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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ラビットequalタンル 

作者: 南斗
掲載日:2026/06/10

短編書くの初めてです

どうぞ最後まで読んでいって下さい


[12月25日]


大学一年の冬、吐き出す息は白く、鉛色の分厚い雲が空を覆い隠していた。


麻塚巻(あさつかまき)は、重い足取りでその場所の前に立っていた。

郊外にある巨大なショッピングモール。華やかなクリスマスの装飾が施され、家族連れや恋人たちの笑い声が絶え間なく響いている。

しかし、麻塚にとってこの場所は、思い出すだけでも吐き気を催すほどの惨劇の現場だった。



丸一年。あの日から、ちょうど一年が経った。

高校三年の冬、麻塚の幼馴染であり、彼が密かにずっと片想いしていた少女『是兎須降(ぜとすふり)』が、このモールで命を落としたのだ。

彼女は息を呑むほど美しく、どこか浮世離れしたミステリアスな雰囲気を纏う少女だった。黒曜石のような瞳に見つめられると、麻塚はいつも言葉を失った。


出会ったのがいつかは覚えていない、物心ついた時には既に横にいたはずだ。親同士が仲良かったのか、産まれた病院が同じだったからか、詳細は分からないし聞くつもりもなかったが、小中高と同じ学校へ通いクラスも離れた事が一度もなかった。お互い直ぐそこにいる事が当然のように感じていたのだろう。

思春期を迎え明確に恋愛感情を持った後も、幼馴染という近すぎる距離が邪魔をして、結局一度も想いを告げることはできなかった。




事故は唐突だった。モールの吹き抜け広場を歩いていた是兎の頭上に、メンテナンスの不備で天井から巨大な照明器具が落下したのだ。

鈍い轟音。飛び散るガラス片。彼女の頭は無惨に割れ、即死であったと聞いた。


葬式には参列する気になれなかった、受験が近い事となにより自分の「当たり前」と「憧れ」を同時に失ってしまったという現実に目を向ける事ができなかった。



今日、麻塚はどうしても外せない野暮用があり、一年ぶりにこのモールを訪れざるを得なかった。自動ドアの前に立ち、過去の惨状を脳がイメージしてしまい眩暈を覚えたその時だった。


―不意に、周囲の喧騒が消えた。

行き交う人々が、まるでビデオの一時停止ボタンを押されたかのようにピタリと静止している。風も、音楽も、すべてが凍りついていた。


「久しぶりね、巻」


鈴を転がすような、しかしどこか背筋を凍らせる冷たい声。

麻塚が弾かれたように振り向くと、そこには死んだはずの是兎が立っていた。いや、是兎の姿を借りた『何か』だった。彼女は透き通るような白い肌と、是兎と同じ黒曜石の瞳を持っていたが、その存在感は明らかに人間のものではなかった。圧倒的で、畏怖を抱かせる重圧。


「驚いた? 私は『渡期過未(ときかみ)』 お前たち人間が『神』と呼ぶ存在の端くれよ」


「ときかみ……? 何言って...」


突然床がガラスのように砕け散り、麻塚は宙に放り出された。

だが下には地面も何もない、ただ真っ暗で落ちてゆくしかない空間が視界中に広がっている。


「信じて貰えないだろうから、ちょっとだけ力を見せてあげたの」


次の瞬きが済む頃には元の場所へ戻っていた、胸の鼓動が痛いほど強く激しい。

落下寸前で起きた悪夢、と言えばほぼ全ての人に伝わるだろうか。


「ハッ...ハッ..ハッ.」


過呼吸が引いていくまで、彼女は黙って麻塚の双眼を見つめ続けていた。



「お気に召したかな? それとも辛口だったかな? 今日はお前に特別な試練を与えに来てあげたの」



渡期過未様は、艶やかな唇を三日月のように歪めた。


「今から、是兎が死んだあの一年前の今日を『5回まで』ループさせてあげる。それより多くでもそれ未満でもなく、5回キッチリ。もし、一度でも彼女を閉店時間の二十二時まで生かすことができたら、その結果を現実にしてあげるわ」


麻塚の心臓がまた早鐘のように鳴った。是兎が生き返る? そんな奇跡が許されるのか。

さっき見せられた夢は確かに覚えている、非現実的過ぎるが理解せざるを得ない説得力。


「ただし」

「この試練を受けない、あるいは5回のループを使い切っても彼女を救えなかった場合、是兎の魂は永遠に地獄の業火で炙られ続けるわ。凄まじい苦痛よ。彼女の悲鳴が地上にまで永遠に響くの」


彼女の述べた事がどこまで麻塚に対し正確に伝わっているかは分からない。だが彼の脳はこの非科学的事象を最も噛み砕きやすくして彼に情報を食べさせた。



「……やる、やれ、やれば...是兎を、救えるかも、しれないん、だろ?」


単発で強い刺激を受けた人間の呂律などこんなものだろう。おぼつかないが確かな発声で彼は答えた。


「いい返事ね。でも気をつけて。ループ中、彼女に『ループしていること』や『彼女が死ぬということ』を直接伝えたら、その瞬間に彼女は血を吐いて死ぬわ。ルール違反のペナルティよ」


渡期過未様が指を鳴らすと、停止していた世界が急速に色を取り戻し、周囲の喧騒が再び鼓膜を叩いた。



「さあ、始めましょう。時刻は十二時五分。彼女がモールに入店して、五分が経過したところよ。健闘を祈るわ」



神の姿が掻き消えるとともに、麻塚は自分がモールの入り口ゲートに立っていることに気づいた。


正直今でも現実かどうかわ分からない、ふと見上げるとそこには映画の宣伝ポスターが壁一面に貼り付けられていた。


[12月24日公開]


「戻ってる...本当に...」


神から超能力が与えられたわけでも、拳一つで人を救えるヒーローになれた訳でもない。


ただ5枚、渡されたコインを握っている。


(偶然でもなんでもいい、悪い夢だってなんだって構わない)

(考えても分からない事は考えるな、今は...)



試練が、始まった。

4、5話ぐらいで終われたらいいな

麻塚の髪型はツーブロのイメージで書いてます

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