(1-5)二つの世界
二つ目の世界は『未定願』主観です。
速との出会い……それを思い出した。
しかし、その記憶はもう何10年も昔に起こったような気がする。デジャブのような……。
それは優神さんの時と同じ感覚。
でも、僕はまだ16歳だ。何10年も昔の記憶なんてあるはずがない。
「ちょっと李秋?何ボーっとしてるのよ!」
「え?あ、ちょっと考え事してて」
「ふ~ん。それよりさ、もう7時過ぎだけど間に合うの?」
「え?」
台所から出て時計を見た。
「7時!?」
7時過ぎだった。
いつもならもう出ている時間の10分前。
まだ食事も済ませていない。
「7時って……桜、今日は急いで食べろよ?」
「あ~……うん」
桜は食べるのが遅いからいつもは早くに作っているのに!
それよりさっきの、あ~って何だったんだ?
いやいや、それよりじゃないって。
「あ、李秋。私の少なめにして」
「じゃぁ私が食べるね~」
「はいはい……。あ、そういえば、あなたは料理少なめにしますか?」
……名前ないから呼びづらいな。それに……
「いえ、私は普通でいいです」
同級生に敬語を使われるのは少し変な気分だな。
……ったく速はいつも少なめだな。ちゃんと食べないと大きくならないのになぁ。
しかし……あんなに暴れたりするのによくこれだけでエネルギーもつなんて、省エネか?
「あ!こぼしちゃった~」
「え!?」
ああ!時間ないのに!こぼすのは計算外だ……。
まあ、水だし大丈夫か。
――数分後――
「何とか時間以内に食べ終わったな」
「食べるのにそんなに時間かからないじゃない」
「お前は少ないからだろ!」
何で毎回ツッコミ入れてんだろう……。
とにかく、時間以内に食べ終わったし、そろそろ出るか。
「じゃぁ、学校行くぞ」
*
「ほぅ、もう代ハラを思い出すとは……いや、思い出しているわけじゃないか」
「『未定願』。本当にここが気に入ったようだな?」
『無在』か……本当はここはお前の住む世界じゃないがな。
「いいだろう?ここならあいつを観察できるしな」
「おまえは何が目的だ?」
目的……お前に言ってもわかるわけがない。
俺の世界でもわかるやつなんかいなかった……。
目をそらしながらそう思った。
「お前には言ってもわからない」
「……言ってみなければわからないだろう?」
確かにそうだな。ここは賭けてみるか。
「……教えてやろう。俺の目的は『断言』の『カギを与えよう。カギは遊びを終わらせる。しかしお前にカギは見つけられん』を打ち破ることだ」
「……『断言』を打ち破るのは無理ではないのか?」
!?わかったのか?『断言』を知っているのはこの世界にはいないはずだが……。ククク、初めての結果だ。今回は成功するか……?
「まさか『断言』を知っているとわな」
「ああ、知っている。予言ではなく『断言』だろ?確定しているということだな」
確定している……か、しかしカギはある。見つからないと言うことで、ないと言うことではない。
ククク、カギは見つからない……ならば、見つからないまま使えばいい。
例えば、誰かが『大声』を出せば扉が開くのであれば、自分はそのことを知らずに『叫べ』ばいいだけだ。
「おい!」
「だれだ?」
「ひでぇなぁ、自分でやとったくせによぉ?」
やとった……?ああ……
「そうだったな『片目の』」
「天ノ姫水城だ『片目の』じゃねぇ」
「戻ってきたと言うことは、何か見つけたか?」
「不馬改人が動き始めたぜぇ。封印したはずだけどなぁ。あと、あいつがお出ましだぜぇ。お前の言ったとおりのやつだ」
「そうか」
しかし、今回は早いな。もう不馬改人が動き出したか。
それにあいつが来たか……。
「じゃぁ、行ってくるからな『無在』こいつは頼んだぞ」
「どこに行くつもりだ?」
いちいちと質問してくるやつだな。
「雪宮李秋を殺しに行く」
「おい待て!殺すだと?頼むと言っておいて殺すのか!?」
「それはこいつの本名じゃない。その名が本名のやつを殺しに行くだけだ」
「……」
ククク、今回はあいつの名前を使ったか『優しい悪魔』よ。お前の使う名のやつは俺に殺される……。
仕方のないことだ。殺したくて殺しているんじゃない。
……!!こいつの使う名は毎回違う?『定願』の名を使う……。『定願』は願いを叶える……。……そう言うことか。
ククク、カギのカギは見つけた。あとは俺の得意分野だ。直感で動く!
―終わり。今回は少し、謎があったわね。
―ねぇねぇ、カギってなぁに?
―カギはねぇ、そのままの意味よ。何かを開けるための何かよ。
―へ~。
―ほら、早く寝なさい。昨日は早く寝たでしょ?
―はぁい。
―(……本来あなたはあの人と結婚し続けるべきなのに、私なんかと結婚するなんて……幽霊の代ハラさん、私は愛する人をあなたから奪ってしまったわ。もう成仏なんて……できないわよね。ごめんなさい……)