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誰が敵なんだ

 

 声のするほうへと駆け出したななみの前に広がっていたのは、腕を押さえてもだえ苦しむ女子生徒と、剣を構えるヒーロースーツ姿の男子という異様な光景だった。食いしばった歯の隙間から、しゅーしゅーと蛇のような声を漏らしている女子生徒の顔を見て、ななみは思わず飛びあがった。

 

 「梓さん!」

 

 小学校時代に出来た唯一の親友であり、人には言えない趣味を共有できる仲間。卒業式でそっけなく別れて以来、連絡こそたまに取り合っていたものの、一度も顔を合わせることはなく秋を迎えていた。

 

 事あるごとに存在が恋しく感じていた梓。その彼女が今、血だまりの中にうずくまっている。

 

 商店街のホコリと枯れ葉に塗れた冷たい床を濡らす血は、梓から流れて出ているようだ。男子生徒が陰になっていてよく見えないが、梓の手首から上がほとんど無くなっている。10本あるはずの指が、今は0本だ。

 

 男子生徒が持つ剣の刀身も赤く染まっており、それを使って切り落とされたのは明白である。これは暴行や傷害で片づけていいものではない。殺人未遂。いや、未遂で終わればまだいいが、今にもとどめを刺しそうな雰囲気ではないか。

 

 2人がなにやら言葉を交わしているが、内容までは聞き取れない。ななみのステッキを握る手に力が入る。助太刀しなくては。このままでは親友が殺されてしまう。

 

 しかしななみに実戦の経験はほとんどない。今まで相手にしたのは一般市民に毛が生えたような小悪党ばかりだったし、戦闘能力など魔法の前では意味をなさなかった。では梓の指を無残にも切断し、倒れこむ彼女の腹部に蹴りを入れている冷酷な相手と、果たして戦えるだろうか。見るからに只者でないのは伝わってくる。ヒーロースーツに切れ味抜群の剣。間違いなくななみと同じく、特殊能力を授けられた人間だ。

 

 ななみが逡巡している間にも、梓に追撃が加えられていく。このまま親友がみすみす殺されるのを傍観しているわけにはいかない。

 

 ななみは意を決して、2人の間に割り込もうと足を踏み出した。

 

 

 それからの展開は、ななみの理解をはるかに超えるものだった。

 

 まずボンテージ姿の女が登場。まるでSMクラブの女王様のようなその女は梓の味方らしい。

 

 そして梓自信も特殊能力を持っているようで、商店街の中に巨大なスライムを出現させていた。スライムは少年のヒーロースーツを溶かしてゆく。スライムを操る梓の顔には、恍惚とした表情が浮かんでいた。エロ漫画を読みふけるときと同じ、あの表情だ。半年前に比べて、少し大人っぽく成長したこともあって、それがとても淫靡なものに見えてくる。

 

 2対1の構図でヒーローを追い詰める梓とボンテージ女。

 

 もしや彼女ら、悪の組織というやつでは?

 

 ななみは倒すべき相手が分からなくなり、頭を抱えた。

 

 


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