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スライムは乾燥に弱い

 

 突き破られたアーケードの天井から、一筋、というにはあまりに太い光が差し込んだ。電柱を10本束ねたくらいの横幅を持った光線が、真堂を苦しめるスライムを直撃する。スライムの主成分は水と粘性物資だ。熱を持った光によって水分を急速に奪われてしまうと、特有のぬるぬるボディを維持できなくなる。

 

 私は光がこれ以上差し込まないように、落ちている駄菓子屋の看板や崩壊したクリーニング屋の壁を浮遊させて、急ごしらえの天井を作ろうとした。しかし光の量があまりに多く、ぼろぼろの素材が一瞬にして燃え尽きてしまう。この光は普通じゃない。誰かが意思を持って操っているのではないか?

 

 「まずいことになったわね」

 

 クロエルが歯がゆい表情でつぶやいた。

 

 「なんなんですか、この光。明らかに真堂君を助けようとしてますよね?」

 

 私の生み出した化け物スライムは、急ブレーキのような音を立てながら急速にしぼんでいく。その大きさは、商店街を飲み込めるサイズから、今や大型犬くらいにまで縮小していた。

 

 服を半分近く溶かされ、胸部や太ももからふくらはぎにかけてが曝された真堂は、無事にスライムから解放されてしまった。やはりヒーロースーツは溶けやすい素材らしい。

 

 「逃げるわよ、梓ちゃん」

 

 クロエルが私の体を抱え込み、翼を広げた。私たちが地面を離れた瞬間、それまで立っていた場所に光線が炸裂し、商店街の床に黒い焦げ跡を作った。

 

 「危ない危ない。一瞬でも遅れたら丸焦げにされるところだったわ」

 

 上空から見下ろす街は、まるでミニチュアのように見えた。クロエルが猛スピードでその場を離れたので現在地が曖昧だが、黒煙が上がっているところが商店街だろう。

 

 私はうつぶせ状態でクロエルに抱きかかえられたまま、首だけ回して尋ねる。

 

 「さっきの光の攻撃…。あれ一体なんなんですか」

 

 クロエルが不機嫌そうに眉を吊り上げる。

 

 「私たちの敵。ヒーローは1人じゃないわ。ノクターン・ロゼが巨大な組織であるように、ヒーロー側もチームで動いてるの」

 

 クロエルの説明によると、ヒーローには管轄の地域が割り当てられているらしく、真堂が守っているのが私たちの住むこの街。及び隣町を含む3つの市町村区だそうだ。

 

 「広くないですか?」

 

 「ヒーローも人手不足なのよ。昔なんてもっとひどかったわ。西のほうに伝説的なヒーローがいたんだけど、そいつは大阪、京都、兵庫、奈良を1人で担当してたの」

 「1人で?」

 

 「それから少年ヒーロー組織によるスカウトが活発化したの。で、今はまだマシになってるわけ」

 

 「そもそも少年ヒーロー組織ってなんなんですか。真堂君もそこに所属してるってことですよね」

 

 「ソルガム・ナイツ。それが彼らの名前よ」

 

 クロエルに言われた通りのスペルを頭の中に浮かべる。

 

 Sorgam Knights。


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