不純異性交遊
不純異性交遊。その単語が頭の中で弾けた。
キスは性行為と違い、年齢で制限されているわけではないし、決して不健全なものとも言えない。しかし学校の屋上で中学生どうし、となると話が違ってくる。さらにはヒーローと魔法少女だ。正義のために戦う存在が、堂々としていい行為ではないだろう。
私は小走りで2人に駆け寄り、ななみの肩を掴んで真堂から引きはがした。
「やめて!」
何をやめてほしいのか、自分でも分からない。まるで意中の相手を寝取られたように被害者ぶっているが、私にそんな振る舞いをする権利などないことは分かっている。そもそも真堂への一方的な感情は既に過去のものとなっており、討伐対象にされている恐怖が大部分を占めていた。
「なんやの、梓さん。そない怖い顔せんといてえや。ウチ、なんも悪いことしてへんで?」
「わ、悪いことはしてないけども!その、昼間の学校でキスなんて、常識的に考えてダメでしょ!」
「やらしい漫画ばっかり読んでるくせに。別にキスくらいなんともないやろ?」
「そういう問題じゃない。ていうか2人、その、恋人関係だったの?」
中学生カップル自体は珍しいことではない。小学生でも交際している子はいたし、なんなら異性に対する恋愛感情は、もっと幼い頃から抱く子もいるだろう。
しかし魔法少女とヒーローが、そのままの恰好でというのが頂けない。せめて変身を解除すべきではないか。
再びななみが真堂に向き直り、唇を重ね合わせた。
「だからそれダメだって!」
私がいくら後ろで騒ごうと、ななみは唇を離そうとしない。完全に2人だけの世界に入ってしまっている。
キスが終わるまで、およそ1分かかった。あまりに長い1分だった。
ことが終わると、真堂は立ち上がり、スーツについた砂埃を払う。そして何事も無かったかのように、変身を解除して制服に戻った。
「…なに?」
相変わらずの敵意むき出しの視線を向けてくる。
「なに、はこっちのセリフなんだけど。真堂君って案外、やることやってんだ」
「変な勘違いしないでくれるかな。宇羅未さん。いや、ノクターン・ロゼの下っ端」
「その下っ端にスライム攻めされて悶えてたのはどこの誰だっけ?もう少しで真堂君の恥ずかしいところが丸見えだったんだけど?」




