表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/94

交渉は事前に行われるべきだ

 

 「規定違反って…なんなんそれ。ウチをスカウトしたのは宮木さんやないですか」

 

 「女子高に男子生徒は入学できないでしょう?」

 

 「うん?」

 

 「それと同じです。ソルガムナイツはヒーロー組織であり、ヒーローという言葉は主に男性に使われるもの。女性ヒーローなんて言葉は存在しません」

 

 「そんなん言葉の定義によるやないですか。映画で女性ヒーローっていう言い方も聞いたことありますし」

 

 「頭に女性と、つく単語は、その時点で男性がなることが前提とされているんですよ。総理大臣、プロレスラー、芸人、社長。権威ある役職や職業は、男性がなるものとされてるんです、この国では」

 

 まるで昭和の考え方だ。男尊女卑というか、女性蔑視というか。

 

 ガラスの天井は現代でも存在すると言われているが、女性の社会進出は着実に進んでいる。ななみの中学校の教頭も女性だし、クラスメイトの母親は実業家として莫大な利益を叩き出し、地元では有名な豪邸に住んでいる。

 

 「ヒーローだって女性がなってはいけないんです。本来ならね。ソルガムナイツもその点は厳しくて、絶対に女性をスカウトしてはいけないというルールが設けられてるんですよ」

 

 「ほならなんでウチをスカウトしたんですか。まさか男に見えたわけと違うやろ?」

 

 一輪の花と形容されるような美少女のななみは、男に間違われた経験など一度も無かった。仮にななみを男と勘違いした人間がいたなら、目が見えていないか、女という存在を知らないかのどちらかだ。

 

 「橘さんには、その辺の男の子よりも強いヒーロー、いや、ヒロインというべきでしょうか。どちらにしても、桁違いの戦力になってくれるという直感があったんですよ。実際私の見立ては間違ってなかったわけですし」

 

 規定を犯していながら、妙にドヤ顔の宮木。やはりいちいち態度が鼻につく。

 

 「量より質、というのであれば、橘さんのような強力な戦士を手に入れないわけにはいきません。まあ魔法少女に変身するとは思いませんでしたが」

 

 「あの時渡してきたステッキは、いかにも魔法少女の変身グッズやったやないですか」

 

 「あれは組織から支給されている、魔力を秘めた石です。持ち主に最も適した形の武器に自然と姿を変える。あなたも実際にそれを体験したんですし、知っているでしょう。魔法のステッキに変わったということは、魔法少女になるべくしてなったということです」

 

 「あんなちゃっちいステッキになるって分かってたら、受け取らへんかったかもしれへんのに」

 

 いちいち説明を遮って文句を言うななみに、人差し指を立てて黙れというジェスチャーを送ってくる。

 

 「いいですか橘さん。あなたは存在自体がソルガムナイツにとってアウトなんです。いくら戦績を上げようが、女性が戦っているという時点で許されることではないんですよ」

 

 「だからウチをスカウトしたのは宮木さんでしょう!さっきから勝手なことばっかり言うてますけど、こっちは被害者や。責任は全部そっちにある。なんやねん処罰て。勝手に処罰されたらええねん。ウチを巻き込まんといて」

 

 「死なばもろともですよ。私たちは共犯です。橘さんだって、邪な感情の赴くままに契約したんですから、私ばっかり責めるのは筋違いですよねえ」

 

 「なっ、ウチは別にそんなこと…」

 

 いや、動機はとても不純なものだった。セクシーな敵を好き放題に嬲り、自死を選びたくなるほどの屈辱を味合わせてやりたい。それがソルガムナイツに入った目的ではあったのだが。

 

 「ウィンウィンですよ。橘さんが活躍してくれれば、私の成績は上がる。もちろんあなたの存在は隠さないといけませんから、真堂君あたりの戦績ということにして上には報告します。その代わり、橘さんは欲望の赴くままに戦える。倒した敵をどうしようと、私は文句を言いません。ええ、そりゃもう、凌辱の限りを尽くしてもらって構いませんとも」

 

 契約した後に知らない条件を提示して、ウィンウィンと言われても困る。

 

 しかしクーリングオフは出来ないと言われているし、魔法のステッキは何度捨てようとしても、呪いの人形のように手元へ帰ってくる。ななみに魔法少女を辞退するという選択肢は、もはや残されていないのだ。

 

 どうやら宮木はななみを利用して、自身の社会的立場を守ろうと必死のようだ。ここは人助けだと思って、協力するしかないだろう。

 

 それにななみには、気になる存在が出来ていた。商店街で梓とともに出現した、あのボンテージ女。

 

 ななみのどストライクだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ