第七話 異星の記憶
目を開けた瞬間、タナは強い光に目を細めた。
太陽も月もなく、閉ざされたドームの中で人工的に照らされた光は均一で陰影がなく、自然な温かみはまったくなかった。
その眩しさは目に刺さるようで、不自然で冷たく感じられた。
風も光も、すべてが計算された空間。
自然はそこにはなく、生の気配は薄い。
地面には無機質な光沢があり、道には無数の自動移動機械が静かに動いている。
建物は整然と並び、生きている気配は皆無だった。
歩く人々は皆、同じ髪型で、同じ色の服を着ていた。
その姿はまるで精密な機械の部品のように統一され、誰もが無表情で、まるで魂が抜けているかのようだった。
タナは呟く。
「……なんでみんな、同じなの?」
ルトは黙って周囲を見渡し、静かに答えた。
「生きてはいるけど……止まってる」
その時、突然、鋭い警報音が世界に響き渡った。
「異物検知――対象、接近中」
無機質な声が流れ、複数の人型ロボットが現れた。
赤い光を放つ目が、タナとルトを狙う。
「逃げよう!」
ルトが叫び、二人は慌てて走り出す。
しかし、周囲の人々はまるで別世界の出来事のように無関心で、警報や追跡の異変に一切反応しなかった。
タナの胸は激しく高鳴り、息は乱れ、恐怖と不安が押し寄せる。
「逃げなきゃ……でも、どこに?」
ルトも焦りを隠せない。
追ってくる赤い光の目が迫り、二人を包み込もうとしていた。
「誰も助けてくれない……」
タナは呟く。