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滴るような紅い薔薇  作者: ツギ
聖女
75/161

75

 アクセス解析が変更になって気付かなかったのですが、知らない間にユニークが2000越えてました……!

 ありがとうございます!


 "夜殺し"は、撃ってからでは躱せない。

 狙いの関係から、飛び道具とはいえあまり遠くから狙うことはできない。

 しかし、初速の速さや破壊力を考えるのならば、寧ろ中距離、近距離での使用の方がそれらの利点を生かすことができる。


 見慣れぬ形状も大きい。銃はまだ、この世界に普及していないのだ。

 面倒な時は、相手が何だかわからない内に額を撃ち抜くこともある。


 だが、逆に言えば、撃つ前なら躱せるのだ。俺が引き金を引くより前に動けばいい。

 言っておくが、そう簡単なことではないからな。別に訓練等を受けたことはないが、俺はこの戦い方に慣れている。狙いを付けることも、引き金を引くことも、そう遅い訳ではない。

 しかし、それ以上に、聖女の動きが速すぎるのだ。


 照準を向ける一瞬の間、射線を安定させる為に伸ばす腕の隙を狙い、こちらに仕掛けてくる。

 身体能力もあるのだろうが、戦闘に関するセンスもいい。何度か距離を取ろうと試みたが、上手くタイミングが合わず、逆に間を詰められていた。


 スティレットを防ぐことに集中すれば、今度は聖女の手がこちらの胸を貫こうとしてくる。"夜殺し"を持ったままの手で手首を殴り付けて流したが、揃えた指先が肩口を掠めた。

 軽装であったら確実に肉を抉られるだろう衝撃。絶対に、こいつらの肉体を構成する元素は一般人と違うと思う。多分、鉄とかチタンとかその辺りではないだろうか。


 やはり、新月の影響が出ているな。刀身を合わせながら思う。普段からも実はやばい時もあるが、純粋な力でこの俺が人間に押し負けそうになるとは。

 俺の方が体格がいいのに、全然押し返せないことがそれを物語っている。


 先程のように来たものを弾く程度なら何とかなるが、単純に力比べになるとどうにも分が悪そうだ。

 ミナの時と違って手加減もしていない。それなのに圧倒できないことに苛々する。さっさと死ねよ。俺はいつまでもお前と遊んでいる暇はねぇんだよ……!


 ソシ・レ。

 どこを怪我したのかはわからないが、出血量自体は死ぬ程ではないだろう。まだ。

 心臓が無事でも、頭が無事でも、血が流れすぎれば人は死ぬ。

 生きているのなら、傷を塞がなければ。


 あいつに余裕があるのなら自分で塞ぐだろうが、治癒術は対象者にも負担がある。俺が手を出す方がいいのだ。本人としては遺憾だろうが。

 その為にさっさとこいつぶち殺してソシ・レの元に向かいたいというのに。


 蹴りを入れようとしたところで引かれ、体勢を崩した。しまっ……!


 銀だけは触れる訳にはいかない。その意識が、聖女の左手に対する注意を薄れさせた。

 それでも無理矢理に身体を捻ったが、肋に当たる拳。鈍い音。痛みに、歯を食い縛りながら"夜殺し"を向ける。


 乾いた音と共に鮮血が広がった。この距離で躱せる訳がない。

 本当なら止めを刺したかったのだが、角度の関係で腹しか狙えなかった。内臓を傷付ければ流石に行動はしづらいらしい。聖女の眉が寄るのが見えた。

 相手の左腕を自由にさせてしまったのだ、こちらも勝手にやらせて貰おうじゃないか。


 身体を支える左足に、力を込める。合わせたナイフに体重を掛けて、僅かに押し戻した。

 とはいえ、先程と同じ手を食うつもりはない。聖女が身を引く前に渾身の力で足を払えば、ナイフに掛かる抵抗が緩む。

 刃を滑らせて手首を返し、そのまま身体の外に振り抜いた。弾き飛ぶ銀剣。それを追うように噴き出すのは、血の紅だ。


 切断というよりは叩き切ったという正しいだろうが、腕を飛ばしたことには変わりない。

 他に銀武器を持っている可能性も考えられるが、武器を手放させたことも大きい。まあ、手はまだ柄に付いているが。とにかく、まずは一本。俺が優勢。


 眉を下げた聖女は、手負いにも関わらず、残った手でこちらの首を狙ってきた。それをいなして反撃をしようとしたところ、聖女が体勢を低くし、視界から消える。

 視線を滑らせれば、剣の方に向かう姿を見付けた。


「させるか」


 背中に一発。伸ばした手の先にあるスティレットに一発。聖女は床に膝を着き、弾に弾かれた銀剣は更に奥へ。

 立ち上がろうとする背中に、駆けた勢いそのままに踏みつける。というか、乗った。過重に肘は折れ、床に押し付けられた肋骨が砕ける音が響く。


「――――っ」

「痛そうな音。……ああ、でもお前達はよくわからないんだったか」


 常に崩壊し続ける肉体でこれだけ動けるのは、薬で痛覚を麻痺させているからだ。勿論、衝撃を与えれば気絶させることはできるが、精神が持つ防御本能は働かない。

 まあ、そんな簡単に気絶していたら使い物にならないからな。そうでもなければ、自分の手が飛ばされた後、つける為に拾いに行くなんて普通の精神ではできない。


 凄いだろ。くっつくんだぜ、こいつ等の手。流石に生えはしないようだが、傷口同士を合わせていると、常時発動している治癒術が細胞を結合させ、神経を繋ぐのだ。

 個人的には、落ちたのをそのままくっつけるとか衛生的にどうよ?と思わなくもないが、雑菌より聖女達の細胞の方が強いのだろう。夜族もくっつくので、それに関しては別に文句はないが……これで人間なんだからなぁ。分類は。一応。


「……の……きた……ぃ足を、……さい……っ!」

「今はお前の方が汚いぜ。白いから汚れがよく目立つ」


 唇を吊り上げながら言う。肺も傷付いているのだろう。こちらへの言葉は、空気の漏れる音で聞き取りづらい。圧迫し続けているから、骨が邪魔で再生ができないんだな。


 靴底の溝に残る土。そして、自身の血に塗れた聖女の修道服は、無惨な有り様だ。事情を知らない第三者がこの状況を見たら、間違いなく俺を悪者だと思うだろう。

 片手を失い、乱れ、汚れた修道服を纏う修道女。その背を踏み付け、這いつくばる様を嗤いながら眺める半吸血鬼。何か特殊な性的嗜好の愛読書とかでこういう場面ありそうである。


 題名は『穢された聖女』ってところか。口元に手を当てながら思ったことに、笑みが深くなる。

 成る程、悪くない考えだ。こちらの肋骨も折れているのだ、多少摘まみ食いをしても問題はないだろう。


 品種改良されて、徹底的な品質管理をされているこいつ等は、腹も膨れるしそれなりに美味い。宝珠だの薬だの余計な混ぜ物がなければもっと美味い筈なのだが、そこまで贅沢は言わないさ。

 何故なら、これは仕置きだからだ。生きる為に喰うのではない。

 俺の物に手を出して、無事で済む訳がないだろう?




 その肉も心も魂も、犯して堕として殺してやるよ。聖女サマ?






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