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VS ぬるぬる

 運動場に向かって走り出した少年を追って、中庭を駆け抜ける。上履きのままなので走りにくいったらありゃしない。唐突な触手の出現に学校中が大騒ぎになっているらしく、教室の横を通るたびに悲鳴が聞こえてきた。

 

 ここで待っててとは言われたが、私はこれから起こるであろう少年と怪物の戦いをこの目で見届けないわけにはいかなかった。息を切らして運動場に到着すると、既に攻防は始まっていた。

 

 横幅は一方通行の道路ほどだが、縦の長さはゆうに50メートルはある触手の一本が、少年に襲い掛かる。彼はそれをひらりと軽い身のこなしで躱している。触手の先端が空を切るたびに粘液の液体があたりに飛び散り、それが触れた場所に生えていた草木が瞬時に枯れていく。

 

 「相変わらずワンパターンな動きだね」

 

 少年はまるで子供の相手をするかのような余裕で相手の猛攻を避け続けている。そして腰につけているポシェットのようなものから綿棒サイズの小さな何かを取り出した。少年の右手に光が集まり、数秒前まで指で挟めるサイズだったそれは、あっという間に巨大な剣へと姿を変えた。

 

 「おおっ、すごい!物理の法則を無視したアイテムこそ、まさに変身ヒーローって感じ!」

 

 「とっとと終わらせてもらうよ」

 

 少年の腰から足の先くらいまである長さの剣を軽々と振り上げ、触手に切りかかる。ぐちゃ、とグロテスクな音を響かせて、先端から10メートルほどの部分が切り落とされた。断面には腸のようなものがうねうねと動いているのが見て取れる。

 

 「うえ…、気持ち悪い」

 

 私は思わず口を抑えた。カエルの解剖実験などは平気なほうだが、さすがに生きている生物はきつい。というかあれは生物と呼んでいいのだろうか。

 

 触手にも痛覚があるのか、まるで電流を流されたみたいにビクビクと痙攣している。しかし残りはまだ9本。間髪入れずに2本目、3本目が少年に向かって伸びていった。

 

 

 

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