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終点のないワゴン

作者: 虚構の背中

田舎から都会へ向かう乗合ワゴンの後部座席で、私は横になっていた。座席は簡易的で、体を預けるには心もとないが、眠るには十分だった。


なぜか隣には、帰省していたはずの友人Bがいる。理由を考える前に、そういうものだと受け入れていた。夢の中では、疑問はいつも遅れてやってくる。


ワゴンは途中で停車した。大型ショッピングセンターの駐車場だが、ビルとビルに囲まれたコの字型の構造をしていた。同じような乗合ワゴンが何台も並び、各地から集められてきた人間たちが、静かに降りてくる。


駐車場では、仕切り役らしいふくよかな女性が点呼を始めた。しかし、その仕組みがよく分からない。戸惑っていると、少し離れたところで若い男性が、淡々と番号を読み上げ始めた。


そのとき、周囲の建物に薄く番号が書かれていることに気づく。駐車場を囲むビルの壁や柱に、消えかけた数字が浮かんでいた。中には「九九前」とだけ書かれたビルもあり、意味は分からないが、番号は重ならない。


「九十三、六十六、九九前……」


気づけば、私も口を開いていた。


「四十五」


私は二、三人と一緒に、ショッピングセンターの中へ向かった。


奥へ進むにつれ、通路は次第に狭くなる。田舎の店の、無駄に広い通路とは違う。人の流れを逃がさないように設計された圧迫感があった。突き当たり近くに、アイスクリームの冷凍ケースが並んでいる。


「……狭いですね」


思わず、声に出してしまった。


一緒に歩いていた人物が、少し驚いたようにこちらを見る。そして、すぐに頷いた。


「ええ、僕もそう思ってました」


同じ感覚を共有できたことに、理由のない安心感が生まれる。なぜか今、この場所で友人を作るべきなのではないか、そんな考えが自然に浮かんだ。


「よろしくお願いします」


私は本名を名乗った。


相手は一拍置いてから言った。


「ビッグネーム・アダムです」


変わった名前だな、と思ったのは一瞬だけだった。すぐに、これは偽名なのだと理解する。ここでは、本当の名前よりも、そういう距離感のほうが正しい気がした。


ふと振り返ると、友人Bの姿はもう見えなかった。ワゴンも、点呼も、終点も、すべてが曖昧なまま、私は知らない誰かと並んでアイスケースの前に立っている。


それでも、不思議と不安はなかった。戻ろうと思えば戻れる、そんな感覚だけが、いつのまにか消えていた。

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