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小噺10『和歌稽古』

作者: usomuki
掲載日:2026/06/19

○『和歌稽古』あらすじ

和歌を好む町娘に恋をした若者は、自分の思いを歌にして伝えようとする。そこで、若い頃に歌人へ師事していたという隠居のもとへ通い、和歌を習うことになる。


隠居に一首読めと言われた若者は、


恋しき人にこの胸のうち皆ぶちまけて伝へたや


という、恋心をそのまま並べた都々逸を読む。


隠居は、


「それは都都逸じゃ。和歌は五・七・五・七・七。三十一文字みそひともじじゃ」


と言う。若者は、


「味噌で書いた人文字でございますか」


と聞き返すと、隠居は呆れて、


「そんなものはない。五・七・五・七・七、足して31音から成るから、三十一文字と言うのじゃ」


と言う。更に、


「恋歌と言っても、直接恋心を詠んだものが全てではない。景色を詠みつつ、その心を込めた恋歌もあるのじゃ」


と言って、崇徳院の


「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ」


という歌を教えた。


隠居は、続けて掛詞や縁語、恋歌の作法を説く。しかし、何とか五七五七七で詠めるようにはなったものの、若者は掛詞探しも縁語探しも間違えてばかり。若者に和歌の難しい理屈はよく分からなかった。


結局、若者は、


「景色を詠みつつ恋心を込めれば良い」


ということだけは覚える。


ある日、娘に贈る歌の題材を探そうと浜辺へ出た若者は、美しい貝殻をプレゼントしようとして探す。しかし時間が遅く、めぼしい貝殻は残っていなかった。それでも浜辺には、同じように貝を探す人々が大勢集まっている。


若者はその光景を見て、「皆、大切な人のために探しているのだな」と感心して、その光景を詠んだ。


浦見ても貝の無しとは知りながら夏の海とは人波の寄る


「さて、心を込めないといけない」


と、歌の書かれた紙に自らの唇を押し当てた。


そして、意気揚々と娘にその歌を届けた。


ところが娘は歌を読んで腹を立てて、若者は二度と会わないとまで言われてしまう。


若者は訳が分からず、隠居のもとへ駆け込む。


「娘さんには怒られましたが、どこが悪かったんでしょうか?」


隠居は歌を何度も読み返し、


「浦見てもと恨みても、貝と甲斐、海と憂み、人波と人無み、寄ると夜……見事な掛詞じゃ」


と唸るばかり。


若者は、


「娘さんには零点を頂戴しましたが、この歌は何点でございましょうか」


と言った若者に対して、隠居は言う。


「うーん……100点!」

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