一体どういう関係性
「真堂君と友達なの?」
ななみの口からまさか真堂の名前が出るとは予想していなかった。2人にどんな接点があるというのだろう。
ななみは真堂から送られたという招待状をひらひらとさせた。
「梓さんこそ、真堂君と知り合いやったん?なんか意外やわ。あの人ってあんまり自分から喋るタイプと違うやろ。ほんで梓さんもそうやん。どないして2人仲良うなったん」
私と真堂の仲が良かったことは一度もない。ただのクラスメイト以上の関係に発展しそうな気配は、まったくと言っていいほどなかった。少なくとも1学期の間は、私が彼に邪な感情まじりの好意を寄せていたが、2人の関係は今や敵同士だ。こうしている間にも、たこ焼きの串を私の首元に突き立てようと狙っているかもしれない。
「そうそう、2人って案外いい感じなんだよ。文化祭ってカップル誕生率高いっていうし、思い切って今日告っちゃえば?」
恵の発言は的外れもいいところだ。こういうタイプは、人の恋路を応援しているというよりも、ただ面白そうなことに興味を示しているだけだろう。
「ええっ、そんな進展してんの?梓さんも普通の女の子なんやなあ」
「こいつの言う事は無視して。私は別に真堂君と友達でもない。それよりも橘さんこそ、どういう関係なの」
「ウチと真堂君は…、そやなあ。なんて言うたらええんやろ」
ななみが顎に手を当てて考える。言葉を選ばないといけないような関係なのか。
考えられる可能性としては2つ。一つは普通に友達同士だということ。もう一つは、恋人同士だということだ。ななみと釣り合う男子となると相当ハードルが高くなるが、ミステリアスでどこか色っぽい真堂ならば、不釣り合いには見えないかもしれない。
「仕事仲間っていうのが一番近いかな」
「仕事仲間?」
予想だにしていなかった言葉が、ななみの口から発せられた。
「付き合ってるとか思った?全然そんなんと違うから安心しいや。なんなら梓さん、狙ったらええんちゃう?」
狙われてるのは私の命だ。
ななみとの立ち話が長引いたせいで、屋台には行列が出来ていた。関西人から下手くその烙印を押されたたこ焼きにも、案外人は並ぶものだ。もしかしたら、ななみを近くで見たいだけの助平どもが列をなしているだけかもしれない。
混んできたから退くように伝えると、ななみは大人しく屋台の横へと移動した。あれだけ文句を言っておきながら、一応たこ焼きは完食している。
「喉乾いたし、冷たい飲みもんでも買ってくるわ。自販機ってどこにあるん?」
「中庭を抜けた先のところ。ついでに私の分も買ってきてよ」
「招待客やのに人使いが荒いわあ」
渡した100円を握りしめ、ななみは自販機へと向かった。
そのわずか数秒後、軽音部の演奏中だったステージから火の手が上がった。




