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邪な動機


 日本は法治国家だ。犯罪者でさえも法律に守られている。いきなり路上で殴られたからといって、相手の骨が折れるまで反撃しようものなら、こちらが加害者扱いされてしまう。

 

 しかし法律とは民間人に適用されるもの。ヒーローが悪を成敗したからといって、一体何の罪に問われようか。変身ヒーローが巨大怪獣と戦い、ビルを破壊したからといって、誰がヒーローに損害賠償請求をする。

 

 そう、ヒーローとは正義の名のもとに何をしても許される存在なのだ。

 

 ななみは昔から、自分の性癖が決して現実で解放出来ないことを悔やんでいた。だが、もしも自分がヒーローになれたらどうだろう。仕掛けてくるのは向こうのほうだし、気兼ねなく相手をボコボコに殴り倒すことができる。腹部を踏みつけるのもいい。プライドの高い女幹部の頭をヒールで蹴り、心を折るのもさぞかし愉しいことだろう。

 

 問題は悪の組織など現実に存在しないことだ。もちろんヒーローもいない。全ては妄想に過ぎないことは分かっていた。

 

 しかし宮木は言った。ヒーロー組織は存在すると。

 

 ななみは漫画を胸に抱き、宮木を見上げた。 

 

 「ウチ、なんでもやります。いやらしい女幹部を辱しめられるなら、この身を。いや、人生を捧げてもいい。せやから宮木さん。ウチをヒーローにしてください!」

 

 宮木の目が細められ、目じりにしわが寄った。さっきまでのわざとらしい作り笑顔と違い、これは本物の笑みだ。

 

 「素晴らしいご決断です!それではさっそく始めましょう」

 

 「なんか契約書とか、そういうの書くんですか?」

 

 「ソルガムナイツは法人ではないので、雇用契約もありませんよ。あなたの意思確認は既に取れました。ヒーローになるためのステップはとても簡単。これを握ってください」

 

 宮木から渡されたのは、防犯ブザーくらいのサイズの石だった。キラキラと輝いており、その周りは金の装飾で縁どられている。母親が祖母から譲り受けたという宝石に似ていた。

 

 「その石には魔力が込められています。魔法が主人、つまり橘さん、あなたをヒーローの姿へと導きます。どんなヒーローになるかは私にも分かりませんが、きっとあなたにふさわしい姿になりますよ。なんといっても、橘さんにはヒーローとしての素質がある」

 

 「なんでそう思ったんですか?」

 

 「先ほども男の子を助けていたでしょう。自分が怪我するのも恐れずに、弱きものを助けるその心意気。まさにヒーローに求められる素質なのですよ」

 

 「ウチのこと、ずっと見てたんですね。ほんまに才能があるかどうか分からへんけど、やってみます!」

 

 ななみが石を両手で握りしめると、幾本もの光の柱が放射線状に広がった。


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