(0-6)五千年の約束
優神さんが死んでから一年。
優神さんがくれた手紙には
『五千年後にまた会おうね』と書かれていた。
よくわからなかったけど、その約束を守ることにした。
あれから僕は不馬改人を探し続けている。
しかし、見つかる以前に情報すら全くない。
この一年間で得た情報は二つだけ。
一つはギルドに所属していること。
二つ目は妹がいること。
二つ目は意味のない情報だ……。
ギルドに所属していると言っても
ギルドはたくさんあるからわからない。
今確認できているのは五つだけだ。
ギルドの他にもグループと言う集団があり、
情報はあまり役に立たない。
ギルドとは50~100人以上の組織で
ギルドに入っていると、自分が死んだとき、
助けてもらえるなどプラスの面がある。
ただし、他が死んだとき、魂を分けなければならない。
僕にとっては殺しても蘇って、また魂を大量に奪うから
厄介な組織だ。
そしてグループとは3~10人程度の集団で、
群れて魂転者を襲ったりする。
厄介だがギルドとは違って死んでも助けることはない。
僕は何度も襲われたが、何とか勝つことは出来ている。
しかし、ギルドでも群れるギルドが最近出来たらしく、
そのギルドに会ったら僕は死んでしまうかもしれない。
「今日は曇りか……」
僕はそうつぶやいて不馬改人を探しに外へ出た。
光が射す隙間もないくらいの曇り空。
僕の体は日光に弱い。
視力の低下、体力の消耗など体に異変が起きるから
曇りは僕にとってはいい天気だ。
この異変は魂転者になったからではなく、生まれつきのものだ。
「はぁ~」
ため息をして空を見上げた。
すると、雨が降ってきた。
その雨は強く、勢いよく、でも小粒で痛くなく、むしろ優しかった。
「まるで僕みたいだな」
強く必死に幸せに向かって走っても届かない……。
僕は雨に親近感を感じた。
雨は一番好きな天気だ。
なぜか力がみなぎってくる。
雨は急に大粒になり、ザーザーと音を立てる大雨になった。
雨に気をとられていて気づかなかったが、
周りに大量の負の感情があり、迫っていた。
群れるギルドが来たらしい。
いくら僕が青い光を持っていても、
100人以上はさすがに勝てない。
「約束……守れそうにないな……」
―もう終わり?
―そうよ。もう終わり。
―じゃぁ、もう寝るね。
―そうね、もう寝なさい。
―うん。知に溺れるといけないもんね。
―……おやすみ。
―(……やっぱりあの人の子ね。
『知に溺れる』って考えつくなんて)