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第3話 SNSで炎上すること

「なぁなぁ、颯真はゆま。昨日のSNSでバズったニュース知ってるか?」


 高校の昼休みに颯真の机の周りにはたくさんの男友達が集まっていた。何を話そうかなんて決めなくても次々と周りから質問が出てくる。返答するにも追いつかない時さえある人気者だ。お弁当の唐揚げを口に入れている時に、颯真は答えた。


「え? ちょ、昨日は忙しくて何も見てないわ」

「何に忙しいんだよ。お勉強か?」

 

 山中 航大(やまなか こうた)は、中学が一緒で近所に住む幼馴染だった。颯真の家庭事情を知る人でもあるが、余計なことは話せないと近づかないように注意していた。


(本当は、政治家の暗殺なんて口が裂けても言えないわな……)

 冷や汗をかきながら、大きな口を開けて唐揚げを頬張った。


「まぁ、昔からお前んちは勉強で厳しかったもんなぁ。もうすぐテストもあるし、感心するわ……ってその話は置いておいて。だから見ろよ、これ。今、バズってるから」

 

 山中 航大は、スマホで炎上しているSNSを颯真に見せた。


「げ、気持ち悪っ」

「だろ?」

「え、なになに?」


 隣の席に座る女子、佐々木 月郁(ささき つきか)が覗き見る。映像には、味噌汁にゲジゲジが混入されたという内容だった。1匹ではない。3匹がうじゃうじゃ泳いでいたのだ。


「これ、なんでお客さんもだけど、店員も気づかなかったのかな」

「だよなぁ。すぐわかるんじゃねぇのかな」

「本当だよな」


 少し嘔吐しそうになった颯真は、口を押さえてトイレに駆け込んだ。


「だ、大丈夫か?」


 山中 航大の声が後ろで聞こえたが、返事もせずに向かう。誰もいない男子トイレ。個室に入って、何も出なかったが唾液だけ吐き出した。


「気持ち悪かった……」

「おいおい。そんなので吐くってどんなんよ。ミッションできるわけ?」

「うわぁっ!? ちょ、お前、なんでここにいるんだよ」


 トイレの個室の天井にいたのは、コウモリの紫苑しおんだった。颯真は腰を抜かしてびっくりした。トイレの床に手をついていた。


「神出鬼没のコウモリは俺のことだよ。ふふん」

「誰も言ってないし、そんなの」

「は?」


 紫苑の視線が怖かった。颯真は慌てて、両手を振ってごまかした。


「ちょっと待て。学校にまで来るのはルール違反だろ。自宅にいる時だけって言わなかったか」


「そんなの聞いてないわ。急ぎの用事ができたからだ。行くぞ」


「ちょ、待てよ。勝手に決めるな。肩をつかむんじゃね」


 突然のことで理解に苦しむ颯真は、手足をバタバタと動かすが、しっかりと両足でつかまれた制服の肩部分が爪にひっかかって取れなかった。逃げることができない。トイレの天井を壊し、空を浮かんでいく。


「ミッションができたんだ。行くぞ」

「いや、聞いてないよ、そんなの」

「お前の母さんがどうなってもいいのかよ」

「だから、脅すんじゃねぇよ。やらないとは言ってない!! 学校に来るんじゃねってことだ」

「……学校がそんなに行きたいところなのかお前は。今時、珍しいやつだな。安心しろ、分身でお前の代わりのやつを用意しておくわ」

 

 コウモリの紫苑は翼をバサバサと勢いよく、動かすと颯真の体がもう一つコピーしたように出来上がった。


「俺は、中島 颯真。神出鬼没というのは俺のことだ」

 

 決めポーズを決めて、挨拶する。周りには誰一人いない。なんで話し出したかはわからない。セリフもどこか変だった。


「おい、紫苑。お前がセリフ考えたな?」

「……ん? なんのことかな。AI搭載されてるはずからミスしないと思うよ」

 トイレから出ると、廊下ですれ違った話したことのない女子に、声をかけ始めた。

「君、スカートの下のパンツは何色?」

「きゃぁ!? 気持ちわるぃ」


 思いっきりのセクハラ発言に、目が飛び出る颯真だ。名前も知らない女子は一目散に逃げて行った。


「紫苑!! 後で覚えておけよ!!」



 鬼の形相で物凄く怖い顔をしている颯真は、いつの間にか、紫苑の技で学校の制服姿から全身黒い服に着替えていた。尚更、真っ黒い恰好で怖さが倍増するが、平気な顔で口笛を吹き、翼を何度も動かして、颯真を足でつかみ、満月が浮かぶ空を飛んで行った。


 遠くの街中で救急車のサイレンが響いていた。

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