11.侵略者の朝
動かしやすくてつい出しちゃう。
我が名はユリア・カレント。『革命家』の幹部が一人。
今日もまたにっくき敵たちの観察の為、小学校へと向かわねばならない。
「はぁ…」
ならないのだが…
「憂鬱だわ…」
今日ばかりは任務を放棄してしまいたいっ。
何と言っても今日は……
「おはよう莉愛ちゃん。 って、どうしたの? 元気無さそうだけど」
ぅぐ……この子にまで心配されるのは宿敵としての矜持がクライシス帝国…!
「お、おはよう陸くん…大丈夫よ、ダイジョブ……はぁ…」
「そっか。 言葉と態度が延々とあっちむいてほいしてるのは分かったよ」
負けない…っ。負けてたまるか!
『革命家』が幹部、《紫炎のユリア・カレント》の名に懸けてこんなちびっ子に心配なんてされてたまるか!
さぁ、行くわよユリア。選ばれし者の意地と矜持をその目に見せつけてやるのよッ!
「もう、りあは大丈夫だから心配しないでっ? でもありがと!」
「そうなの…? ”身体測定”のためにご飯抜いたりしてない?」
「べべべ別に伸びてない膨らんでないなんてことにゃいよっ」
「あ、身長とかの方が気になるんだ」
………。
3行でバレたゎちくしょー!!!えぇそうよあっちむいてほいで言葉が負けたわよ文句あるのっ?
大体何よ身体測定ってバカにしてるんじゃないの!?
私は『革命家』の幹部よ!自分のデータくらい自分で把握してるわよ!それが何故こんな連中に混ざって他人に計測されないといけないわけ!!?
大体、私の身体データを測らせるなんて『革命家』の内部情報流出の危機じゃない!
私報告したわよねっ!
本隊は何をしている!?これは我々に対する宣戦布告のはずだ!
即刻妨害せよ!!
ゼェ…ハァ…ゼェ…ハァ……な、泣いてないわよっ!!!
「ね、莉愛ちゃん」
「なぁに、りくくぅん…?」
「莉愛ちゃんは背の高さが気になるの?」
「ぶぇ、別に気にしてなんかっ」
「莉愛ちゃんは小さくて可愛いのに、それじゃダメなの?」
「う゛っ…や、やっぱり陸くんもりあのこと、ちっちゃいって思ってるの?」
自分だって言うほどデカくないくせに…っ!
「ん~、と。 莉愛ちゃんは今すぐおっきくなりたいの?」
「だって! ちっちゃいと、その…馬鹿にされるし……」
「そんなに気にするほど小さくないと思うよ? それに…」
「それに…?」
「あんまり莉愛ちゃんだけおっきくなると、こうやって」
「っ!!?」
こ、このガキ急に抱きついてきてなにをっ!
「ぎゅってして、よしよしってできなくなっちゃうよ?」
「り、陸くん…?!」
「それにね、もし誰かが莉愛ちゃんが小さいことを悪く言っても、ボクがこうやって莉愛ちゃんのこと可愛いって言うから。 だから、一人でおっきくならないで、一緒におっきくなっていこ?」
「……」
こ、このマセガキっ、あんまし騒ぎにしたくないから大人しくしといてやるけど、こんなに人が大勢行き来してる往来でこんなことして恥ずかしくないの…!?
って思ったら、よく見ると耳まで顔を真っ赤にしてるじゃないちびっ子…
コレは私だってハズいわ。
「あ、あの陸くん…分かったから、ちょっと離れて…」
「わ、ごごごめんっ! あわわゎわわわわわっ」
ようやく自分がしたことに気が付いたのか。
でも、真っ赤になってモジモジしてる姿は…なによ、その、可愛いじゃなぃ…
「あ、莉愛ちゃん。 ちょっとだけ耳貸して?」
「なぁに?」
「あのね、本当はボクも背があんまり高くないの気にしてるの。 ボクだけ莉愛ちゃんが背の高さ気にしてるの知ってるのはズルいから、これでおあいこ。 あ、でもね。 これから頑張って莉愛ちゃんと一緒におっきくなっていくから。 だからもう、ボクは平気だよっ。 莉愛ちゃんは?」
ちびっ子がそんなことを耳元で囁いて、はにかんだ様な笑顔を向けてくる。
………天使か?
いや、天使の仲間なんだけど…あんな似非天使どもと違って、この子はそう、大天使よ。間違いないわ。
「りあも、陸くんが一緒にいてくれるなら、もう平気っ」
「あはっ、良かったっ!」
ああ…!
満面の笑顔も眩しいっ!
「あ、そろそろ急がないと遅刻しちゃうよ。 行こうっ、莉愛ちゃん」
「うんっ。 あ、り、陸くん!」
「なに?」
「りあね、頑張るっ」
「うん、頑張ろうね身体測定っ」
そう、頑張って駄天使どもの魔の手からこの子を救ってみせるっ!!!
◆
――翌朝。
「おはようっ、陸くん」
「あ、おはよう莉愛ちゃん。 って、あれ? 莉愛ちゃんなんでうちの前にいるの?」
「えへへ…一緒に行きたかったから、来ちゃった!」
「わっ、大変じゃない? 今度から僕が迎えに行くよ?」
「ううんっ! 私が来たかったの」
「え、でも…」
「っ!? 少女の香りがします!!!」
バンっ!
「待てコラっ!」
「拘束していたジェントルが網を破って逃走したであります!」
「り、陸! その隣の子が少し前に来たという転校生のびし」
「陸くんに近寄らないでこの変態っ!!」
ドゴォオオっ!!!
「じょあっ!!? …び、美少女の小さいお手て…ないすびん、た…ガクッ」
「莉愛、ちゃん…?」
「行こう、陸くん!」
「え、えぇ~…」
「…莉愛のツッコミ、パねえ。 つーかビンタの音じゃねえ」
「おや、ザドキエル殿はご存じなかったでござるか? 莉愛殿は身体能力が抜群に高いでござるよ?」
「自分も初耳であります」
「以前、拙者の発言が有耶無耶にされたままで終わった家族会議の時に申したでござるが、莉愛殿は自らの足でバイクを追い越したり、走っている車の屋根を伝って移動したりできるでござるよ?」
「「…は?」」
◆
我が名はユリア・カレント。新しく《豪掌の莉愛》という通り名を得た『革命家』の幹部。
偽物たちから天使たる天城陸くんを救い出すべく戦っている。
可能な時に書いて投稿するマイペースでいきますので、長い目で見てやって頂けると嬉しいです。




