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疲れた時、ちょっと笑いたい時に読んでいただけたら嬉しい作品達

プログラム 10. 保護者競技

作者: はやはや

 とあるキンダーガーデンの会議中。


「保護者競技は必要なんでしょうか?」

「必要です! 親が頑張っている姿は子どもにきちんと伝わります。子どもも盛り上がるし、毎年、楽しみにしています」

「でも、保護者からしたら負担なんじゃないですか? 参加人数も年々減っていますし……」


 時刻は二十時過ぎ。会議が始まって四時間近くが経とうとしている。今日のメインの議題は、運動会の内容について。今は保護者競技について話し合っている。


 ここ数年、保護者競技に参加した親が、はりきりすぎて怪我をすることが続いていた。それに慄いたり、引いたりする保護者が「あの人の二の舞にはなりたくない……」と思うようになっていた。そこで、二年前から希望者のみの参加競技としてるが、年々参加者が減っていく。


 六年前。

 年少、年中、年長のクラス別対抗リレーで年長組だった宇宙そらちゃんのお父さんが、カーブを曲がり損ねて園舎の壁にド派手にぶつかり、その反動で転倒し、左足首の骨を折った。


 五年前。

 大人同士のリレーは、意外と本気になって怪我をするという前年の学びから、子ども達とリレーをすることにした。我が子が走る順に親も走る。

 年中組の直光なおみつ君が走っている時、一緒に走っていたお母さんは、まさかの子どもに対して本気を出し、つんのめって直光君を巻き込む形で転んだ。直光君は顔と手足に酷い擦り傷を負い、お母さんは打撲と左足首捻挫だった。


 四年前。

 リレーは危険だと二年続いた悲劇から学び、動きが少なく華やかに見える競技にした。それは玉入れ。子ども自身にも馴染みがあり、それにパパやママが本気で挑むのを見て、多いに盛り上がった。


 しかし、またもや悲劇は起きた。年少組のさいちゃんのお母さんが、張り切って玉を投げすぎて腕の筋を違えた。全治一週間。


 三年前。

 白熱すると危険なので、ルールを設けようということになった。競技は去年と同じ球入れだけど、職員の号令に合わせて、「せーの!」で五つの玉を数回投げ入れ、どちらが多く入るかという競技にした。


 保護者の協調性のなさが露呈してしまった。号令に合わせない、五つ以上の玉を投げようとする、落ちた玉を職員の目を盗んで投げ入れる……

 あまりにもルールを無視するので、子どもの教育上よくないと園長が判断し、途中で中断したのだ。


 二年前。

 子どもに見せても大丈夫なことを第一条件に、競技を考えた。オセロゲーム。表裏が白黒になったダンボールを黒に変えるチームと白に変えるチームに分かれ、時間内にどちらが多くなるかを競う。

 意外と子どもも盛り上がった。今年こそ何もなく大成功! と思っていた矢先、それは起きた。

 年中組の羅織らお君のお父さんが、ずっと屈み続けていたからか、立ち上がって定位置に戻ろうとした瞬間、ぎっくり腰になった。

 同じチームの人に抱えられるようにして、保護者席に戻り、その後、病院へ送られた。


 去年。

 子どもも知っている、日常の遊びを競技にするのはどうかという意見が採用され、椅子取りゲームをした。

 年長組の雪菜ゆきなちゃんのお母さんと年少組の莱那らいなちゃんのお母さんが、椅子を巡って掴み合い寸前の喧嘩になった。


 雪菜ちゃんのお母さんは普段、物静かな人で有名だったので、あんな豹変する姿を見て、職員は絶句した。雪菜ちゃんもお母さんの豹変ぶりにびっくりしたらしく、

「ママ! ママー!」と自分の席で泣きじゃくったのだった。


 そして今年。

 過去六年。誰かしら負傷したり問題が勃発したりする保護者競技。今年こそ負傷者もトラブルもなく終わらせ、来年から参加人数が増えることを期待したい。


「何か案はありますか?」

「フルーツバスケットとか? これなら椅子取りゲームみたいになる確率は低いかと」

「ゲーム系は辞めて、フォークダンスはどうでしょう?」

「ラジオ体操なら子どももできます!」


 もはや競技でなくなっている。

 てか、そこまでしてやる意味ある? 

読んでいただき、ありがとうございました!

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