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週間ユニークユーザーが……!
いつもありがとうございます!
……間違ってアクセスしてしまった自分がいる気もしますが。
面倒臭い。
服装に喧嘩と、初めから視線を集めてはいたが、見事に注目の的になっている。
先程まで遠巻きに視線をくれていた連中も、随分とまぁ楽しそうに眺めているものだ。はは、殺すぞ。
それもこれも、全てクリム・ホワイトのせいである。
こいつの声は通るのだ。それでいてまあ美形に入る悪人面と派手な赤い髪を持った男が、入ってくるなり詰め寄ってくる等何事だと思うだろう。
俺だってそう思う。なんでこいついきなり絡んでくんの?馬鹿なの?死ぬの?
「聞いてんのかブラッ…紅薔薇!」
「聞いてねぇよ」
一応場所を考えているようだが、何度も言い掛けていれば世話がない。
こないだ折ってやった左手は上着の下で見えない。添え木がないということは、あれから治癒術掛けまくったと見た。
ちなみに治癒術とは術者と対象者の生気を使って細胞を活性化させる術である。
正直寿命減りそうだな……と思ったが、そもそも日常生活以外に生気を消費している時点で命を削るようなものである。細胞と生気、どっちが優先されるかは知らないが。
大きい街なら大体、治癒士が居る。……まあ、ほいほい行ける治療費でないのはお約束だ。才能職だし。
自分に掛けることもできるそうだが、全ての生気を自身で賄わなくてはいけない為、大きい怪我だと治った瞬間に倒れるらしい。運が悪いと……お察し下さい。
ただこのチート野郎なら、自分で掛けても一週間も食っちゃ寝してれば治せそうな気がする。普段ならな。
骨折より貧血の方が深刻だったと思うが、特に顔色も悪くない。若さか?いや、単純に血の気の多さか。
もうこいつ新種の夜族って名乗っちゃえよ。誰も疑わねぇから。
「紅薔薇!」
「クリム・ホワイト、喧しい」
本当にこいつどうしてくれよう……と不穏な考えに意識を向けた瞬間、何かを落としたような鈍い音。
流石に口を噤んだホワイト共々、音のした方に顔を向ける。
そこには、斧の柄を床に立てたBの姿が。
あ、そういや居たな、こんな奴。
「ここはテメェ等みたいな餓鬼が来る場所じゃねぇんだよ!盛りのついた餓鬼共はとっとと失せな!」
盛りのついた餓鬼は横の餓鬼だけだ。全くもって心外である。
実力はあっても目は悪いらしい。それとも頭か?
呆れた目を向けていたら、何を勘違いしたのか、更に食って掛かってくるB。
「はっ!その女みてぇな顔は裏町が似合いだぜ。あぁ、そこのひょろい野郎がテメェの男ってか」
「そういうあんたは大鬼にそっくりだな。だからってギルドの中くらい兜取れよ。角なしの兜なんてどこで売ってんの?」
何それ特注?成る程、だから眩しいんだな!
しん……と静まり返る空間に響くのは、俺の声だけ。
俯いたままブルブル震えるB。身長差がある為、醜い顔が面白く歪んでいくのがよく見える。はは、気持ち悪い。
「一つ言っておくぜ、おっさん」
顎を上げて手は腰に。尊大な態度を取らせたらお前の低さは霞むよな、とは某木苺男の言葉だ。とりあえず踵落としをかましたが、奴は低くならなかった。残念。
怒りは収まらずともこちらを見るBに、俺は言う。
「毎度毎度俺の下でえぐえぐ泣いてる野郎が俺の男?俺に失礼だ。発言を撤回しろ」
「嘘吐いてんじゃねぇえええ!!」
突然叫びだしたかと思えば、肩を掴んでくるホワイト。
いつも思っているが脈絡のない奴だな。それに怒りっぽい。小魚食えよ。
「この間だってぼろぼろ泣いてたじゃねぇか」
「そっ、……誤解を招く言い方をするな!」
「誤解?事実だろ」
周りに他の奴がいる状況でバラされたくないのかも知れないが、俺としてはホワイトが俺の男という誤解の方が不愉快だ。
それを否定するのはこいつにも願ったり叶ったりな筈なのに、意味がわからん。何を勘違いしているのやら。
つか、いい加減に手を離せ。外套はともかく、その下に着ているのは新調したばかりの服だというのに。どこぞの悪人面に上着もシャツも袖燃やされたせいでな!
思い出すと段々ムカついてきたので、ホワイトの襟元を掴む。だがしかし、こいつの方が頭一つ半程高いので締めにくいことこの上ない。縮め。
近くで見て気付いたが、こいつの服も新品である。は?何それホワイトの癖に生意気なんだけど。
「都会に来たからってお洒落頑張ってんじゃねーよバーカ」
「お、ま、え、がっ!俺の服を破いたんだろうが!」
「それが何か?」
「開き直ってんじゃねぇ……!」
据わった目に地を這うような低音。その姿は地獄の悪鬼といったところか。夜族が蔓延ってる世界で地獄とか言われても……とは思うが。
それにしてもこの男、年々口が悪くなってる気がする。いやまあ、無礼ではあったが、こういうチンピラっぽい話し方ではなかった筈なのだが。
こんなんでも一応は美形なので、キャラが被るような真似は止めて欲しい。
かといってクール気取られても、危ない目をした男に惹かれる女の子やお姉様方が頬を染めるのだろう。結論。その内こいつの顔潰すか。
やいのやいの騒ぐホワイトを適当に流していたら、本日二回目の鈍い音。
肩から手を外して振り返る。なんだ、まだ居たのか。
先程とは違うのは、柄を叩き付けたBは斧を構え直したところか。
それまで背景と化していた聴衆が下がり、俺達三人の周りには空間が出来た。周囲に緊張が走る中、面白そうに財布を出す連中がいるのはお約束だろう。
「コケにしやがって……!痛い目見ねぇとわからねぇみてぇだな!?」
「いや、こいつは痛めつけてもわからない。もしかしてそういう趣味なんじゃないかと思い始めてきた」
「人を被虐趣味みたいに言うな!」
くっ、と立てた親指で示せば、直ぐ様飛んでくる怒声。
吸血には快楽が伴う為、たまに被吸血依存症と呼ばれる依存症になる人間もいる。
私はあの方の食事なの。と、頬を染めて微笑む姿に、乾いた笑いが止まらなかったのは昔の話だ。見た目も性格も可憐な娘だったのが余計に怖かった。
その点、セレネの今の自称ボトルは、気が強いだけの単なる変態だと思えばいいので楽である。会う度に俺に突っ掛かってきてウザいが。
本当にホワイトが被吸血依存症になったらセレネに押し付けることにして、とりあえずこっちをどうにかするか。
「訓練所以外のギルド内では、緊急時を除いて武器の使用禁止。俺よりあんたの方がわかってんだろ」
「礼儀のなってねぇ餓鬼に仕置きするだけだ。何の問題があるって?ええ?」
いや普通に問題だろ。よくこんなのがBに成れたものである。大丈夫かギルド上層部。
「あの若造もテメェ等も、どいつもこいつも人をコケにしやがって……!」
「若造?」
「テメェ等どうせ、ガタガタ後ろで震えてる精霊術士だろ。頼みの綱の精霊は使えねぇぜ!」
ギルドの規模にもよるが、ギルド内では訓練所と医務室を除いて精霊避けが張られている。訓練以外で暴れるな、ということだ。
正直俺は精霊避けなんぞ痛くも痒くもない。理由は使えないから。
半吸血鬼なので実は全く使えないわけではないのだが……夜族だからかそれとも才能か、薪に火を着けるだけで息が切れる。炎の玉なんか出したら倒れるんじゃないだろうか。
もっとも、半吸血鬼の身体能力なら火など簡単に着けられるし、戦闘の際は"夜の血"がある。精霊術を使うよりよっぽど楽なので、暑いときに氷出すくらいか?使うのは。
この中では体格に恵まれているとは言えないし、それらしい武器も持っていないが、人を見た目で判断するものじゃないぜ、ハゲ。
自分から手を出すなら問題だが、相手が先なら正当防衛。正体バレない程度にぼっこぼこにしてやんよ?
「精霊避けなんざ当てにしなくても、あんた相手に必要ねぇなあ?」
「なんだと!」
「能書きはいいから掛かってこいっつってんの。それとも、頭の中身も大鬼級ってか?」
それじゃあハンデが足りねぇな!
笑う。嗤う。
顔を真っ赤にして憤怒の表情を浮かべたBは、頭部以外大鬼にそっくりだ。
周囲の緊張がピークに達した。ギャラリーが見つめる中、Bが斧を大きく振り上げた瞬間。
ざばあぁ!
…………。
帽子のつばから、ぽたぽたと滴が落ちる。クラウンの中に湿気がこもる。
Bを見ると、斧を上げたまま固まっている。頭を守るものがない分、俺より濡れ方は酷い。
横目でホワイトを見ても、同じ有り様だ。間抜けな顔をしているので悪人面が落ち着いている。
「全く、なんと騒がしい場所だ。これだから人間は」
高過ぎず低過ぎない、透明感のある声。
この場にいる全員の視線が声の主に集中する。
例えるなら、神話をモチーフにした彫像。
青を基調とし、白い紋様と金糸の刺繍が美しいローブ。
被ったフードから覗くのは、金糸と見間違うばかりの金髪と白い肌。翠玉の如き双眸は涼やかで、視線を向けられたの心を鋭く射抜く。
だが俺は知っている。
透明感のある声には無色無臭の毒がこれでもか!と含まれているし、涼やかな瞳を覆うのは分厚い蔑みと嘲りだ。
引きこもりの癖になんだってこんな所に居やがる。
今日は厄日か。




