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2度目の決着

 

 クロエルの触手は、梓が出すものよりも一段と太い。梓の触手が縄跳びくらいの太さなのに対して、クロエルのそれは蛇くらいある。そんな太いものをしならせるには相当な力が必要なはずだが、彼女はいともたやすく、触手を鞭として使っている。

 

 叩かれた床のタイルが剥がれていく。もしあの力が自分に向かって来たら、と思うと、普通ならば身の危険、死の恐怖を感じるはずだ。何としてでも触手の攻撃から逃げようと考えるのが、人間としての生存本能である。ななみもそうするべきなのは分かっていた。分かってはいたのだが、体が動かない。動かないのか、動けないのか、はたまた動かさないだけなのか。

 

 繰り返される打擲により、痛みと快楽の境目が曖昧になっていた。尻を叩かれると確かに痛い。皮膚は燃えるように熱くなり、出血も止まらなくなる。しかし同時に、それを快感に感じる自分が生まれたのを実感していた。つい先日までは、クロエルの腹を切り裂いて臓物を引きずり出すことに愉悦と興奮を感じていた自分が、だ。完全に立場が逆転している。ななみは決して自分のことをマゾヒストと思ったことはない。むしろ嗜虐こそ正義。そう思っていた。

 

 クロエルの触手が、ヒュッという音とともに空を切る。

 

 「…っ!あっ、ぐっ…ぅぅ…」

 

 ドラムスティックとは比べ物にならない痛みがななみを襲った。

 

 それは激痛という言葉では言い表せないほどの痛みで、気を失わなかっただけでも奇跡だ。いや、実際にはほぼ気絶しかけていた。それは痛みから逃れようとする本能なのか、それとも快楽によるものなのか。

 

 もう梓のニットを掴む手にも力が入らない。ニットに広がった涎の染みは、こぶし大のサイズになっていた。だらしなく垂れた舌先が生地に触れると、ざらざらした舌触りと繊維の味がした。止めどなく溢れる唾液を飲み込もうとして、ニットの毛玉まで一緒に飲み下してしまい、激しくせき込む。

 

 「さすがに一発じゃ終わらないわよね?あんたがタフで良かった。すぐに壊れたら、いじめ甲斐がないものね」 

 

 2発目の攻撃が飛んできた。当然ながら、今のななみに避けることなど出来ない。平時であれば軽いステップで躱せるような軌道なのだが、如何せんななみは脱力しており、完全に無防備だ。

 

 「ひっ…ぐ…ぅ」

 

 触手が尻を打つ音が、まるで空を裂く雷のような爆音だ。人間の体を叩いてこんな音が出るなんて知らなかった。

 

 それから一体何発の攻撃が続いただろうか。ななみの記憶にあるのは、4発目までだ。

 

 最後の攻撃を受けた瞬間に、意識がぶつりと切れた。気絶する直前に聞こえていたのは、クロエルの高笑い。これぞ悪役といった感じの、お手本のような笑い方だった。

 

 ななみが倒れる時、体と意識を支配していたのは痛みではなかった。快楽。ついに痛みと快楽の境が完全になくなり、苦痛を快感が上塗りしてしまったのだ。痛いことが気持ちいいという単純なマゾヒズムではない。自分が一度は下した相手に、家畜のように扱われる屈辱。親友である梓に縋るしかなく、彼女の服を涎で汚しながら、わずかに残った力で体をつかむという情けなさ。魔法少女という正義の立場でありながら、悪に屈する不条理。それらすべてが合わさり、ななみの中に複雑なマゾヒズムが芽生えたのだった。

 

 唾液と涙と血に塗れた魔法少女、ななみの頭を踏みつけて、クロエルが言う。

 

 「ずいぶん楽しませてくれたじゃない、魔法少女。前に私を無茶苦茶にしたとき、よくも翼をもぎ取ってくれたわね。戦利品とか言ってたっけ?じゃあ私も戦利品、なにかもらおうっと。なににしようかしら?」

 

 クロエルはななみの足に指を這わせる。触手が収まり、普通の状態に戻った指先は、下へ、下へと下りていき、ななみの下着にかけられた。するり、とそれをななみの体から脱がせる。

 

 「それが戦利品…?」

 

 ななみの下敷きになったままの梓が、頬を引きつらせた。

 

 「そんなわけないでしょ。誰が小便臭いガキのパンツなんて欲しがるのよ。変態じゃあるまいし。これは見せしめよ」

 

 クロエルは下着をななみの頭に被せた。辱しめもここまでくると、いっそ清々しい。

 

 「魔法のステッキ、これにしましょう。さっき壊しちゃったけど、修理すれば使えるでしょ」

 

 「魔法少女じゃないと魔法は使えないんじゃないんですか」

 

 「私には無理かもね。でも組織の中には資質がある奴がいるかもしれない。こいつの魔法は強力よ。手に入れられれば武器になるわ」

 

 クロエルは真っ二つに折れたななみのステッキを拾い上げた。

 

 「立派なメス豚になったわね。それじゃまたね、魔法少女」

 

 クロエルは淫靡な笑みを浮かべて、動かなくなったななみに投げキッスをした。

 

 ライブハウスの中には、あらゆる体液を分泌して白目を剥いたななみと、彼女に覆いかぶさられた状態の梓、その2人だけが残された。

  

 

 

  


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