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ゾンビ復活

 

 梓に誘われて入ったライブハウス、そこで待ち構えていたクロエル。これが偶然のはずがない。インディーズバンドの音楽を梓が好むなど、やはりおかしいと思ったのだ。疑いようもなく、これは罠だ。

 

 心のどこかでは、自分が嵌められた事を信じたくない気持ちがあったが、椅子に座って気まずそうに視線を逸らす梓を見て、真実を悟った。最初からすべて仕組まれていたわけだ。珍しく梓のほうから誘ってくれて、テンションが上がっていた自分が馬鹿みたいに思える。2人は友達であるが、所属組織としては敵同士。上の言うことには逆らえないので、ななみには彼女を攻める気持ちは無かった。一つだけ救いなのは、梓もななみを陥れることに乗り気ではなかったらしいことだ。ライブハウスに向かおうとした時、嫌なら来なくてもいいとしきりに言っていたのは、これから罠にかけようということへの後ろめたさを感じていたのだろう。

 

 「分かってるで。ほんまはこんな事したなかったんやろ?大丈夫、怒ってへん。全然怒ってへんよ」

 

 逆に威圧感を与えるような言い方になってしまった気がする。こういう時に関西弁の持つ語気の強さというか、柔らかく言おうとして、かえって高圧的に聞こえてしまうのがコミュニケーションの障害となる。

 

 案の定梓はおびえた様子で、縮こまっている。昔なら対等な関係でちょっとした言い合いも出来ていたが、今では力関係に明確な差がある。梓も特殊能力を持ってはいるものの、ななみの魔法の前では手も足も出ないだろう。なんといっても梓の上司にあたるクロエルを、一対一でボコボコにしたななみだ。梓が戦って勝てる相手ではない。

 

 「ほんとごめん、騙すつもりは無かったの!いや、騙す意図はあったんだけど。あったけど違うっていうか。騙したくは無かった。けど上から言われたから仕方なくっていうか、私の意思じゃないから!」

 

 恐ろしく早いスピードで言い訳を繰り出している。

 

 「だから怒ってへんって言ってるやんか。そらまあ、せっかく2人でお出かけやって楽しみにしてたし、今日はほんまに楽しかったから、最後にこんな形になるのは残念やけど」

 

 ダメだ。どうしても嫌味っぽい言い方になってしまう。

 

 友情よりも組織の命令を優先された事は残念だが、理解は出来る。それよりも問題は、クロエルと、なぜか復活したロック女だ。

 

 「こんにちは、クロエルさん。1週間ぶりくらいやなあ。もう怪我は治ったん?」

 

 「ええ、おかげさまでね」

 

 「お見舞いでも持っていこうと思ってたんやけど、間に合わへんかったわあ」

 

 腹を裂いて臓物を引きずり出されても、数日で完治するとは。さすがノクターンロゼの幹部なだけはある。一体どういう体の構造なのか知らないが、驚異の生命力だ。頭を潰されてもすぐに生えてきそうだし、もしクロエルを完全に殺すとすれば、どんな手段を取ればいいのだろうか。酸で溶かす?消し炭にする?

 

 いや、消し炭にしたはずのロック女が再生しているのだ。それも有効な手段とはいえない。

 

 「そいつ、なんで生きてるん?」

 

 ななみは魔法少女に変身し、戦闘態勢を整えながら、ロック女を指さした。

 

 「確かに焼き殺したはずなんやけどな」

 

 「詰めが甘かったわね、魔法少女。あの後文化祭の現場から、こいつの毛髪を回収したのよ。ほとんど焼けて残ってなかったけど、十本くらい探せば見つかった。DNAさえ採取できれば、復活させるなんて簡単なのよ」

 

 「ロックンロール!」

 

 ロック女がギターをかき鳴らす。

 

 「さっきからロックンロールしか喋ってへんねんけど。前は普通に会話できてたやんな?」

 

 「ま、完全復活ってわけにはいかないのよ。頭の中までは生前の姿に戻せなかったの。言語能力とかほぼ皆無よ。ロックンロールのことしか頭にないわけ。顔や体の皮膚は継ぎはぎで作ってるし、言ってしまえばゾンビみたいなものね」

 

 ずいぶんと荒っぽい修復の仕方だ。毛髪からここまで生前に近い姿に戻せたのは確かにすごい技術だが、なんというか尊厳が踏みにじられている感じがする。これはロックな生き方、いや、死に方ではない。

 

 「名前も生前のまま呼んでるわ。ねえ、ベノム」

 

 「ロックンロール!」

 

 ロック女の名前はベノムというらしい。英語で毒を意味する単語。ロックらしいといえばらしい。

 

 「なんか痛々しいなあ。そんな姿にしてまで死後もこき使うなんて、ノクターンロゼいうんは酷い組織や」

 

 「ウチはブラックなのよ」

 

 「えっ、そうなんですか?」

 

 椅子に座って話を聞いていた梓が、組織の内情を知ってショックを受けた。

 

 「ていうかそれ、その汚い継ぎはぎの肌。誰の皮膚を使ってるん」

 

 ベノムの顔を構成する肌は、色も質感も異なる数種類の皮膚の継ぎはぎで出来ている。

 

 「そんなの決まってるじゃない。殺した少年ヒーローたちからはぎ取ったのよ」

 

 クロエルはそれが残酷なことと、まるで思っていない様子で言った。

 

 やっぱりこの組織は狂っている。ななみはステッキを握りしめ、1週間ぶりとなるクロエルとの戦闘態勢に入った。

 

 

 

 


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