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「未定」の書  作者: アナン
第二章
16/22

(1-6)カギのカギとトビラの前

 光と闇とが交差する空間。

不気味とも美しいとも言える空間。


「ククク、久しぶりだな雪宮。何年ぶりだ?」

「黙れ異端者が!……しかし、あいさつはしようか。久しぶりだ。8千4百兆6億2百5十万9十9年ぶりだな」


 ……相変わらず細かいやつだな。

それと、相変わらず空間のセンスは悪いな。

 どこを見ても同じように広がり、流れている光と闇。

しかし、足場はある。


「異端者よ。なぜこんな世界にゆがみの生まれる行為をする?」

「お前にはわからん。……『断言』を知っているか?」

「何だそれは?」


 やはりか……。

 あきらめて、ため息を吐く。その息は白く広がった。

それはこの空間の温度が低いことを教えた。

『定願』は温度を感じないため、息が白くなるかぐらいでしか調べる方法はない。

 この温度……氷系ひょうけい魔法を使う気か?それともいつものアホで温度の調整を忘れたか?


「雪宮。また温度調整を忘れたのか?……確か、前に会った時も温度が低かったが……」

「だ、黙れ異端者!氷系魔法を使うからだ!」


 ……アホだな。動揺から忘れたのもわかる。それと使う魔法をばらしてどうするんだ……。

この程度なら温度を上げても気づかないだろう。


「お前は何年たってもミスが多いな」

「黙れぇぇぇ!」


 そう雪宮は叫ぶと襲い掛かってきた。


「やれやれ……困ったやつだ」


 そうつぶやき、『未定願」は業火を放った。


「ぐあ……っ!?……なぜだ!なぜ氷系魔法が使えない!?」

「やはり温度を変えたことに気づかなかったか……それと自分で暴露したことも気づかなかったか?」

「……っ」


 動揺と怒りを見せ、立ち上がる雪宮。だが、膝から崩れ、手をついた。

 想像以上のアホだな。いくら強くても、ミスが多ければ意味がない。


「くそぉ……!」


 必死に立ち上がるが、また手をついた。


「俺はお前と話しているうちに魔力を高め、準備をしていた。

お前みたいに瞬時に準備した魔法とは格が違う」

「話している間だけでこんな強大な魔法は使えないはずだ!」

「ククク、実はな、お前と会う前から準備をしていたんだ。お前のことだからどうせ空間調整をしていないと思ってな」


 ククク、笑いがこみ上げてくるな。これほどうまく行くとは……ククク。


「その妙な笑い方はやめろ!」

「話を聞け」


話を聞いていないとはもうアホとしか言えんな。

 あきれて手を額にあて、上を向いた。

 俺の業火を受けて死ななかったやつは一人だけだ。もう、勝負はついた。

あとは、燃え尽きるのを待つだけ……。


「じゃぁな雪宮。聞きたいことはあったが、さよならだ」

「聞きたいことだと?」


 まだしゃべれたのか……聞くとするか。


「ああ、カミ・シャ・ドロクスは元気か?」

「……そいつはもう……死んだ」

「そうか……サヨナラ雪宮」


 そう答えたとき、すでに雪宮は燃え尽きていた。残ったのは一滴の涙で固まった灰だった。

 悲しいな、かつての友人を殺していくのは……。

それに、もうあいつも死んだのか……ククク、未練だな、こうして毎回灰の塊を拾い、保管しているのは……。




―今日はこれで終わりよ。

―そういえば、お母さん前にカミ・シャ・ドロクスって言ってたよね?

―ああ、それね。彼は私の友人で、昔を思い出しちゃって、思わずつぶやいてしまったのよ。

―そんなにいい人だったの?

―ううん。最低な性格だったわ。でも、死ぬときに全ての人の憎しみと悲しみを背負って行ったわ。

でも、今は生まれ変わってるけどね。

―へ~。

―もう寝なさいね。

―はぁい。


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