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「その中に、ゲームインストールのためのディスクとヘッドギアが入ってるから──」
妹の言われるがまま、パソコンにゲームディスクをセットし、ヘッドギアとパソコンをケーブルで繋いだ。
「インストールなさいますか?」
と、メイクが訊ねた。
「頼むよ」
「承りました。セットアップまでやっておきましょうか?」
「うん。メイクに全部任せるから、スタート出来るようにやっといてくれるかな?」
「承りました。しばらくお待ちください」
「出来たぁ!?」
と、舞の声が電話越しに響いた。
「慌てるなよ。そんなにすぐ出来るわけ──」
「出来ましたよ、マスター」
と、メイクが告げる。パソコンの画面には、『永遠世界』の文字が大きく記されている。
「は、早いな」
「このくらい、朝飯前ですよ」
えっへん、と、メイクは胸を張る。
「あー、舞。出来たらしい」
「本当!?じ、じゃあ、私、先にログインして待ってるね!」
「あ、おい!」
制止の声も虚しく、舞は通話を切ってしまった。
「しょうがない。やるか」
「プレイするためにはその、ヘッドギアを装着する必要があるみたいですよ?」
真太郎は、ヘッドギアを手に取った。目元まで覆われたゴテゴテしたヘッドギアだ。
「なんでゲームするためにこんなものを……」
「なんでも、そのヘッドギアを装着することによって、意識をゲームにダイブさせるみたいですよ?
「なんだそりゃ……危ないもんじゃないだろうな」
「あはは……もし危険な様でしたら、私が接続を切りますから」
「ああ、そうしてくれ」
真太郎は、ヘッドギアを被る。ピッ、と言う電子音の後に、聞き慣れない女性の声が聞こえた。
「ようこそ、永遠世界へ!」
目の前に、紫色のジャケットを着た女性が立っていた。黒いセミロングの髪で、ニコニコと笑って両手を前で組んでいる。
「本日は、永遠世界をプレイしていただき、まことにありがとうございます。私は、ゲームのガイド役のアールと申します。よろしくお願いいたします」
アールと名乗る女性がバスガイドが名所を案内するように手を左方向へとかざした。すると、電子版のようなものが浮かび上がった。
「まずはあなたのお名前を教えてください。今後プレイしていくご自身のキャラクターの名前であり、後から変更は出来ないものですので、入力は慎重にお願いいたします」
真太郎は、『シン』と入力した。