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さすがヒーロー、強すぎる

 校庭で巨大な触手から私を助けてくれたヒーロー。遊園地で呪いのクレオパトラを倒してくれたヒーロー。

 それが今、私を鋭く睨みつけている。

 

 「待って真堂君。これにはワケがあって」

 

 「どんなワケがあっても、キミがノクターン・ロゼ側の人間だってことは間違いないだろ?」

 

 おっしゃる通り。でもこんな形で真堂にバレるとは思ってなかったので、心の準備が出来ていない。それに少年ヒーローの正体が真堂だということはある程度予想が付いていたが、いざ事実を突きつけられると動揺が収まらなくなる。私は彼が尻を鞭うちされる映像を保存し、編集を加えて繰り返し視聴しているのだ。そんな事がバレたら、クラスメイトとして合わせる顔がない。

 

 しかしそんな心配は無用だった。もはや真堂は私のことをクラスメイトとして見ていない。その証拠に、一切の手加減がない強力な蹴りが私の腹部を直撃した。

 「ぐふっ、ひどいよ真堂君。私たちクラスの仲間でしょ」

 

 「悪魔と契約した時点で僕たちヒーローの敵。悪いけどここで倒させてもらうよ」

 

 普段の優し気な真堂の雰囲気は鳴りを潜め、ヒーローとなった彼は冷徹だった。思い返せばクレオパトラとの戦いの時も、屈辱を与えられた仕返しに、相手の頭部を踏みつけて粉砕していた。ヒーローとしての真堂はかなりプライドが高いのだろう。

 

 それでこそ辱しめ甲斐があるというものだ。

 

 触手は私の中の邪気が増大するのに呼応して、ドクドクという鼓動じみた音とともに膨れ上がった。真堂に切り落とされた部分があっという間に再生して、再び彼に襲い掛かる。

 

 「さっきは不意打ちだったから油断したけど、二度も同じ手は通用しないよ」

 

 真堂は触手の猛攻を華麗に躱しながら、私との間合いを一気に詰めた。今までで一番の接近だが、ドキドキしている場合ではない。真堂が剣を振り上げ、私の手元に向かって振り下ろす。触手の重みですぐに手をひっこめることが出来ず、私は指先ごとそぎ落とされた。

 

 あまりの激痛に白目を剥き、体が痙攣する。今私の手ってどういう状態?指が全部なくなった気がするのだけど。

 

 なんとか歯を食いしばって痛みに耐え、気を失うことだけは避けられた。真堂がもう一度剣を構えた。 

 

 今度は首ごと切り落とすつもりかもしれない。私は手で首元を守ろうとしたが、神経が死んでしまっているのか、思うように腕を動かすことができない。

 

 幼いころに憧れたヒーローにそっくりの男子に殺される。ハッピーエンドではないが、これも悪い終わり方とは言い切れないかもしれない。

 

 私は目を閉じて、来るべき斬撃に備えた。


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