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助っ人は魔法少女

 

 女が率いる3人の骸骨バンドマンたちは、困ったように互いを見ている。リーダーが突然倒れてしまったので、演奏を再開するかどうかの判断が出来ないのだろう。

 

 「…ってえな。おいクソガキ。仲間がいるなんて聞いてねえぞ。正々堂々とサシで戦いやがれ」

 

 4対1の構図に持ち込んだ本人が、自分を棚に上げながら真堂を睨んだ。

 

 その鋭い眼光を湛えた瞳に火花が散る。誰かがロック女をまた殴ったのだ。

 

 「嫌やわ。先に仲間呼んだのはそっちやろ?」

 

 女を殴った声の主は、相手の髪を掴んで頭を引っ張り上げた。目を閉じて脱力した女は、まるで収穫された野菜のようだ。

 

 「助けに来てとは頼んでないけど」

 

 真堂が腹部を抑えて立ち上がった。まだ痛む様子で、息が荒い。

 

 「あのままやと負けてたやろ?ウチ、仲間が殺されるの見たないもん。まあ今回は相手との相性も悪かった思うわ。近接戦やったら勝ってたんとちゃう?」

 

 「まあ、助けてくれたことは感謝するよ」

 

 真堂がぶっきらぼうに礼を述べた相手は、スカートの裾をふわりとたなびかせて、おどけたように笑った。

 

 「なんかあったら任せとき。ウチ強いねん。魔法少女やから」

 

 フリルのついたドレスのような衣装。首元には輝くペンダント。それはまるで、女児向けアニメから飛び出してきた魔法少女そのものだった。

 

 手には魔法のステッキを持っているが、ステッキの柄には血が付着している。先ほどロック女の頭に突き刺すような勢いで振り下ろした時に付いたのだろう。相当ダメージが大きかったらしく、あれから女は一歩も動いていない。

 

 自らを魔法少女と名乗る少女の顔には、見覚えがある。道を歩けば誰もが振り向くレベルの美しい顔面。未成熟ながらも、大人顔負けの色香を振りまくその少女は、間違いなく橘ななみだった。

 

 先ほどの火柱に巻き込まれて死んだとばかり思っていたが、怪我1つないどころかピンピンしている。颯爽と現れて真堂のピンチを救ったななみは、一体何者なのだろう。

 

 安全圏から戦闘を見守っていたオーディエンスからも、ななみの美貌に歓声が上がった。それに応えるように、ななみはステッキを持っていないほうの手を振る。

 

 「うわあ、誰だろうあの子。めっちゃかわいいじゃん!」

 

 恵も興奮して、スマホで魔法少女を撮影している。

 

 先ほどななみとは顔見知りになったはずだが、なぜかその正体には気付けないようだ。恵が真堂のことも本人と認識してないことから、一般人には正体を悟らせない魔法でもかかっている可能性がある。

 

 転がっていたロック女の指先がぴくりと動き、ギターを掴んだ。まだ生きている。

 

 「…舐めんじゃねえぞ、ガキども!」

 

 謳っていた時の迫力は失われているが、それでも女の声にはすごみがあった。身を起こして、ギターをななみに向かって投げつけた。

 

 「危ない!」

 

 私の叫びがななみに届く前に、ギターが彼女を直撃した。いや、したかに思えた。

 

 ななみは最小限の動きでそれを躱し、ニコニコと笑いながら女の顎を蹴りあげた。

 

 「まだ生きとったんかあ。さすがロックンローラー、体力だけはあるみたいやね。ほなこれで楽にしたるわ」

 

 ステッキを顔の横で軽く振ると、天から光の柱が出現した。商店街での戦いで、クロエルを退散させたのと同じものだ。柱はまっすぐ、中庭に転がる女へ降り注いだ。

 

 女は悲鳴を上げるまもなく光に包まれる。柱が消えた後、中庭ステージに残されたのは、女の影だけだった。


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