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「未定」の書  作者: アナン
第一章 春に咲き、春に散る花
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(0-9)カナシミナド モウ……

第一章はこれで終わりです

 天ノ姫水城が去ってから、一人雨の降る中で空を見上げて立っていた。


「『雨天使うてんし』でもさまよっているのか……」


 つぶやいてから家へ向かった。

 帰りたくない家に帰る。

帰ってくるのを待つ人はいない。

 自分の力を過大評価していた。不馬改人は強い……しかし天ノ姫水城はもっと強い。

まだ他にもたくさんいるのだろう。

 そんなことを考えていた。

しかし、不馬改人は倒すしかないと思った。それは自分が初めて死んでほしくないと願った唯一の存在を殺したからだ。

クラスメイトが死んでも、家族が死んでも何も悲しいとは思わなかった。そんな自分が死んだら悲しいと思った人。

初めて愛した人。心から愛した人。でもその人は殺された。

事故でもなく、病気でもなく、殺された……。

 考えていると怒りがわいてきた。

そして、家に帰らずに不馬改人を探しに行った。怒りに我を忘れて……。


 気がつくと廃墟はいきょとなった工場にいた。

その工場は2kmかける4kmの8k㎡広い工場だった。


「よくここがわかったな」


 突然声を掛けられた。が、見渡してもだれもいない。


「ここだ。上だよ」


言葉通りに上を向くとそこには不馬改人が空中にいた。

 なぜだ!?高く跳ぶことはできても浮遊ふゆうはできないはずだ。

しかし、実際に空中に浮いていた。


「ククク、『無在』って知ってるだろ?」

「まさか!?」

「その通りだ。俺は魔法の力で浮いている」


こいつも契約者だったとは……。一体どう言う……


「いつまでも会話してると思うなよ!」


 いきなり襲い掛かってきたので反応しきれず、攻撃を受けてしまった。


「……っ」

「甘いんだよお前は!」


いくら脅威的な身体能力を持っていても、差は必ずある。しかし、不馬改人との差はありすぎる。最初から勝ち目のない戦いということは覚悟していても、いざ戦うとなると恐怖で動きが鈍る……。


「お前はなぜ僕を狙う!?」

「前にも言ったはずだ!お前は養父とうさんを殺したんだぁぁ!」


 叫びと同時に振り下ろされた刀は重く、地面に足が沈んだ。


「くそっ」


足は深く沈んでいるためなかなか抜けない。

 その隙に改人は容赦ようしゃなく攻撃を仕掛けてくる。

 強い一撃を受け、体が吹き飛んだ。

そして、コンクリートの壁にぶつかり、体が埋まってしまった。


「おいおい……戦うなら俺を呼べよなぁ?こんな面白いことに俺をのけ者にするなんざぁ……まぁいい、手伝ってやるぜ?」


 そう言って天ノ姫水城は僕の体を壁から引っ張り出した。


「お前はなぜ僕を助ける?」

「は?そんなもん決まってるだろが。世界はこんなにも美しく、すばらしい。そして、面白いことがたくさんある。お前はその面白いことの一部だからだ」


 『世界はこんなにも美しく、すばらしい』か。本当にそうだろうか……。

理解はできたが、いくつか疑問があった。しかし、今はそれどころではない。


「ふん。二対一とはなかなかじゃないか……」

「があぁはははははは……お前は俺に勝てねぇだろ?」

「さぁどうかな?」


 改人はそう言うと空中に円を描いた。すると魔法陣のようなものが現れ、その中から幽霊のような何かがその描かれた円から出てきた。


「ほぉう。お前も『無在』の第三魔法は使えるようだな」

「第三魔法?」


 僕はそう聞くと『無在』の使える十三魔法の3つ目だ。と説明してくれた。

つまり、『無在』は十三の魔法を使えて、第一・第二・第三……と順に現在使える魔法があり、例えば、第五魔法を使えるということは第一から第四まで使えるということらしい。


「ククク、でもその第三魔法は俺の前じゃ意味ねぇぜ!」


水城はそう言って空中に円を描いた。すると改人と同じように魔法陣が現れた。

そして、改人の出した幽霊のようなものはその中に消えていった。


「ちっ……」

「ククク……」

「やはり、不魂的非生命体ぬけがらは二つ門があるとそこしか通れないのか!?」

「雪宮と言ったか?俺はお前の援護だぁ。だからお前がそいつを殺れ」


 子供のように目を輝せて水城はそう言った。

 そして僕は思いっきり刀を振り、その一撃が改人に当たり、改人は吹き飛んだ。はずだった。


「馬鹿め!」


攻撃は命中して手ごたえはあったが、改人は吹き飛んでいなく、そこに浮いていた。

 驚いていると、その隙にまた強い一撃を受けてしまった。


「ククク、驚くのは無理はない。俺の魔法は態形を維持することだ。まぁ、維持だからその場に浮くことしかできながなぁ!」


さらに追い討ちを掛けられ、大量に魂を取られてしまった。


「くそぉ!」

「お前、封印式法ふういんしきほうできねぇのか?」


 悩んでいる僕に水城は問いかけてきた。


「なんだそれ……ぐぁ」


 戦闘中に質問はやめてほしい……。が、重要なことみたいだから聞くことにした。


「なんだよ知らねぇのかよ!堕とされた影なのにか?」

「だから何だ!?」

「わかった教えてやろう。青い光を全身にまとってみろ。そうすりゃわかるはずだ」


 言われた通りにしてみると、『式法しきほう』の情報が頭に流れてきた。

 これはあの声じゃないのか……。そんなどうでもいいことを思った。


「どうだ?わかったかぁ?」

「……ああ」


 口では説明できないことだった。ただ本能・直感のままに体を動かした。

改人を上に討ち上げ、下に刀で叩き落とし、それを追いかけて落下し、改人が地面落ちるのと同時に刀で突き刺した。


「ぐはっ」


 改人が初めて声を上げた。それを聞くと心の奥から勝ったという気持ちが溢れてきた。

 そして刀に力を込めた。すると、魔法陣のような円が地面に現れ、上空に向かって強い光を放った。


「ぐあぁぁぁあぁぁぁぁ……!!?」


 改人の叫びが聞こえたかと思うと光は消え、改人の姿は見当たらなかった。


「勝った……のか?」

「ああそうだ。しかし、本当に『式法』使えるとはなぁ」

「?使えなかったかもしれなかったのか!?」

「ああ」


 水城はうなずくとケラケラと笑い、去っていった。


「ふぅー」


 ため息を吐き、終わったことに自覚を持ち、天を見上げた。


「悲しみはもう……終わった」


 しかし、見上げた空はまだ雨が霧のように降っていた。


―終わり。

―ねぇ?まだお話は続くの?

―続くわよ。

―よかった。

―でもお母さんしばらく出かけなくちゃいけないから、しばらくは本を読んであげられないわ。

―……我慢するよ。

―いいこね。

―あ!そういえば、お父さんはいつ帰ってくるの?

―そうね……。あの人はとてもとても長い旅をしてきて、時間の流れを忘れているし、今も旅をしているからまだまだ帰ってこないわよ。

―そうなの?

―そうよ。

―ねぇ、お父さんのお話してよ。

―だめよ。本読んだんだからもう寝なさいね。

―はぁい。おやすみなさい。

―おやすみ。

 第一章読んでいただいて、ありがとうございます。

 とりあえず、少し解説をします。

式法とは決まっている魔法で誰でも知識があれば使えます、その決まっている魔法の理解力が高ければ高いほど強力な威力を発揮します。

 逆に魔法とは決まっていない魔法で『無在』の契約者しか使えません。威力は契約している『無在』の力で左右されます。


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