081 強化してるのに削られるもの
◆ 魔神殿・ギルドルーム【ロビー】 ◆
お昼ごはんを詰め込んで用事を済ませて速攻ログインして来ました。レーナちゃんもペルちゃんも居ません! そしてお昼寝さん達もログアウトマークのままです! 当然ですね、なんせ15分しか経過してないですからね。もうね、私このゲーム大好きになり過ぎてる。どん太、リアちゃん、おにーちゃん、千代ちゃん、海賊王と歌のお姉ちゃん婦妻、華胥の夢のギルドメンバーさん、皆好き過ぎるんだ……。
「ぅえ……ッ!! んっぐ……っ……!! ぎゃわぃぃ……!!」
「はわわわ、大丈夫ですか? 死なないでください~!」
「殺される、殺される……! がゎぃい……えっ、ぅぐっ……!!」
お……。誰かロビーに来てると思ったら、緊急会場でお会いした……つくねさん! あ、リアモジュ、え? レーナちゃんと言い、つくねさんと言い、奇跡みたいな合法ロリっ子が、増えた!
そしてその合法ロリっ子はガチのロリっ子を見てえずいて泣いておるよ……。そうかそうか、つくねさんもわかる人なのかもしれないねこれは。
「あっ! お姉ちゃん、おかえりなさい! 早くないですか?」
「ただいま~! いやぁ~……急いで来ちゃって……あ、こ、こん、にちは~……?」
つくねさんとお喋りするのは初めてだから、緊張する……。お昼寝さんが入れたんだから大丈夫な人なんだろうけど、緊張する……。緊張する……。
「こひゅ――――ッ」
「えっ、だ、大丈夫ですか?!」
「あ……じょぶ……っす……っ……ッスー…………ッ!」
向こうは私以上に緊張してるねえ!? さっきまでリアちゃんを拝んで泣いてたのが、一瞬にして硬直してフリーズしちゃったよ!? どうしよう、こっちもコミュニケーション能力は高い方とは言えない……! なにか、なにか打開策は――――!
『わんわんわんわんっっ!!! (お腹いっぱ~い!!!)』
「おぇ……!? お、っきい……ふわ、ふわ……っ……!!」
「あ、どん太! ほらまた口にいっぱいべちょべちょつけて、来な? 拭いてあげるから」
『わうわうわうわう…………! (ごめんなさ~い……)』
どん太が来た! いいタイミングだぞどん太……そしてつくねさん、どん太にも興味津々だ。よし、ここはどん太でグッドコミュニケーションに持っていこう。いつだってどん太は初対面のプレイヤーとグッドのコミュニケーションを築いてくれる。開始初日からそう。偉いぞう、どん太ァ……!
「……どん太、こ、このお姉ちゃんが、どん太のこともふもふしたいって」
「ひぇぇ……!? い、いいんでひゅか……!?」
『わう? わんっ!』
「あぎゅぅ――――」
お、お前、どん太……。もふもふしたいって言ってるのに、つくねさんの顔面に初手肉球ぺったんは、失礼でしょォ……!? グッドコミュニケーション失敗じゃーん!
「ふひぇ……!! し、しあわひぇ……!! ここで死にましゅぅ!!!」
「え、死なないで!? つ、つくねさーん? つくねさーーーん???!」
「――――」
き、気絶してる……!? 私がバビロンちゃんに会った時の初期の限界発作症状に、似ている……!!? つくねさん……。リアちゃんとどん太だけで昇天してしまった……。もしかしてバビロンちゃんとか見たら即心停止するんじゃ? 似たオーラを感じる、きっと仲良くなれる……はず。
「どん太……。つくねさん、嬉しすぎて気絶したみたい。起きたら遊んであげてくれる……?」
『わん!! (いいよ!)』
「じゃあ、お願いね……? じゃあリアちゃん、装備強化しちゃおう!」
「は、はいっ! おねがいしますっ」
気絶しちゃったつくねさんはどん太に任せて、とりあえず私はリアちゃんの装備を強化しに行こう。メールの内容物はログインと同時に全部受け取った、強化保護チケ60枚、強化率上昇チケ10枚、大量の☆5魔晶石……これだけあっても出来ないものなのかな……? とりあえず、やってみよう! まずは最大目標のローブ+12からチャレンジしてみよう!
◆ 魔神殿・ギルドルーム【アトリエ】 ◆
………………
…………
……
『【★★魔導師のローブ+8】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のローブ+9】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のローブ+10】の強化に失敗し、【★★魔導師のローブ+8】に下落しました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+9】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のローブ+10】の強化に成功しました』
ゼェーーーー…………!!! ハァーーーー…………!!! なん、なの。このアホみたいな強化成功率の低さと、マッハで溶けていく保護チケと魔晶石は……!? 心臓がぶっ壊れるかと思ったんですけど、というかまだ+10なんですけど!? ごめん、一回これここで止めさせて? 無理。
「だ、大丈夫ですか? お姉ちゃん……」
「大丈夫、致命傷だ」
「あわわわわ……」
「次、帽子……!」
既に貰った保護チケット、15枚も使ったんですけど。もう残り? 45枚しかないんですけど。ああ、ペルちゃんの経験則的に15枚あれば作れる計算で保護チケ渡してきたのかぁ……。だから、60枚なのね。じゃあこれで作れなかったら、クズ運だよ私……。
『【★★魔導師のティアラ+1】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のティアラ+2】の強化に――――』
+4までは安全域! +5から体感70%ぐらい。この時点で既に『うわ、確率低い……』って思うのに、そこから多分60、50、50って感じだと思う。+7まではね、まだいいのよ。まだマシなのよ。
『【★★魔導師のティアラ+6】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のティアラ+6】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のティアラ+7】の強化に失敗し、【★★魔導師のティアラ+5】に下落しました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のティアラ+6】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
マシって言った奴誰だよォ!!!!! なんだこの、なんだこの、うわあああああああああ!!!!! 一気に3枚も消費されてるし、挙げ句+5から動いてないし、吐きそう。ヤバい。これは一般人が手を出して良い領域のコンテンツじゃない!! 一応保護チケっていうか、特定数値まで確定強化出来るアイテムがダンジョンからもドロップするらしいよ? めっちゃ稀なんでしょうねぇ! 今まで一回も見たことないもん!
『【★★魔導師のティアラ+6】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のティアラ+6】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のティアラ+7】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のティアラ+8】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のティアラ+10】の強化に大成功しました!』
あ゛っ゛……! 大成功、なんてあるん……だぁ!? ごめん逆にだよ? 逆に今不安になったんだけどね? 大失敗もあるでしょこれ……。絶対あるよ? だって大成功があるもん。
「はい。帽子出来た……」
「あ、りがとう、ございますっ! 早かったってことは、今度は……?」
「う~ん、調子が良かった方かもしれない」
「よかった……!」
私はおにーちゃんじゃない、お姉ちゃんだからね。あんな超豪運を叩き出せる存在じゃないのよ……。この強化機の起動、リアちゃんには出来ないみたいだから私がやるしかない。つまりおにーちゃんにも頼めない。私が、やるしかないんだ……! 待ってろ~リアちゃん、今全部+10にするからねぇ~!
『【★★魔導師のシューズ+1】の強化に成功しました』
『【★★魔導師のシューズ+2】の――――』
……………………
………………
…………
……
『【★★魔導師のシューズ+5】の強化に失敗し、【★★魔導師のシューズ+4】に下落しました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
悲報、4と5をループしている。さっきのがどれだけ上ブレだったのかを理解させられる。この4と5のループだけで8枚も消耗したからね? やっば……マジで……。え、これ+10を4個もキツイんじゃないんですか……?
◆ …………リンネちゃん強化中………… ◆
『【★★魔導師のシューズ+10】の強化に大失敗し、【★★魔導師のシューズ+7】に下落しました……』
『【強化保護チケット】が消費されました』
オェ…………ッ…………!
『【★★魔導師のシューズ+9】の強化に大成功しました』
「ッスー…………」
これ、失敗したら残り10枚。後11枚しかない。確率上昇チケと保護チケ、一緒に使える。私には耐えられない……+10、これで決めさせてください……。
『【★★魔導師のシューズ+10】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
オエエエッッッッ……!!
『【★★魔導師のシューズ+10】の強化に成功しました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
「リアちゃん出来た、出来た、出来た、出来た。あんよ出して」
「は、はいっ……!」
後10枚で、アンダーウェアの強化を……? 上ブレ来い、上ブレ来い……。もう耐えられない……。早く開放されたい……。
『【★★魔導師の真理+1】の強化に成功しました』
『【★★魔導師の真理+2】の――――』
…………
……
『【★★魔導師の真理+8】の強化に成功しました』
『【★★魔導師の真理+9】の強化に成功しました』
ねえ、凄い、ストレートだよストレート!! 思わず手が止まっちゃた! これは、頂きましたねぇ~~~! はい、保護チケ確率アップチケどーん!!
『【★★魔導師の真理+11】の強化に大成功しました! おめでとうございます!』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
「違う、こっちじゃない……ローブで大成功して欲しかったそれは……はい」
「あうぅ、ありがとうございますっ」
違うじゃん……。このアンダーウェア装備はさ、+10で良いんだよ……。11になれなんて思ってなかったんだよ……。ああ~~~……やるかあ、やるしかないのか、ローブの+12強化を。
「リアちゃん、ローブを過剰強化にするから、見てて……」
「がんばって、くださいっ!!」
見てて、リアちゃん。お姉ちゃんもおにーちゃんに負けてないってところを見せてあげるんだからね。
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
う、うぉ……うぉ……。確率が、腐ってないですかこれ……? +11に3連続失敗、でも数値が落ちてないだけマシ! 保護チケのお陰で壊れないし、本当それだけが救い!!
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に成功しました! おめでとうございます!』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
+12、保護チケ残り5枚。強化成功率上昇チケットは残り、2枚。逝きます……。お願い通って……数値落ちないで……。
『【★★魔導師のローブ+12】の強化に失敗し、【★★魔導師のローブ+10】に下落しました……』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【強化成功率上昇チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+11】の強化に失敗しました。数値が維持されました』
『【強化保護チケット】が消費されました』
『【★★魔導師のローブ+12】の強化に大成功しました! おめでとうございます!!』
あ…………。もう、もう駄目かと思ったのに、大成功ありがとう、大成功ありがとう、大成功ありがとうペルちゃんありがとうペルちゃんペルちゃん出来た、出来たよぉおおお!!!!
「あああああああああああ!!! リアちゃん出来たぁああああ!!!」
「よかった、よかったです……本当にっ!!」
やったよ、やったよ、完走したよ……。ああああもう強化なんて二度とやりたくない、もうやだぁ…………。
◆ 困惑するお昼寝ちゃん in ギルドルーム ◆
えーっとね? お昼ご飯を食べに行って、帰ってきたんだよね。そうしたらまず、リアちゃんが猫耳と猫のしっぽが生えてる。しかもね、ふりふりぴこぴこって動くんだよね。何アレ、やば、めっちゃかわいい……。僕、着けてみたいけど流石にきっつい、きっついよねぇ……。あ、リアちゃんが僕に手を振ってる、可愛い……めっちゃ可愛い……。キュン死しそう。服も変えてもらったんだ、途轍もなく似合ってて、狂いそう。狂う。
そして、えーっと……つくねちゃん。どんちゃんに抱きついて幸せそうな表情で昇天してる。それはもう、とんでもない表情で。とてもじゃないけど16歳の女の子がしちゃいけない表情で昇天してるね。この子も色々とぶっ飛んでるなぁ……。
で? もう一人死んでる方。リンネちゃんはなんで【ドラゴンのぬいぐるみ】に突っ伏して死んでるのかな……?
「おかえりなさい、お昼寝さんっ」
「ただ~ま~……なんで死んでるの? リンネちゃん」
「あの、強化をして、頂きまして……」
「え? 幾つまで?」
「ローブが12……? 他が10って言ってましたっ! 見せてもいい状態になってるので、見ても大丈夫だと思います!」
「狂う」
「え?」
「あ、違うなんでもない。リアちゃんのことをジッと見てたら犯罪者になりそうだから、ちょっと内容はあっちで見るね……?」
「え? は、はいっ! わかりました……?」
本当だ、装備開示状態になってる。リンネちゃん、完全に強化で胃とか心臓をやられて死んでるのか……。どーれ、装備は……?
【★★魔導師のティアラ+10】(極上・ミスティック・頭・空きスロットなし【●】)
・【呪】この装備単品では効果を発揮しない (カード効果含む)
・強化値が+7以上の時、自身の基礎攻撃値+700
・強化値が+10以上の時、自身の魔術攻撃力+50%
・ダメージカット率1%+5%
・【幼少期の魔導師◆◆◆カード】魔術攻撃力+20%
強化可能・装備登録者【オーレリア】・重量0.1kg
【★★魔導師のローブ+12】(極上・ミスティック・体1・空きスロットなし【●】)
・【呪】この装備単品では効果を発揮しない (カード効果含む)
・強化値が+7以上の時、自身の基礎攻撃値+700
・強化値が+10以上の時、スキル【サクリファイス】使用可能
・強化値が+12以上の時、HPが0になる攻撃を受けた時、10秒間HP1で食いしばる
・ダメージカット率2%+10%
・【少女期の魔導師◆◆◆カード】MAG+150
強化可能・装備登録者【オーレリア】・重量0.6kg
【★★魔導師の真理+11】(極上・ミスティック・体2・空きスロットなし【●】)
・【呪】この装備単品では効果を発揮しない (カード効果含む)
・強化値が+7以上の時、自身の基礎攻撃値+700
・強化値が+10以上の時、MP+500%
・ダメージカット率0%+6%
・【大人の階段を昇った魔導師◆◆◆カード】MP回復力+300%
強化可能・装備登録者【オーレリア】・重量0.05kg
【★★魔導師のシューズ+10】(極上・ミスティック・足・空きスロットなし【●】)
・【呪】この装備単品では効果を発揮しない (カード効果含む)
・強化値が+7以上の時、自身の基礎攻撃値+700
・強化値が+10以上の時、使い魔の召喚コストがマイナス1される
・ダメージカット率+1%+5%
・【思春期の魔導師◆◆◆カード】基礎攻撃値+700
強化可能・装備登録者【オーレリア】・重量0.4kg
【★★★魔導師◆◆◆セット】(解禁状態・アルティメット・4部位)
・魔導師シリーズの効果が発揮される
・◆◆◆◆
・基礎攻撃力+500
・魔術攻撃力+20%
――――じゃじゃーん! あーしの昔のコスチュームでーっす!! by◆◆◆◆◆◆、◆◆◆◆◆◆◆◆
うっわー……なんだこれ、つっよぉ……。やっぱりあの時出た狂戦士の兜とか、ああいうのってシリーズ装備なんだぁ……。こういうのを揃えていかないとダメなんだなぁ。というか伏せ字多いな~……。ここ、多分アルスって入るよね大体。魔術師で『あーし』って喋る人、下の階にいるもんねぇ。あ~ネタバレ防止機能をONにしてるからか、僕が。そういえばそんな機能を前にONにした記憶があったわ~。あ、ちゃんとアルスって表示された! なるほどね~。
「あ……。お昼寝さん……おかえりなさい……」
「ただいま~。強化お疲れお疲れ~」
「ありがとうございます……。あんなに、胃がキリキリして心臓バクバクするものなんですね……」
「ちなみにレイジはプラス14のミスティック武器持ってるよ~」
「…………はい????」
「プラス、14」
「ア゛ッ゛…………異常者…………」
「僕もそう思うわ~。+12から大成功した男だからね~」
「豪運過ぎる……」
いやはや、これはここまで強化する価値があるわ~。じゃあ僕も、ドラゴンボーンシリーズで揃えてみようかなぁ? うんうん、新しい目標が知れて嬉しいような、強化沼が見えて怖いような、だねぇ。一応ドラゴンボーンは強化しなくても効果出るタイプのばっかりだし、無理にセットじゃなくても良さそうだし、ぼちぼち集めてみよう~っと。





