(0-5)影天使は正しい道を歩む
今回は主人公は出てきません。
万華鏡の中のような空間に男が二人いた。
「ククク……姫が死んだか……」
男がつぶやいた。
「ん?誰だ。ここは私しかいないはずだが」
その男にもう一人の男が近づきながら言った。
すると男は妙なことを言った。
「久しぶりだな『無在』……いや、初めましてというほうが正しいか?」
「誰だと聞いている」
『無在』というもう一人の男は聞き返した。
しかし、また妙なことを言ってくる。
「ふむ、俺か?好きに呼べ」
「ふざけているのか?」
『無在』が冷静に言い返すと
男は別の話をし始めた。
「今回は『母体』と聞いているが、どうなるだろうな」
「何を言っている」
『無在』は男に聞くが、男は話をやめない。
「彼が失敗をしなくても他が失敗すれば意味は無いな」
男は額に手を当てながら『無在』の方へ振り向いて尋ねた。
「『無在』、お前もこいつの契約者だろう?何か思わないか?」
「……さぁな、こいつは『影天使』だということはわかるが」
「そうか……。ククク……、何度聞いても同じか……」
そう言うと男は額に当てていた手を下ろし
上を向いた。
『無在』は男の言葉が理解できず
その男を黙って見ていた。
すると男はつぶやいた。
「ふむ、初めての反応だな」
『無在』は妙な事ばかり言う男にもう一度聞いた。
「お前は誰だ?」
すると男は上を向いていた顔を『無在』に向け
答えた。
「さっき言っただろう。……ふん、人間と契約を結ばなければ何も出来ない存在が俺にそんなことを言えるのか?」
「なっ」
『無在』は後退りをした。
すると男は近づきながら自分のことを言った。
「俺はお前達とは違う。お前達みたいな天使でも悪魔でもない奴『無の存在』とは違う」
「じゃぁ、お前は何だ私達『無の存在』と同じじゃないのか?」
「俺はお前達のように名前は無いが『定願』という部類に入る者だ」
男の発言に『無在』は混乱し頭を抱えた。
男は止めを刺すように『無在』に言った。
「神や天使は善に存在する。悪魔は悪に存在する。しかし『無在』は何にも存在するところが無い」
『無在』は混乱しながらも対抗した。
「お前はなんだ?お前も私達とは違うだけで存在するところはないのだろう?」
しかし対抗はあっさり意味をなくした。
「俺『定願』希望や夢に存在する。……が俺は事情により『未定願』となったが存在するところはある」
「くっ……」
『未定願』は言い終わると後ろへ向き
歩きながら『無在』に言った。
「俺達で争っても意味は無い。今は『不馬改人』が邪魔だ」
―今日の分は終わりよ。
―今回のは何だったの?
―うーん、それはたぶん契約者じゃないかしら。
―へぇー。
―私が何を言いたいかわかるかしら?
―うん!もう寝なさいでしょ。
―うふふ。じゃぁまた明日ね。
―うん。おやすみなさい。