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暴走開始

 

 短く切り揃えられた爪の先が、頬の内側を擦る。私の口は真堂の人差し指をすっかり咥えこんだ。彼の血液を吸いだそうとするかのように、舌を絡めながら指を舐る。

 

 「う、宇羅未さん…?どうしたの。なんか変だよ」

 

 目線だけを上にして真堂の顔を見る。そこには怯えと嫌悪感が混ざった表情が浮かんでいた。私だって何をやっているか分からない。だが脳が命令を聞かないのだ。いくら止めようとしても、体が勝手に動く。真堂の血を見た瞬間から、血を吸いたいという衝動に抗えなくなっていた。

 

 腹の底から高揚感とともに熱いなにかがこみ上げてくる。私は思わず奥歯を噛み合わせた。

 

 「あっ!」

 

 真堂が短い悲鳴とともに指を口から抜き取った。指の先は真っ赤に染まっている。口の中に広がる血の味に、自分が真堂の指を強く噛んで出血させたのだと理解する。先ほどまでは雨粒のようにぽつんと浮かんでいただけの血は、今やどくどくと流れて出て、真堂の白い制服を汚してしまっていた。

 

 「ご、ごめん。そんなつもりじゃ…。本当に違うの。自分でもなにがなんだか…」

 

 口の中に溜まった真堂の血を嚥下した途端、自分の指先が割れるような痛みに襲われた。いや、割れるようなではない。実際に割れた。

 

 「ひぃっ、なにこれ!」

 

 星形に4つに割れた10本の指先。その奥を覗き込むが、暗くてよく見えない。むしろ見えなくて良かったかもしれない。自分の肉体の内側など、グロテスクすぎて見るに堪えないだろうから。

 

 しかし不思議と痛みはない。しばらくどうすることもできずに真堂と目を合わせていると、10個の小さな空洞から一気に触手が生えてきた。あの時見た、クロエルのものと一緒だ。違うところといえば、クロエルの指から生えていた触手の表面はつるりとしており、蛇の体のような感触だった。一方で私のは、無数の突起物が触手の表面に付いている。

 

 触手は私の意思とは関係なく暴れまわっている。案外遠くまで伸びるらしく、10本のうち1本は頭上のアーケードの天井にまで到達し、張り巡らされたクモの巣を一掃した。

 

 右手の中指から出た一本が真堂に向かって伸びていき、彼の腰に巻きつく。

 

 「くっ、なんだこれ!宇羅未さん、これ止めて!」

 

 「止めたいんだけどやり方わかんない!」

 

 中指の触手が動きを封じたところへ、今度は薬指から出た一本が真堂の首元へ。そして顎をねっとりと撫でたかと思うと、彼の口を無理やりこじ開けて中へと侵入した。

 「んぅっ⁉」

 

 真堂の目が恐怖に見開かれた。


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