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~そのころ、麻布会アジトでは~

「あらら、逃がしちゃいましたか」

 麻布会幹部の一人・(つるぎ) 銃造(じゅうぞう)は、大して悔しがるそぶりは見せなかった。なぜなら、星野(ほしの) (はく)を銃撃した時、すでにハクはガレキの頂上に達しており、命中してもこちらに転がるか向こう側に転がるかは五分五分だったからだ。

「逃がすな、追えー!」

 同じく麻布会幹部あり銃造の双子の兄・(つるぎ) 剣造(けんぞう)が、興奮気味に追撃命令を出す。

 しかし、

「待ってください、兄さん。深追いは禁物です」

 銃造が兄を制止する。

「おい、なんで止めんだよ」

「まあまあ、そう興奮しないで。考えてみてください、突然空から大量にミサイルが降ってきたんですよ」

「そんなこたあ、わかってるよ!」

「それに、あの子たちの不思議な力。肉眼で見えなくなったり小さくなったり、突然風が吹いたりしたでしょう? つまり、相手の素性が分からない以上、不用意に追いかけると、逆に返り討ちにされてしまう公算が大きいんですよ」

「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」

 剣造は銃造の説得にしぶしぶ納得したが、どこかやりきれない様子だ。

 二人の仲は、それほど良くはない。一応互いの能力は認めあってはいるのだが、とにかくそりが合わないのだ。

 だから、今回も剣造は銃造の知略を認め、深追いを自重している。しかし、自分の力を発揮できない不満と、銃造が抜け駆けをするのではないかという訝しみを抱えていた。

「大丈夫です。どうやら彼ら、この組織を壊滅させる魂胆の様ですから。こちらの防備を整え、返り討ちにする、という方針が賢明でしょう。いくらアジトの構造を下見されたとはいえ、一度くらいでは、地の利は完全に覆りはしませんから」

「そこまで言うんだったら、それに乗ってやる。だが、まずはボスへの報告だ。それでボスの意見がお前と違っていたら、俺はボスに従うからな」

「それは至極(しごく)当然のことです。ただ、このような超常現象みたいなことが続いて、あの方が機能されているかどうか」






 麻布会のボス・麻布(あざぶ)レオンは、たぐいまれなる才能の持ち主だった。

 彼が父から麻布会のボスの座を受け継いでから、その才能を発揮し、麻布会を小さな暴力団から一大麻薬シンジケートにまでのし上げたのだ。また、警察の摘発やガサ入れを受けても、ネゴシエーションのうまさや知略をめぐらし、何度も手玉に取っている。二大幹部の(つるぎ)兄弟を見出したのも彼だ。

 しかし彼には欠点があった。それは、不測の事態に非常に弱いことである。

 今までは緻密な予測を立てていたおかげでそのような事態に陥ることはなかったが、今回ばかりは勝手が違った。

 なんせ、超常現象じみた能力を発揮する敵が現れ、しかもそいつらが組織を潰そうとしている。

 レオンは一号棟五階のオフィスで頭を抱えていた。

「うう……どうすればいいんだよ……」

「失礼します、ボス。剣兄弟が参りました」

 そこに、報告のため剣兄弟がやってきた。

 剣兄弟に対し、レオンは憔悴しきった声で、

「ああ、全部カメラで見ていたよ。で、俺にどうしろっていうんだ」

 このセリフを待っていたとばかりに、銃造が一歩前に出て、

「単刀直入に申しますと、彼らは必ず攻めてきます。そのための対応策をご指示願いたいのですが……」

「知らないよ、そんなこと!」

 かなり興奮した様子で怒鳴り散らした。

 銃造(じゅうぞう)は思った。これは、自分が指揮を()れるチャンスだと。そして、上手くいけば剣造(けんぞう)よりも寵愛され、出世できるだろうと。

「実は、私に策があります。まず、今回の事があっても、地の利は私達の方にあります。それを利用すれば、必ず撃退できるだろうかと」

「わかった。銃造、アジト防衛の全権をお前に委ねる」

 レオンは、もうどうにでもなれといった感じで言い捨てた。

「ありがとうございます」




 (つるぎ)兄弟がレオンのオフィスから戻っている途中、剣造(けんぞう)が話しだした。

銃造(じゅうぞう)、お前、ボスに汚く売り込みやがって」

「私にそんなつもりはないですよ、兄さん。私はあくまで、麻布会のために打診したのです」

 問いに答えている銃造の口元には、うっすらと笑みがこぼれていた。


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