんなタイミングで言えば良いか分からなくて、そのままにしていたら今更口にするのが凄く照れるというか恥ずかしいというか…そういうことってありませんか?
で。
いつもこの様な拙著を読んで頂き、ありがとうございます。
ブクマや評価も、とってもありがとうございますっ。
※2015/11/02 登場人物(?)の呼称を修正
朝。
今日も、カマエルの逃走を阻止する為に、街へ繰り出す。
わたしの名は、ルシフェル。
黒色の天使。
別に堕ちる予定は…ない。
「…………………」
わたしの役目は主に、カマエルの逃走ルートを予測し家周りが取り逃がした場合に、捕まえる。
……その為に待ち構えること。
…
……
………ダジャレを意図しては、ない…
「カマエルを……………………捕まえ…………ない」
「…なんでやねん」
ズパンッ!
突然…かかった言葉に釣り合わない鋭い衝撃が、右腕に走った。
「っ………師匠?」
「おはようございます、ルシフェルさん」
「おはよう…ございます」
…そちらを向くと、師匠がいた。
短い前髪、それに比べて首元を隠す程度には伸びた後ろ髪。全体的に細く、背は普通。鋭いわけではないが、力強い目、そしてそれ以上に力強いツッコミを持つ……私の、師匠。
もう、長い付き合いで……わたしたちの本名も正体も知っている。
「いつから……そこに…?」
「そうですね…1分くらい前から、でしょうか」
「…何故声を……」
かけてくれなかったのか…
「……隠れているみたいでしたので。 違いましたか……?」
「いいえ……違いません…」
………本体と比べるべくも無いとは言え仮ボディにもレーダーは積まれている。
それなのに接近に気が付かなかった…
やはり師匠は…凄い。
しかし…
「……師匠の通学路は……?」
「そうですね……僕の通学路からは外れています…なんだかこちらに誰かがいる様な気がしましたので…」
「…?」
誰かが師匠をつけ回していて、逆にそれを追ってきた、ということだろうか…?
師匠をつけ回すとは……無謀な。
わたしの師匠は、”ツッコミの気配”を……決して見逃さない。
ストーカーなど、ツッコミ所の塊…気が付いたときには追う側と追われる側が入れ代わっているに、違いない。
「相手の、素性は……?」
「…素性?」
誰かを追って来たのだと思ったのだが…師匠が首を傾げたのを見ると違うのだろうか?
「……誰も追っては…?」
「いいえ…? この辺りからボケの気配を感じた気がして…ちょっと寄り道しに来ました」
「……わたし、でしょうか?」
「ん……違うと、思いますね…」
どうやら…師匠がツッコミ待ちの気配を辿って来ただけ、の様だ…
わたしはその道すがらで……狩られたのだろう。
わたしはまだ師匠ほどにツッコミの段位が、高くないからここまで的確にボケを察知出来ない。
この身体では自身の半径5m前後の範囲で察知が出来る程度……修行不足だ。
……そう師匠と話をしていると、通信が入った。
『こちらハニエルでありますっ。 カマエルの仮ボディを確保したでありますが、例によって例の如く本体で逃走を開始したであります! 本日の外周部隊は要注意でありますっ』
『ザドキエル、了解だぜっ』
『ラジエル了解じゃ! いっちょ、捕り物といこうかのっ』
「ゴウケン………了解…」
『ラファエル、起動完了したでござる。 これより出陣するにござるっ』
珍しく…今日はラジエルが……防衛班に加わっている様だ。
……予想される逃走経路ではラジエルやラファエルの本体は……デカくて邪魔になるから、仮ボディでの追跡にしたと思われる…
…が、逃走経路によっては本体で追うこともある。
「あ、ゴウケン? それに…光留兄ちゃん!? え、なんでこんなとこにいるのっ」
「(ぅげ、黒ゴリラっ。 それにトンデモ人間までっ…!? で、でも丁度良いか…?)」
師匠と話しながらカマエルを待ち伏せていると…少し前からセンサーで捉えていた陸と莉愛から声がかかった。
最近は莉愛が毎日陸を迎えに来て一緒に登校している。
陸が家を出る時点でまだカマエルが家にいると、莉愛に反応して『飛び出し飛び付きビンタで返り討ち』の一連の流れが恒例となっている。
強力な防衛組要員を獲得出来てわたしたちはホクホクだ。
「陸君…それに、そちらはお友達でしょうか…おはようございます」
「おはよう、光留兄ちゃん」
「お、ぉはようございまーす…」
「陸…莉愛も…無事で、何より」
「へ? 無事?」
「……カマエルを…………見ていないか?」
「うぅん。 見てないけど、どうかしたの?」
「………なら、良い」
「?」
今日は本体での逃走だし、仮ボディが捕らえられた位置、ハニエルよりリアルタイムで共有されていた捕獲までに辿った経路、本体が消えたと思われる時間、ここに辿り着くまでに集めた目撃証言から、今回は正直に通学路を通ると踏んでいたのだが。
…当てが外れたか?
「………」
「どうかしたの、ゴウケン?」
「………何でも、ない」
しかし、先程から陸と莉愛の後を付けている影がある…今度こそカマエルの同類か…
当ては外れたかもしれないが、運は良かった。
「あの、ル…っ、ゴウケンさん。 ちょっと良いですか?」
「…どうした莉愛」
ストーカーをどうしようかと考え始めたところで莉愛が近寄ってきて小声で呼ばれる。
「(こいつも呼び捨てか…っ)あの…陸君の家を出てすぐ、ずっと後ろから変な人に付けられてるみたいで…陸君は気が付いてないみたいなんですけど恐くって。 …た、助けて下さいっ(ウルウル)」
「……理解している………陸を連れて…行ってほしい」
…あまり陸のいる前で手荒な真似をしたくない。
「はい、分かりましたけど…お願いしても大丈夫ですか?」
「………問題、ない」
そう…陸の後をつけ回す様な不埒な輩になど……遅れは取らない。
大体が…
こんな小学生にすらバレる尾行など、カマエルに比べれば児戯にすら及ばない…
最後に莉愛と頷き合って確認を取ると、どうも二人で話をしている間待っていてくれたらしい陸が話しかけてきた。
……相変わらず気遣いも出来る、良い子だ。
奴らという強烈な連中に囲まれていてよくここまで良い子に育ったものだ…
「お話終わった? 莉愛ちゃんってゴウケンと仲良かったの?」
「う、ううんっ、それほどでもない、よ? ただ、ちょっと教えて欲しいことがあっただけでっ」
「そうなの、ゴウケン?」
「…(コクリ)」
「そうなんだ」
「あ、陸君。 そろそろ行かないと」
「うん、分かったっ。 じゃあ僕たちもう行くね、二人とも。 あんまり道草食ってると遅刻しちゃうし。 っていうか光留兄ちゃんっ、なんでこんなとこで油売ってるのっ!? 学校はっ?」
「大丈夫、です…走れば間に合いますから」
「何で走らなきゃ間に合わない時間にこんなことにいるのさっ!?」
「ツッコミの………為です…」
「うん、普通に意味分からないから。 ちゃんと遅刻しない様に行かないとダメだよっ。 注意したからね! またね、光留兄ちゃん」
「それでは、失礼しますね」
「はい、さようなら…いってらっしゃい」
「いって、らっしゃい……」
…師匠と一緒に手を振って二人を見送るが、わたしはその裏で追跡者の反応を追う。
なんとも都合の良いことに、奴は徐々にわたしたちの方へ向かって来ている…
「これは………………好機」
目視出来る位置まで出てきたのは…この季節に似合わない長いコートを着ている男だった。それ以外は頭や顔に特殊メイクやグラサンマスクをしているわけではなかったが……コートがそれ単品で怪しさを前面に押し出している…
しかもよくよく見れば人目や監視カメラから上手く逃れながら移動している。中々に手慣れた動き…
……莉愛はこれに気付いたのか…やはり強力なカマエルの抑止力だ。
反れそうになる思考を戻しそっと男を観察していると…陸たちを追う為だろう、車道を横切りこちら岸に渡って来ようとして…
キキーーーーッッッ
ドンッ!!!
撥ねられた…
……交差点を高速で曲がって来た車に。
それは真っ赤なスポーツカーだった。
「陸をつけ回す不埒な輩めっ、神妙にお縄につきなさい!!」
というかカマエルだった。
ストーカーを止めたのは良いが、カマエルに跳ね飛ばされ宙に舞ったその肢体はどこまでも無慈悲で容赦の無い重力に導かれ………ぐしゃっ、と音を立てて地に墜ちた。
動かな……いや、ピクピクと痙攣している。
…大丈夫、動いてはいた。
「…カマエル……やり過ぎ」
「何を言うのですルシ・・・ゴウケン! この男は陸と莉愛の後をずっとつけ回っていたのですよ!? 厳罰に処すべき重罪です! 許されざるべき禁忌を犯した愚か者に裁きの鉄槌を!!!」
……見事に自分のことを高い高い屋根裏に上げ蓋をして隠し言いたい放題。
わたしは呆れてものを言えなくなっていたが、この暴挙を見逃さなかった人が……いた。
「………お前が言うなー」
バゴンっっっ!!!
「どぅはっっ!!?」
…そう、師匠。
その落ち着いた声と重く激しい裏拳(掌?)によるツッコミがカマエルの車体前方を跳ね上げる……弧を描く様に持ち上がった車体はそのまま後ろへと傾いていき…やはり重力に、慈悲は……無い。
愚か者に裁きの鉄槌が下った瞬間だった。
「わ、私は何も、していな……ぃ………」
無様に上下反転したカマエルは亀の様に起き上がることも出来ずに、そのまま機能停止してしまった、ようだ。
………道の真ん中で邪魔だ。
カマエルを恨みがましく睨んでいたら、突如街中で立て続けに起こった交通事故(?)にフリーズしていた周りの人々が騒ぎ出した……
これはストーカーを早く回収しなくては面倒くさいことになるな。
「……こちら、ルシフェル………カマエル、確保…」
『『『でかしたっ!』』』
『なんじゃい、もう終わってしもぉたんかの』
一人以外からは概ね称賛らしき言葉が聞こえてきた。
……ラジエル、お前はこの攻防の意味を理解しているのか。
まぁ……それは、良い。
さっさと救援に来てもらおう。
「……確保はしたが…カマエルとストーカーが邪魔……」
『『『は?』』』
『なんじゃ、カ太郎の他にもストーカーがおったんかの?』
「そう……ザドキエルかメタトロンに……回収を依頼する………」
『なんつーか……お疲れさんルー。 今メタっちがそっち向かったわ』
「………了解」
到着までにまずはカマエルたちを端に寄せるとしよう。
………結局、本当にすぐに到着したメタトロンにカマエルを括り付け、ストーカーを抱えた私が乗り込んで家に帰った。
別に逃げたわけではないので、只単に帰った、で正しい…
非常にツヤツヤした表情?の師匠も協力してくれて……大したことは無い、とある映画研究サークルの撮影だった、突然迷惑をかけて申し訳なかった、という説明をして、集まっていた人々を安心させることも忘れない。
…メタトロンが何か言いたそうにしていたが、何も言わなかったのだから問題はないだろう。
師匠はわたしたちが帰るのと合わせて走って行った…師匠ならきっと問題無く始業に間に合うはず。
……ありがとうございました、師匠。
◆
その後回収したストーカー男の方はというと、事故の衝撃はそれ程大したことは無く全身打撲と右腕両脚の骨にひびが入っただけだったのでそのまま警察にこっそり突き出した。「この男、ストーカー」という張り紙と、合流前にカマエルが撮っていた証拠写真数枚と合わせて(……どうやって撮った)。
これをされた警察側は色々と慌てていた。
突然ピクピクしている謎の男が謎の張り紙と共に警察の前に捨て置かれ、しかもこの男コートの下に何も着ていなかったものだから、アウト!だの、いや病院が先だっ、だの、これ傷害事件じゃ…だの……
……即刻捕まえてそのまま極刑に処すれば良いものを。
…?
当然、陸を狙っていたことをわたしだって怒って、いる…
……それ相応の重い罰則を望んで、何が悪い?
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してやっても良っか、という天使的な方がいらっしゃったら、投票してあげると飛び立ちます。




