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蒼翼の英雄と白金の勇者  作者: ε-(´∀`; )
第一章 蒼翼の英雄
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第四話 初めての魔法

魔法と聞いて、俺たちが思い出すのはやはり火の玉や氷の玉を飛ばす魔法だろう。はたまたなんでも願いを叶えることの出来るものと言う奴もいるかもしれない。まあ、それは置いておくとして。今、俺の目の前には現実離れした、正しくファンタジーな光景が広がっていた。


「おおお!すっげえ!!」


思わず子ま供じみた声が飛び出したが、そんなことを気にしている暇もなかった。クラスの友人が魔法で火の玉を作り出していたら、皆こんな反応をしてしまうはずだ。


「あれ?つばさ君じゃないですか。そちらはもう終わったんですか?」


「お、智子ちゃん。どう?回復魔法は使えるようになった?」


我らが担任智子ちゃんがトコトコとこちらに向かって走ってくる。


「もう!先生をちゃん付けでよんじゃダメです!」


「まあまあ、ここは学校じゃないしさ。それよりどんなことやってたんだ?」


「むう、誤魔化された気がします。ええっと、私達は最初に魔力室と言う部屋に……」


智子ちゃんの話によると、皆はまず魔力が充満された部屋に入って魔力を感じ取る所から始めたらしい。ここまでは皆直ぐに出来たらしいのだが、問題は次だ。

魔法を使うには、魔力を言葉に込めて詠唱を行う必要があるらしい。それがなかなかに難しいらしく、未だに数人が成功しただけらしい。それでも普通とは比べものにならないペースのようだが。


「そっかそっか。智子ちゃんは出来たの?」


「私ですか?私は何とか出来ましたよ。今は魔法の呪文を覚えてる所だったんです」


そう言って智子ちゃんは手に持っていた本を開いて見せた。


「この文字、不思議ですよねえ。知らないはずなのに、不思議と読めちゃうんですよ?私、英語を完璧にするのに何年もかかったのに……」


「まあ、御都合主義ってやつだな。文字もそうだけど言葉も通じるじゃんか。多分魔法かなんかのせいだと思うけど」


「ええ!講師の方が言うには、私達を呼んだ魔法にそう言った効果が在るらしいです」


正しくお約束の展開だな。それにしても、身体になんか違和感があるんだよな。なんて言うか、体力の回復が早い気がする。それも元の世界とは段違いで。これも魔法の効果か?

そんなことを考えていると後ろから声が掛けられる。胡散臭い笑みを浮かべた年寄りだった。


「おお!英雄様ではありませんか!」


「ん?あんた誰?」


「わたくし、ゴルト・アルト・ダールソンと申します。この国の宮廷付き魔法使いにございます」


長い髭を蓄えた爺さんが、そう言って頭を下げた。それにしてもいきなり大物が出て来たもんだ。


「英雄とやらになった八坂つばさだ。よろしく頼む。所でさ、ちょっと質問に答えてくれるか?」


「ええ。勿論ですとも」


「じゃあ聞くんだけどさ、あの召喚魔法に少し疑問があるんだよ」


「あの、と申されますと皆様をこちらの世界へとお呼びした?」


爺さんの言葉に頷く。

そう。あの魔法には決定的な不備がある。言ってしまえば簡単だ。


「どうしてあの魔法は俺たちみたいな戦争の素人を呼んだんだ?普通、戦争のプロである軍とかを呼び出すだろ?わざわざ勇者や英雄なんて、本当に強いかもわからない奴を呼び出したりせずにさ」


「むむ、なかなかいい視点でものを見ますなあ。さすが英雄様。さて、結論としては簡単じゃ。最初から強い必要が無いのじゃよ」


「んん?どう言うことだ?」


「あの魔法には大凡三つの効果がありむすじゃ。まず一つは皆様を呼び出すこと。次に翻訳効果。最後に皆様へと適正化の魔法をかけること」


「前の二つはわかる。最後の適正化ってのは何だ?」


智子ちゃんが視界の端でうんうん唸って考えてるのを捉えつつ、質問する。


「適正化と言うのは、本来無機物に使う魔法なのじゃよ。高い熱や強い圧力などの状況下でも耐えられる物を作り出す時に使われるのじゃ」


「それが俺たちにもかかってると?」


「そうですじゃ。皆様の身体は今、常に進化を続けておるのですじゃ。疲労や、傷、病、毒。その他皆様が害に晒されるたび、それに対する耐性が強くなっていくのじゃ」


なるほど。毒を喰らえば次からはその毒が効かなくなり、疲れれば今度はそれまでより疲れにくい身体に成長するわけだ。確かにそれなら訓練を積むたびに圧倒的な成長が出来るわけだ。


「適正化魔法は普通人には掛けられないはずなのじゃが、あの召喚魔法だけは別だったのじゃ。問題なく起動し、しっかりと皆様の身体に発現しておる」


「だが、技術面はどうなんだ?いくら身体能力の上がり幅が膨大でも、技術まで向上するわけじゃないだろ?」


「確かにその通りですじゃ。……故に、皆様には頑張ってもらいませんとなあ」


そう言って爺さんはニヤリと笑う。この言い草、なんか裏がある気がするんだが、読めないな……。


「では、私は失礼しますの」


爺さんは短く言ってこの場を離れていく。


「智子ちゃん、あの人要注意な?」


「お爺さんがですか?」


「あの人、ぜってー裏がある。しかもそれを知られた方が面白いって顔してやがった。敵じゃ無いかもだけど、不気味な感じがする」


智子ちゃんは真剣な顔で頷いた。








智子ちゃんに分けれを告げ、その場を離れる。あたりを見回すと、職員らしきローブの人がおり魔法を使う皆を眺めていた。いや、眺めていたと言うよりは観察していた、と言う感じか。やはり俺たちのような異世界人に興味があるのだろう。俺はその人に近寄って話しかけた。


「あ、すんません。魔力室ってどこですか?」


「え?ああ、これは英雄様。魔法を覚えに来てくださったのですか!どうぞこちらにございますぞ」


「あ、ありがとうございます」


えらく感動されてるな。ていうかさっきから英雄様って言葉に、憧憬の念を感じるんだが。


「ここが魔力室でございますぞ。ささ、とりあえず中へ」


真っ白い壁が一面に広がる中、ただ一つある黒い扉。道案内を頼んだ魔法使いはその扉の前で立ち止まり、そう言う。ゆっくりと開かれた扉の先は仄暗い部屋で、何か熱気のような物が感じられる。

俺がその熱に嫌な顔をしたのを見抜いたのか、魔法使いが盛大に破顔する。


「おお!もう魔力を感じておられるのですね!」


「魔力かは分からないが、何だか熱気を感じるんだ」


「やはり!私や他のものにはこの部屋は涼しいほどです。魔力の感じ取り方は人それぞれです。例えば私なら花のような香りとして魔力を感じます。決して身体の害になるような物ではないのでご安心ください」


なんだそのファンタジー。いや、ファンタジーだけどさ。


「魔力を感じているのなら話は早い!その熱を自身の中にも感じませんか?」


そう言われて身体の内側に意識を向けてみる。そして一瞬視界が青くなり、次いで身体が燃え盛っているかのように熱くなる。燃え盛る炎の中に全身を突っ込んだような熱さだというのに、それが何故か心地いい。火傷するどころか、力が漲ってくるような気さえした。


「すげえ、な……」


口から漏れたそれは、偽らざる本音だった。


「ええ。なんと強い香りでしょうか。さすが英雄様。素晴らしいですぞ」


魔法使いの陶然とした声が聞こえるが、今はそれさえも気にならない。ただこの熱に溺れて行きたい。もしかしたら、もしかしたらこれなら……。そんな浮かれた思考が頭をよぎるが、直ぐに冷たい感情によって鎮火される。


「この程度で足りるわけがない」


そもそも彼奴は俺より魔力量も放出量も上なんだ。この程度で勝てるわけがない。なら、いつも通り工夫と知恵を凝らして上を目指すしかない。


「英雄様?」


「ん、ああ、なんでも無いです。それで、こっからどうすればいいんですか?」


魔法使いは不思議そうな顔をしたが、そう言うとまた笑顔をみせた。


「ええ。では取り敢えず試射場に戻りましょうか」


試射場とは恐らく最初の部屋のことだろう。確かにこの部屋で魔法を撃つとどうなるかわからないからな。

元の部屋に戻ってくると、皆ある程度魔力を使ったのかその場に座って休んでいるものが殆どだった。部屋の隅で魔法について語り合っているものもいる。


「それでは、”言霊”の説明をさせていただきますね」


辺りを眺めていた俺の思考を魔法使いの声が引き戻す。


「了解です。あ、そう言えば名前は何て言うんですか?」


「おお、これは失礼いたしましたぞ。私、アドルフ・ガーヴィともうします。以後お見知り置きを」


さて、とアドルフさんは一呼吸おき、説明を始める。


「魔法の発動には三つの段階がありますぼ。まず、魔力の表出。これは先ほどの感覚を思い出していただければ宜しいかと。内なる魔力を認識し、コントロール下に置くのですぞ。

続きまして、”言霊”の詠唱。魔力を込めた声を発し、世界に事象の改変をする許可をもらうのです。これにより、魔法陣を描き出しますぞ。

最後に魔法の発動。これは魔法陣の完成と同時に行われることが殆どですが、自分の意思で発動のタイミングをコントロールすることも可能ですぞ。

では、一つご覧に入れましょうぞ。最も簡単とされる光を生み出す魔法ですぞ」


言下にアドルフさんの身体の温度が少しだけ上昇する。


『光よ、部屋を照らせ』


言葉とともに、まず空中に五芒星が浮かび上がる。更にその星を円が囲み、その円の周りに文字が現れる。更にそれら全てを囲う円が現れ、変化が止む。


「いいですか、これが魔法陣ですぞ。今は効果を発揮していませんが、魔力の供給を止めるとその効力を見せます。

中心の五芒星は光の属性を表し、その周囲の文字が私の与えた命令ですぞ。ここに描かれていることが、魔法として発動するわけですね。この文字をスクリプトと呼びますぞ。これをいかに簡略化するかが魔法使いの腕の見せ所ですね。

そして、この魔法陣全体の大きさ自体が発動する魔法の規模を表します。大きければ大きいほど莫大な魔力を消費し、それに比例して威力が上がりますぞ」


なるほど。全体としては簡単なプロセスだ。しかし、ふと気になることが見つかった。


「例えばだけど、極小の範囲内で強烈な爆発を起こすとかは可能なんですか?」


「ええ、可能ですぞ?ですが威力は高くとも狭い範囲内でのことなので、殆ど影響を与えることは出来ませんし、威力も大したことがありませんが」


「魔力の消費量は?」


「普通の魔法よりかなり低いと思いますぞ。しかし、そんなことをして意味があるのですか?」


アドルフさんの質問にニヤリと笑う。


「あるんだなあ、これが」


俺の武器,見えてきたな。

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