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「未定」の書  作者: アナン
第二章
17/22

(1-7)新学期

「はぁ~、何とか時間以内に食べ終われてよかったな」


 今はもう家を出て、駅までの道を歩いている。


「そうだね~」

「そいえば李秋。あんた何で孤児院なんか建てようと思ったの?」


 いまさらかよ……もう一年も経つがこんな質問は初めてだ。


「ん?ああ、建てようと思ったのは僕よりも苦しんでいる人たちがいることを知って、助けたいって思ったからだ」

「ふ~ん」


微妙な反応だな。

 そんな何気ない会話をしているうちに、駅に着いた。


「じゃぁ、またな」

「またね~李秋くん」


 相変わらず速は返事をしないな……。

 手を振っている桜を眺め、電車に乗った。


「あの、李秋さん。私の名前はどうするのですか?」


 あ、そういえばどうしようか。

名前がないのはこちらからも何て呼べばいいかわからない。


「う~ん、苗字は雪宮でいいとして、名前は……」

「いいですよ、無理に考えなくても。私は大丈夫ですから」

「あ、ごめん。明日までに考えておくよ」


しかし、困ったことになった。

名前を考えるときは、相手の特徴などで決めていたから、彼女とは会ったばかりで、よくわからない。

……速は足が速いからで、桜は桜が好きだからで……

だめだ……全然思いつかない。


「李秋さん」

「え、何?」

「私は学校に着いたら何をすればいいでしょうか?」

「ああ、職員室に行かないといけないから僕が案内するよ」

「ありがとうございます」


 ……とは言ったものの、僕たちは遅刻ギリギリに登校することになるから、

一緒のところを見られるのはまずい。

なぜなら僕が雪宮李秋だということは教師の一部だけだと言うことと、僕と女性が一緒にいると、厄介な連中に絡まれるからだ。

 ばれないように校舎に入るにはどうしたらいいのだろう。

裏門は遅刻してくる生徒が遅刻がばれないようにこっそり入ったり、不良の溜まり場のようなところだから無理だ。

正門は遅刻してくる生徒をチェックするため生徒指導の教師がいるため無理だ。

東門は……グランドだし、教室から丸見えだ。

いっそのこと気絶さして屋上に跳ぶか……いや、やめておこう。


「李秋さん。どうかしましたか?」

「あ、いや、一緒にいるところを見られるといろいろと厄介だから……」

「……そう言うことでしたか」


 ああ……もうすぐ学校に着いてしまう。

僕の学校は駅を降りてすぐだから、もう時間がない。

あ!そういえば、学校にいるときに警察から犯人逮捕協力要請が来たときに使う脱出路があった!

よし。これで問題は全てクリアだ。

ん?そういえばもう一つ問題があった!

僕は学校では違う名前を使っているから彼女に伝えないと……


「あの、すみませんが、僕は学校では違う名前を使っているので、しょうと呼んでください」

「あ、はい。わかりました」


これで問題はもうないだろう。



「じゃぁ、先に教室に行ってくるから」

「あ、はい」


 職員室に彼女を預け、教室に向かった。

職員室に寄ったので表向きには遅刻だ。


「はぁ~、こんなことばかりだと単位はとれないな」


 孤児の人に入学等のことで学校を休んだりしているから学校では不良として見られている。

しかし、お金は十分にあるため、生活には困らない。


「そろそろ授業が始まるな」


 そうつぶやくと、誰かが近寄ってくる気配がした。

振り返ると、学校での数少ない友達の鋼峰こうみね 紀美夜きみやがいた。


「おはよー。ゆ・きみやくん」

「相変わらずだな。あと、『ゆ』と『きみや』に間を入れるな」

「いいじゃん。私と同じ名前になるからさー」


 彼女とは入学したその日に知り合った。

僕に絡むようになったのは言うまでもないだろう。

彼女はよく男子と一緒にいることが多いが、男子は少しうざいと思っている。

もちろん僕もだ。


「ねーねー、ゆ・きみやくん」

「何だ?あと間を入れるな」

「今日転校生がくるんだってー」

「知ってるよ」


 ……ああ、なんだかお約束みたいになってきた。


「なんだ知ってたの?じゃね、バイバーイ」


 嵐みたいなやつだ……。


「よっ、宵。あのさーマジで紀美夜と付き合ってねぇーのか?」

「何度も言うが違う」


 なんだか紹介するのが面倒だ。友人Aでいいだろう。


「相変わらずクールだなお前。あ、そういえば転校生来るんだってな」

「さっき紀美夜に聞いたから知っている」


 全くマイペースなやつだ。

僕以外に友達いないのも当たり前だな。


「あっそ。じゃぁな宵」

「ああ、じゃぁな友人A」

「なんだよ友人Aって!俺は真田さなだ 油介ゆすけだよ!なんでいきなりそんな呼び方するんだよ!」


 めんどくさいやつだな。マジで友達僕以外にいないだろう。かわいそうなやつだ。


「ああ~、そうだったね?サラダ油くんだったね」

「やめろよ!そのあだ名、お前が言い出したからみんなにからかわれるんだぞ!」

「そういえばそうだったな。愛するお姉ちゃんにも呼ばれちゃったシスコンのサラダ油くん」

「なに暴露してんだよ!シスコンって!」


 え!?マジでシスコンだったのか!?

これは重大発表だな。


「……冗談で言ったつもりが本当だったのか」

「え、あ、ちがっ」


 このあと、サラダ油は叫びまくって職員室に呼び出され、転校生を見ることができなかった。



「では、真田くんも職員室に行ったそうなので、転校生を紹介します」


 先生がそう言うと、生徒たちはさわぎ始めた。

 そして、転校生が入ってくると男子たちの騒ぎが激しくなった。

美人が転校してきたことに喜んでいるのだろう。


「では、自己紹介をお願いします」


 そういえば、名前ないのにどうやって自己紹介するのだろうか?


「あの……私は雪宮です。事情があって今は名前はありませんがよろしくお願いします」


 よかった、ちゃんと自己紹介ができた。


「えーっと席は、雪宮宵くんのとなりが空いているのでそこに座りなさい」


 なぜか、先生がそう言って、彼女が座るとざわざわとなった。

会話を聞いてみると……


「ねぇ、雪宮って雪宮宵と苗字同じよね?」

「うんうん。しかも席となり同士だよ」


という会話が聞こえた。

 しまった。苗字が同じなのを忘れていた!



―はい。終わりよ。

―今回は学校?のお話だね。学校って楽しそうだね。

―そうね。私たちには学校と言うものがないからね。

―私学校に行きたいよぅ。

―そうねぇ。お父さんならできるかも知れないわ。

―本当!?早くお父さん帰ってこないかなぁ。

―うふふ。もう寝なさいね。

―は~い。

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