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『没落寸前の貴族に転生してしまった』〜現代知識という名の魔法で、中世を20世紀へ塗り替える合理的再興録〜  作者: tky
第1章 幼年期

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第18話 水平線の処断と支配の布石

「……全単位、接続リンクを確認。目標、座標海域C―4。……撃て」


七歳のリヒトは、アステリア港の防波堤に設置された臨時指揮所の中で、受話器を耳に当てたまま淡々と告げた。

背後には、領都から電気鉄道の超広軌貨車で緊急輸送されてきた列車砲が鎮座し、その巨大な砲身を水平線の彼方へと向けている。


(……非合理な蛮勇だな。風を読み、帆を張る時代に、私の計算を無視して海を渡ろうとするとは)


アステリア領海を侵犯した帝国艦隊二十隻。彼らが目にしたのは、神の怒りのような「見えない死」だった。

岬の観測所から電信で送られてくる敵艦の位置情報をリアルタイムで処理し、有効射程外から正確無比な砲撃を叩き込む。


「報告! 敵旗艦、大破炎上。……若君、追撃しますか?」

スピーカーから流れるバドの声。


「不要だ。弾薬の浪費コストに見合わない。……ただし、沈没を免れた残存兵の救助を開始しろ。新型電池駆動の高速救助艇を出せ」


リヒトの指示は「慈悲」ではなかった。

(……死体は何も喋らない。だが、生き残った兵士は、帝国内部での『恐怖の語り部』となり、同時に結社の情報を引き出すための貴重なサンプルになる)


荒れる海面を、小型ながら驚異的な馬力を持つ救助艇が滑っていく。

救助された帝国兵たちは、魔術のような速度で現れた救助艇と、それを動かす「音もなく輝く力(電力)」を目の当たりにし、もはや戦意ではなく畏怖に震えるしかなかった。


一週間後、王都。

リヒトは父カスパールと共に、王城の謁見の間へと召喚されていた。

国王アルバートの表情は、驚愕を通り越し、得体の知れない「怪物」を見るような畏怖に染まっている。


「……アステリア伯。……いや、リヒト。損害ゼロでの艦隊撃滅、そして五百名に及ぶ捕虜の獲得。実に見事だ」


「陛下。戦いとは物理現象の計算結果に過ぎません。捕虜については、現在アステリア領にて『再教育』と称した尋問を行っております。……そこで得た情報によれば、帝国は国内の鉱山資源を秘密結社へ安値で流しているようです」


リヒトは優雅に一礼し、本題を切り出した。


「陛下。今回の功績に対し、アステリア家への『侯爵』への陞爵、および旧ルガード領から海沿いに広がる北東部の直轄地の割譲を提案します。……あそこは現在不毛の地ですが、私の鉄道を通せば、王国最大の『工業地帯』へと変貌させてみせましょう」


(……畏怖を野心で上書きしろ。国王が私の要求を飲むのは、私が怖いからではなく、私がいなければ王国が立ち行かないと理解し始めたからだ)


国王は重々しく頷いた。

「……認めよう。アステリア侯爵家。そなたが描く『新時代の地図』、見せてもらうぞ」


謁見の後、談話室に招かれたリヒトを、十歳のエリザベート王女が待っていた。

彼女はリヒトが献上した、海戦の惨状を記録した「写真」を手に取り、まじまじと見つめている。


「……リヒト。この写真に写っている帝国の戦列艦。……これ、爆発して船体が真っ二つに折れているわね? あなた、こんな恐ろしいものを『近況報告』として私に贈るなんて」


「殿下。事実は、時にどんな詩よりも雄弁です。……帝国はこれから、アステリアが管理する『灯台』と『海図』の外では生きていけなくなるでしょう」


「ふふ、あなたの言う『平和』って、首輪を嵌めてリードを握ることなのね。……でも、嫌いじゃないわよ。その徹底した合理性」


エリザベートは悪戯っぽく微笑み、リヒトの頬を軽く指で突いた。


(……リード、か。悪くない表現だ。帝国をアステリアの『巨大な下請け工場』に作り替える。それが、秘密結社への供給源を断つ最短ルートだ)


リヒトは内心で、まだ見ぬ強敵の存在を、次なる三か年計画の「最大のリスク」として計上している。


(役者は揃いつつあるな。……さて、帝国将軍、君に『生存』という名の高価な請求書を叩きつけに行こうか)


七歳のリヒトは、冷徹な外交官の仮面を被り、帝国の使節が待つ別館へと足を進めた。

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