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セコンド気取りのゲーマー


 アンプから放たれた音の刃が、真堂を体を切り裂き続ける。二の腕、ふくらはぎ、肩が次々と露になり、白い肌から鮮血が流れ出した。毎度のことながら破れやすいヒーロースーツだ。素材が悪いのか、それとも材料費をケチっているのか。ソルガム・ナイツの運営は資金繰りに苦労しているのかもしれない。

 

 「やっぱりあのヒーローさん、ピンチに駆けつけてくれるんだねえ。まるで普段から私たちの側にいて、見守ってくれてるみたい」

 

 恵はヒーローの正体が真堂であることを知らない。おそらく事実を知っているのは、この学校で私一人だろう。

 

 「前もお化け屋敷の時に助けてくれたけどさ、あの時からずっと思ってることがあるんだよ」

 

 恵が戦闘の現場を指さして、わずかな哀れみを含んだ表情で笑った。

 

 「戦闘センスなさすぎない?」

 

 「センスってどういうこと」

 

 「クールな顔して戦ってるけど、戦法が単純なんだよね。ほら、私って格闘ゲームとかFPS好きじゃん。常にどうやったら相手の間合いに入って切り崩せるかって考えてるんだけど…」

 

 知らない恵の趣味だ。私はもっぱら漫画とアニメ、それも特定の趣向に特化したものばかりで育ってきたので、対人系のゲームには触れたことすらなかった。

 

 「ヒーローさん、全然戦いの本質を分かってないよ。今だってそう。相手の攻撃を防ぐことばかりに集中してるけど、それじゃダメ。攻撃を根本から絶つ方法を考えないと」

 

 「そんな方法なんてある?」

 

 安全圏からならどうとでも言えるが、一応恵の意見にも耳を傾けてみるとする。

 

 「ロックンロールさんの攻撃はアンプから出てるよね。だからコードを切っちゃえばいいじゃん。それなら攻撃も出来ないでしょ?」

 

 「あっ、確かにそうだ」

 

 どうせろくな意見が出ないと思っていたが、案外恵の観察眼は鋭かった。攻撃を防ぐのではなく、根本から断ち切る。それは最も理にかなった方法だと言えるだろう。

 

 私が意見に賛同すると、確証を持った恵は声を張り上げた。

 

 「コード!コード切っちゃって、ヒーローさん!」

 

 恵の声に先に反応したのは、ロック女だった。

 

 「ああん?なんだって?」

 

 爆音に鍛えられた鼓膜の持ち主だ。聴力もかなり優れているらしく、この距離でも恵の指示を聞き取っている。しかしその一瞬の反応が、相手に隙を与えてしまった。

 

 真堂が地面を蹴り、ロック女の間合いに入った。女がギターを頭に叩きつけようと振りかぶったが、真堂はそれを躱して、剣でコードをぶった切った。

 

 音が止んだ。文化祭を破壊しつくした爆音のロックは消え、静寂が訪れた。


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