表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/75

目覚めた力となにか


 ステッキが震える。スマホのバイブレーションのように、小刻みな振動が止まらなくなった。取り落とさないように、しっかり両手で捕まえるので精一杯だ。

 

 先端に灯った光の球は、握りこぶし大のサイズから、あっという間にバレーボールくらいの大きさにまで肥大化した。何かしらのエネルギーが集まっているのは明らかだが、ななみにはそれをどう処理すればいいのか分からない。とりあえず敵に向けて放てばいいのだろうか。

 

 「どうなっても知らんからな!」

 

 暴れるステッキを掲げて、強盗に向かって振り下ろした。ななみが放った言葉は、自身と強盗の両方に向けられていた。どうなっても知らない。ここまで来たら引き下がることなど出来はしないのだ。

 

 光の球はステッキから離れた途端、急加速した。目にもとまらぬ速さで飛んでいき、強盗の膝を直撃する。

 

 「ぎゃああ、折れた、これ絶対折れた!」

 

 強盗は膝から崩れ落ち、体を折り曲げて悶え始めた。質量を持たないはずの光に、人間の骨を粉砕する威力があるとは恐れ入った。

 

 強盗はレジの金を入れた袋を取り落とし、紙幣が散乱する。こうしてみると、本当にわずかな金額しか入っていなかったようだ。ななみが今年にもらったお年玉の総額のほうがはるかに上だ。

 

 ひとまずは足止めに成功した。しかしいつ強盗が動き出すか分からない。折れたという人は、決まって折れていないのがお約束だ。きっと強盗の骨も折れておらず、少し強めの衝撃を食らった程度だろう。

 

 ならばとどめを刺しておかないといけない。ななみはもう一度ステッキを構えた。すぐに光の球が再生成される。エネルギー源が何なのか不明だが、特に体力を奪われた感覚もないので、ななみ自身ではないどこかから生成されているはずだ。これは実に好都合である。

 

 「ひっ、やめてくれ!さっきのマジで痛かったんだから!」

 

 体を丸めたまま、強盗が命乞いをする。先ほどまでの威勢はどこへやら。

 

 ななみの中で、じわりと熱いものが広がった。

 

 自分の力で悪党を屈服させる。ずっと憧れていた行為を、今まさにしているのだ。相手がエロティックな女幹部でないことだけが残念だが、贅沢は言っていられない。

 

 「さっきは足やったやんなあ?そしたら次は、頭いっとこか?」

 

 ステッキの先を強盗のこめかみに突きつける。

 

 「た、助けてくれ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ