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「未定」の書  作者: アナン
第二章
13/22

(1-3)過去の速

速視点です

 ありえない……。そう思った。

こんなやつが私の過去を知っているなんて……ありえない。


「な、何言ってるのよ……!?」

「ですから、初めまして城原しろはら美由紀みゆきさん」

「……!!?」


 何で!?私の本名を知っているの!?


「……実際には以前に会ってますけどね」

「あんたなんか私はしらない!」

「覚えてないのも無理はないですねぇ……。本当に覚えていませんか?あなたが組織に入ることになっ

た、あなたに真実を教えて、あなたが組織を抜けることになった原因を作った……私を」


 あの時の!?

確か私が組織に入るきっかけになった事件――


 

 私が5才のころ。


「ここはどこ?お母さんとお父さんはどこ?」


 あのころの私はそこがどういう場所かは知らなかった。


「ここはあなたが……あなたを強くしてくれるところよ」

「そうなの?……お母さんとお父さんは?」


そこには今私の目の前にいる人がいた。

年齢は見た目では10代くらい。年を取っていない……。


「あなたのお父さんとお母さんは死んだわ」

「嘘……そんな、何で?」

「事故で死んでしまったわ……」


 私はその女にだまされた。実際にお母さんとお父さんは事故で死んでいなかった。

人体実験専門組織の『NONノン』の人間強化のテストにお母さんとお父さんは使われ、失敗して死んでしまった……。

 だまされた私はその実験に使われた。

実験されているときはとても苦しかった。体中が痛く、かゆく、暑く、寒くてけもののような叫び声を上げて、気絶しては起き、気絶しては起き、そんなことが10時間ぐらい続いた。

麻酔ますいは使われなかった。使うと実験の副作用と激しく反応し、死んでしまうらしい。

 実験が終わり、気がつくと体が軽く感じられた。

周りを見渡すとあの女がいた。


「お疲れ様。辛かったわね……」


 その一言に私はさらに洗脳された。

悲しそうで泣きそうなその顔は演技だった。だけどそのころの私は気づくことができなかった。

 私は実験成功者01として記録された。

 それから私は『NON』に入った。

それ以外私が生きれる道はなかった。

 『NON』での仕事は写真と名前と住所の書かれた紙を渡され、その紙にかいてある人物を組織に連れて来ることだった。

 私は強化実験でとても速く走ることができ、その分蹴りも強かった。そのため仕事は私にとっては楽だった。

 連れて来られた人は別に人体実験に使われるわけでもなく、ただ牢屋ろうやに入れられていた。

牢屋に入れられた人は知らないうちにいなくなっていた。

そのことをあの女に、釈放しゃくほうしたと教えられた。 

私はその仕事を『警察のようなもの』と教えられていたため、疑うこともなかった。

 私は組織では動物のようにあつわれ、怒りを感じても抵抗することは許されなかった。それも普通だと教えられていた。

 しかし、ある日あの女に事実を教えられた。


「ここに連れえて来られた人はね、殺されているのよ。殺されている人はその身に『力』を宿している

の。だから私たちはそれを奪っているのよ」


そう言って女は高笑いをして、私が何も知らずに人殺しの手伝いをしていたことに恐怖している様子を楽しそうに見ていた。


 そう……だから私は組織を抜け出した……。


「うふふ、思い出したみたいですね」

「よくも私を……そんな……ことに!!」


 怒りがわいてきた、私をこんな風にした元凶。それがそこにいる!


「あらあら、勘違かんちがいしてますね」

「何をよ!」

「私は初めまして(・・・・・)と言ったんですよ?」

「だから何よ!」

「あなたの知っている人は私の母です。私は母に似ているので、わざとそう言っただけですよ」


 母?そんなはずはない、あの女は10代だった。それに私の目の前にいる女を私より年上……ありえない。


「……確かに母は10代に見えますが、当時は28歳だったんですよ」


 ……なっ!?

 思わずたじろいた。

 確かにそう言う人はいるけど、本当にあの女の娘?

だとしたら何をしにきたの?


「……まさか私を……連れ戻す……つもり?」


 動揺を隠せず、言葉が途切れてしまった。


「いいえ、違いますよ。私も事実を知り、その口封じに新しい実験体にされそうになったところを逃げてきたんです」


 そういうこと?それにしてもあの女、娘まで実験に使おうとするなんて……狂ってる。

今すぐにでも探しに行って、殺したい。でも、『力』を奪っているなら私より強いはずだし、それに、私は世界の真理を知っているから、殺しても私の立場が悪くなるだけだし、人体実験の被害者をこれから出さないためと言っても、相当な権力を持っているし、世界は子供の言うことなんか信じない。

だから殺さない。

 そういえば……李秋あいつも言ってたっけ、『強い悲しみを感じたものは真理を知る。落ちこぼれは世界をより良く変える力があるが、人をだまし、自分にとって有利にことを進める悪党になることが多い。それも真理だ。人間の弱さだ。それが世界だ』って。

 私は人の心を読むことは得意だからわかる。李秋あいつが私のためにわざと、イラつくことを言ったりして……そう言う優しいやつだ。

だから……好き……。




―おしまいよ。

―……世界ってやっぱり悲しいことでいっぱいなんだね……。

―そうねぇ、でもきっと幸せがくるはずよ。

―でも、そう信じて辛い思いをし続けて死んでいく人もいるよ……。

―もう、お父さんみたいなこと言って。そんなこと考えてると、本当にそうなっちゃうわよ。

―あ、そういえば『あの女』の娘の人無視されてない?

―そういえばそうねぇ……って話をずらさないの。

―もう寝るね。おやすみなさい。

―もう、しょうがない子ね。

(やっぱりこの子はあなたに似ていくわ)

 

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