(0-7)片目の無在
「くっ……」
群れるギルドに襲われて数十分。
必死に戦っているが、勝てる気は全くない。
「らああぁぁぁ!」
刀を左斜め下から右斜め上へと振り上げる。
しかし、相手の体制を崩せない。
相手は訓練しているようで、連係がすごく、一対一ならたとえ少林寺拳法家でも勝てるが、大人数しかも100以上は無理がある。
相手の作戦は弱い一撃を何度も当てて徐々に魂を奪っていく戦法だ。
一瞬の隙を突かれ一撃を確実に当てられる。
そんな状況下で十分も耐えれるのは僕だからだろう。
僕の戦法は相手の攻撃を読み、隙を突き攻撃する戦法だ。
だから相手がどのように攻撃を仕掛けてくるかはわかる。
しかし、よけれないものはよけれない。
右、上、左右からの三連続フェイント、左からの斬り上げ……
わかっていても避けることも、防ぐこともできない。
自分で編み出した戦法は合気道に近い。
優れた直感力があれば最強といえるだろう。
だが複数では無力だ。
だから僕は複数でも対応できる戦法を考えた。
それを試すときは多分今だろう。
僕は少しかがんで左に回転して、365℃の範囲内にいる
全ての相手の攻撃をいなし、カウンターを当てた。
そして青い光をまとい、それを回転しながら放った。
「よし……」
「ククク……やるな流石『堕とされた影』と言った所か?」
掛けられた声は聞き覚えがあった。
恐る恐る声の方向へ振り向くと、不馬改人がいた。
「お前!よくも優神さんをおぉぉぉ!!」
怒り狂って攻撃を仕掛けたが、あっけなく避けられた。
「殺したのは復習だよ。覚えていないのか?俺の養父さんを殺したことを!」
「なっ何だと?」
「忘れたのか!?二年前にお前が殺したんだ!」
「何を言っている!僕がこの力を手に入れたのはお前と出会った少し前だ!」
「嘘を吐くなぁぁぁ!確かに養父さんは言ったぞ!雪宮李秋と名乗るやつにやられたってえぇぇ!!」
「バカな!?僕がその名を名乗ったのはつい最近のことだ」
「嘘だぁ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁあぁぁ!!!」
彼が叫んだことから察した。
もう話は通用しない……。
不馬改人との戦いが始まって二分。
一気に追い詰められた。
一対一なのに!攻撃は読めるのに!攻撃がかわせない!?
「もうダメか……」
そう思ったとき、上方向から何者かが落ちてきた。
「ハハハハハぁははははぁー。面白い事やってんじゃねぇーか。お前ら強そうだなぁ?どっちも殺っちまおうか?……いや強い方を殺ってやるぜぇぇぇ」
その男は左目に眼帯をしていて、右目は爬虫類のようだった。
その男は不馬改人に襲い掛かったかと思えば、
こちらに振り返り、不気味に微笑んだ。
「こりゃまた面白いなぁ。お前『無在』との契約者だろ?」
何のことだ?と口は動いたものの言葉にはならなかった。
「へ~もう一つ面白いじゃねぇかぁぁぁ。自覚なしとはなぁ!お前最高……ん?」
「邪魔をするなあぁぁぁ!!」
男が話している隙に不馬改人が男に斬りかかった。
どうやら不馬改人は刀の二刀流のようだ。
しかし、男は指先一つで遠くまで吹き飛ばした。
「何びびってるんだお前?魂転者は魂にダメージ与えねぇと意味ねぇぇんだぜ。それよりお前、複雑に魔力が絡みついていやがるぜぇ。こりゃあ、たくさんの魔方陣、契約書書いてるだろ?だから自覚がねぇってか」
男はこちらが答える間もなくしゃべり続けた。
言っていることは意味不明だが、
僕が『無在』との契約者だということはわかった。
「ん?お前まさか……呪われた天使とまで契約してるの……か?」
「……どういうことだ?」
「なるほどこりゃあ、さらにおもしれぇなぁ……、だが危険すぎるなぁ。お前、絶対五千年後まで二回死ぬなよ!」
また五千年後……一体どういうことなんだ……?
―終わりよ。
―ねぇお母さん?
―なぁに?
―『未定願』ってなぁに?
―さぁ私にもわからないわ。
―そうなの?
―そうよ。ごめんね。
―いいよ別に。じゃぁおやすみなさい。
―おやすみ。
―(『未定願』彼はまだこの世にいるかしら?)