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組織人としての責任

 

 2人の間に早くも亀裂が生じたところで、宮木がタブレットを閉じた。

 

 「そう怖がらなくても大丈夫ですよ。真堂君が血も涙もない行いをするのは、あくまで敵に対してですから。むしろ普通の人間には優しいほうですよ。ねえ?」

 

 「そうしたほうがいいと思うから、そうしてるだけだけど」

 

 重い荷物を持っているおばあさんがいれば手伝うし、一人で泣いている子供がいれば、一緒に親を探してあげる。それらの行為は真堂曰く、世間一般で善い行いとされるものを模倣しているだけだという。そこに相手を助けたいという気持ちがあるわけではない。

 

 ななみには真堂の心理が理解できなかった。

 

 自分をよく見せたいというわけでもなく、ただそうすることが正しいという認識に基づいて行動しているだけ。真堂はまるで、プログラミングされた機械のような人間だ。

 

 その異質な性格がヒーローに適していると判断されて宮木にスカウトされたと聞くと、ますます組織への不信感が高まってくる。

 

 「次に橘さん。あなたをスカウトした理由はあの時に話しましたね?自分が傷つくのも恐れずに弱きものを助けるその姿勢。まさにヒーローに相応しいとの判断に至りました」

 

 あの時はおろしたてのワンピースが汚れる事よりも、目の前で困っている子供の笑顔を優先しただけなのだが、そんな些細な事でもヒーローに抜擢されるなら、よほどの悪人でない限り誰でもなれるのではないだろうか。

 

 ななみに関して簡潔に話を済ませようとする宮木を遮ったのは真堂だった。

 

 「ソルガムナイツはヒーロー組織なのに、橘がスカウトされた理由を聞いてない」

 

 「そうやそうや、ウチもそれまだ説明されてへんで。なんやねん魔法少女って」

 

 2人に詰め寄られた宮木は、罰が悪そうな表情を浮かべた。

 

 「大人の世界には色々事情があるんですよ。お二人はまだ中学生だから理解できないでしょうが、組織の一員として働くにあたって、職務遂行のためには手段を選ばないというか、選んでいられない場合もあるというか…」

 

 「なにをブツブツ言うてんねん。大人なんやったら、子供の質問にははっきり答えてほしいんですけど?」

 

 「えーと、コーヒーのおかわりを取ってきます。橘さんはブラックでいいですね?」

 

 「2杯もいらんしお腹タプタプなるわ。逃げようとしてもあきませんよ。うまいこと口車に乗せられてこの半年働いてきましたけど、よう考えたらおかしいですもん。ヒーロー組織が女の子をスカウトするなんて」

 

 ドリンクバーに向かおうとする宮木の腕を掴んで、立たせまいとする。

 

 宮木はしばらく視線を泳がせていたが、ななみの追及から逃れることは不可能と判断したらしい。

 

 「実はですね…」

 

 ようやく真相が語られると期待したが、思わぬ邪魔が入った。

 

 「あー、いたいた、宮木君!さっきからずっと電話かけてたのに、全然出てくれないから困ってたんだよ。上司からの連絡にはすぐに返信しなさいって、新人研修で習ったでしょ?」

 

 カジュアルなオフィススーツ姿の女性が、小走りで宮木のもとへ駆けてきた。ヒールだというのに、異様に身のこなしが軽い。



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