表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

問題、1 始まり

照りつける夏の日差しの下、11歳の三又湊は歩き続けていた。父の怒鳴り声が、まだ耳の中で反響している。


「出て行け!」


その言葉は母に向けられたものだった。母は黙ったまま立ち尽くし、父は玄関のドアを激しく閉めて出て行った。湊は自分の存在が、この家族の不和の原因のように感じられて、気がつけば走り出していた。


日が傾き始めた頃、疲れ果てた湊は駅前の小さな公園のベンチに座っていた。財布もスマートフォンも持たず、後悔が押し寄せる。


「あの、大丈夫?」


声をかけられて顔を上げると、若い女性が心配そうに覗き込んでいた。二十代くらいだろうか。

目の下には疲れの色が濃く、黒のタイトスカートは流行を意識した可愛らしいものだったが、パンプスは所々擦り切れている。コンビニのバイト帰りらしく、エプロンを腕に抱えていた。


「迷子?」


湊は首を振った。「家出です」


女性は少し考え込むように湊を見つめ、そっと微笑んだ。


「私は美雪。あ、23歳。怪しい人じゃないから」


そう言って美雪は、コンビニで買ったらしいおにぎりを差し出した。


「もし良かったら、うちで休んでいく?実家じゃないけど、一人暮らしの家」


湊は迷った。しかし、この人になら話せるかもしれない。そんな直感が、疲れ切った心の中に芽生えていた。


美雪の軽自動車は、郊外の住宅街へと向かった。車内は柔らかい香水の香りがした。ラジオから流れる音楽に合わせて、美雪は時々鼻歌を歌う。その仕草には、無理して大人を演じている若さが垣間見えた。


「お腹減ったでしょ。何か食べたいものある?」

Q1 .▶︎ファミレスに行く

   お姉さんに作って貰う

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ