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木々の合間を高い位置にある太陽が照り付ける。
気温自体は高くなくとも、日光を吸収した帽子の中は蒸れて暑い。これは頭皮に優しくないぞ……。
「っと」
魔獣の突進を跳んで躱す。鈍い音が聞こえたかと思えば、めきめきと木の折れる音が続いた。
衝撃に止まったのは一瞬。対したダメージもなく、その巨体からは想像できない俊敏さで、逃げた獲物――つまり俺――に前足を向ける。
大きな鼻に牙。つぶらな瞳とぺたりと垂れた耳がチャーミングである。
ふくよかな体には、くるりと巻いた尻尾と桜形の蹄が付いた脚。そしてそこらの村人では傷一つ付けられない、鉄より固いピンクの毛皮。
見た目は豚、頭脳も多分豚。人はその魔獣のこと魔猪と呼ぶ。……いや、豚でいいだろ。
今俺が居るのは、サフィルスから普通に歩いて二日程の森である。
冒険者ギルドで張り出されていたDランク依頼、魔猪狩り。一頭に付き銀貨五枚+飯有りと、楽な割には中々においしい。
付近の村で魔猪が目撃された為、人間や畑、家畜に被害が出る前にとギルドに依頼があったのはつい昨日の昼の話だ。
何気にこういう運に恵まれている俺は、その張り出された直後の依頼書を持ち、受付に向かった。癒し系ちゃんが休みだったのが悲しい。
この間のことで俺の顔を知っている奴もいるらしく、皆一様に引き攣り笑いを返してくる。
受付の冴えない兄ちゃんが「……これDランクですよ?」と恐る恐る確認した時は、実に面倒だった。
以前、ランクを地道に上げるのに面倒になった、という話をしたことがあるかもしれない。
Cランクになると普通に冒険者なので、金額も上がる傾向があるし、ランク指定が入らなければ、大体の依頼が受けられるからだ。
まあ、手っ取り早くCランクに上がりたかっただけで、採集や退治自体が嫌いな訳ではない。
条件がいいなら、下のランクの依頼にだって手を出す。やり過ぎると、適正ランクの仕事を奪うということでギルドから怒られるが。
そんな訳で、まだサフィルスに居た村人と共に村に来たのが昨日の夜中。ロバが引く荷車に乗せて貰えたので楽だった。
普通は夜の移動をできるだけ避けるものだが、早く帰りたいという村人に合わせての強行軍である。
案の定、夜行性の魔獣が出たが、俺も夜の方が調子いいので問題ではなかった。
そうして村に着いた俺達を迎えたのは、絶賛畑荒し中の魔猪であった。
固まる村人を余所に、さっさと頭を蹴り飛ばし、暴れる前に何度か踏みつけて頭を割った。
畑に俺の数倍の質量を持った巨体が倒れ込んだが、これだけ荒らされていればあまり関係ないということにする。魔猪で得る収入を、この畑の持ち主に村が多めに渡すだろうし。
魔猪が人家に襲いかかってきた時の為に警戒していた男達や、騒ぎに気付いて起きた者達が火を持って出てきた。
絶命した魔猪に驚いていたが、そこは農業を営む村の住人。てきぱきと血抜きの準備をして巨体を吊るしていく。
魔獣が珍しくない地域では、解体用の道具を持っているものなのだ。自分達で消費してもいいし、大きな町が近くにあれば卸すこともできる。
その道具もそこらの剣や斧よりずっと値が張るものであるし、道具があっても、暴れる魔獣の捕獲に使えるかと言えばそうとも言えない。
その為、その村で代々魔獣狩りを行っている者や冒険者に任せ、解体は村総出で行うということが良くある。
これが特産品して常に魔獣が捕獲できるような地域であれば、通常の家畜と同じ扱いになるが、普通の村ではお祭り騒ぎになる。
この村でも同じく、篝火を焚いて祭壇を組んだが、時間も時間なので割りと手抜き感があるのは否めない。普通は昼に捕って夜が宴だからな……
まあ明日……というか今日魔獣を狩れば、夜には血抜きも済むだろうし、そっちに期待である。
そうして夜が明け、朝飯を食ってから、のんびりと森で魔猪狩りに勤しんでいたのである。
魔獣も獣と言えば獣。あまり狩りすぎてもいけないので、おおよその数を把握するところから始まった。と




