神の胃のなか
僕たちは発狂した神の胃のなか
自らの像を溶かされて
あとは干からびて排泄されるのみだ
それが転生とでもいうのか
消化器官をくぐった先は
微生物たちと汚物の楽園か
性も死も晒してみるも
恋人との記憶も残らない
臆病な僕は欲望だけが膨らんで
得体のしれない感情が
ぬかるみのなかで去勢された
闇の中の絶叫
自分の生涯に騙されて進むだけ
症状がでている
ふたり併せても
死者は霊魂だけになって
涙をながしても認めてくれない
恐怖を胸臆に抑圧し
遠くで鷹が翼を広げる
咽喉を斬られる季節
淵に立って飛び下りる
ああ、罪だけが
ああ、罪だけを畏れている
朦朧の果て
脊椎が折れても歩かねばならない
落ちた骨の刻まれた数字
朽ちた錠を開くための
水鏡に映る人影に
大小の蛇が蠢いて
栗馬の死が嘶いた
腐った無数の蓮の花が浮かんでいる
引き連れている子供たちの
哀しい声だけが聞こえてきて
心臓が音を奏でて破裂した
ほんとに欲しいものなんてなく
希望も絶望も抱かない
この毟られるような痛みを感じるのは
まぎれもないこの僕だ
僕だけだ
これが
死んだということか
神の胃のなかでの輪廻
死に果てて息果てて
なんと単純な星の巡り
愛も恋も狂って逝って
掠れた声を出して
今日もまた
荒野だけを歩いてる
目的地はなく
ただ流浪の先まで
再び飲まれこまれるまで
時間をかけて溶かされていく