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586 終焉を迎えた世界で

◆ ◆ ◆



「――――こんの、くそ、ぁ……!!」

『クリティカル! メルティーナに15ダメージを与えました』

「ぐべっ……! だ、あああ!」

『クリティカル! メルティーナから16ダメージを受けました』


 天界が崩壊する。その瞬間、足元が抜けるような感覚に襲われたと思ったら、私はいつの間にか空から落ちていた。

 それもそのはず。天界、人間界、魔界は元々1つの世界だった。メルティスによって分断されて境目があっただけで、それが崩壊したならば元の状態に戻る。


「くたばぇ……」

「そっち、こそ……くたば、れ……」

『クロスカウンター! メルティーナに14ダメージを与え、12ダメージを受けました』


 そして、空から落ちている中で私はそいつを見つけた。

 全ての力を失い、天界を失い、もはや何も残っていないメルティスの残骸……メルティーナを。


「お、ごっ……」

「どうしぇ、げきとふ、ふれば、どちりゃも、ひぬ!!」

「じゃあ、あんたがしゃきに、くたばんなしゃいぉ……!!」

「ほまえが、ひゃきに、ひねぇええ!!」


 だからこうして!! パラシュートなしのスカイダイビング中にぶん殴り合ってんのよ!! 絶対にこいつより先に死ぬのなんてごめんだわ、殴り倒してぶっ飛ばしてやる!!


『メルティーナに11ダメージを与えました』

「ごぉおお……! はっ……! ちじょうが、もう、ひかいな……!!」

「しゃきに、おひろ!!」

「おまえがひゃきに、いだだだだだだだだだだ!!」

『メルティーナに13ダメージを与えました』


 ああ~……地上と激突する前に、こいつと決着を付けたかったのに……。こりゃあ、地面にキスする方が早いかなぁ……。あ~あ、結局こいつに、トドメは刺せなかっ――――。


『メルティーナが落下ダメージにより死亡しました』

『システム:貴方は落下ダメージにより死亡しました』


 ――――おっしゃぁあああ~!! あいつより後に、地面に落ちたぁあああああああ!!



◆ ◆ ◆



「――――ん、ぁ……?」


 あれ……。ここ、何処……? 空が、青い……。


『さあさあ観客の皆様、長らくお待たせ致しました!!』

『ワールドチャンピオンのリンネ選手が、ようやく目を覚ましましたね~』


 何……うるさ……。ここは……? 見覚えが、あるような……。


『リンネ~♡ あ~あ、目が覚めないかと思って心配しちゃったぁ~♡』

『わ~う! わ~う!! (おはよう! おはよう!!)』

「バビ……!? ど、どん太……にしては、小さくない?」

『リンネちゃぁああああん!! うわあああああああん!!』

「あ、ちょ、ティス様――――おげぇえええ!?」

『世界神ティティエリティスから【熱い抱擁】を受け、即死しました』


 お゛お゛お゛お゛お゛……!! 抱擁だけで、即死!! ど、どうなって……!!


『世界神ティティエリティスが【世界神の権能】を発動し、貴方を復元しました』

『あ~ん、ごめんなさ~い!! 加減がわからなくて!!』


 せ、世界神……!? ティスティス様の名前が……そうか、エクリティス様とヘルミナティスから受け継いだ大いなる力の座(ティス)を1つ失ったから、名前がティティエリティスになったんだ!


「どうして、バビロン様が……それに、皆も!!」

『お姉ちゃまはね、この世界の主になったのよ~? つ・ま・り!』

『ん! 最大最強の権能を手に入れたから、ねえね達を復元した!!』

「か、管理者権限って……こと……!?」

「そういうことですわ~!!」

「ペルちゃん!!」

「そ、ボインボイン姉は管理者権限、ゲット」

『ティティエリティスですぅ!! レーナちゃんはいつになったら覚えてくれるの~!!』


 管理者権限……!! だから、この世界の主……世界神って、ことなのね!? え、じゃあ、この状況は……何!? ここ、コロッセウム(・・・・・・)だよねえ!?


『実は~……世界全土でアンケートを取ってねぇ~? メルティーナはね、ほぼ満場一致で世界から消し去るべきって投票結果になったんだけど~……』

「リンネさんが最終判断をすべきですわ!!」

『そう。リンネが判断すること』

「だからって、なんでコロッセウムなんですか!?」

「丁度落ちてきた。落ちてきて、死んで、コロッセウムの力で再生」

『でもでも、目覚めないからずーっと待ってたのよ~!!』


 落ちてきたのが丁度コロッセウムって、そんな……じゃ、じゃあ!! メルティーナはまだ、生きてるってこと!?


「あいつ……!!」

『待って!! お願い、話を聞いて……』

「へルミナ様……」

『リンネ。ほぼ満場一致の、ほぼ(・・)の部分よ』


 ああ……誰が反対したのかと思ったら……。そっか、へルミナ様は……どこまでも優しすぎるお方ですね……。


『メルティーナは、数え切れないぐらいの悪行を重ねたわ。でも、でもね……! 私には情けをかけた!!』

「ぶっ飛ばす……」

『バビロン達が這い上がってくるのを、待ってくれていたわ!! それに……え?』

「ぶっ飛ばす……!!」


 そんな話はどうでもいいんで、あいつとの決着を付けさせてくださいね。


『ちょ、ちょっと待って』

「お前が先に落ちた」

「ワールドブレイカーに持ち込んだ時は私の勝ちだ」

「ティス様に負けたくせに!!」

「お前には負けていない!!」

「殴り合いで勝った!!」

「あんなの引き分けだ!!」


 こ~……い~……つぅぅぅ……!!


『あっはははは!! やっぱり、ぶん殴って勝敗を決めるべきね!! 幸いにもここはコロッセウム、お互い能力はなぁ~んにもない。強制的にレベル100になる、何一つ不公平がない神聖なリング……そうよねぇ? ガトランタ王~?』

『うぅむ!! ここはコロッセウム、勝負事に白黒を付ける神聖な勝負の地である!! …………娘よ、今ので合っていたか?』

『神聖なる勝負の地ではなく、決戦の地でしたわ。お父様……』


 なぁるほぉどねぇ……? 決着を付けるには……持って来いの場所ってわけだ……。


「……我こそは天下一決定戦団体王者にして、光の女神メルティスをこの地に叩き落としたワールドチャンピオン!! 絶対王者である!!」

『リ、リンネ……?』

「ほざけ小娘!! 私はお前になんぞ負けていない!! 私が負けたのは、大いなる力を2つも保有していた卑怯な世界神!! お前とはせいぜい引き分け、図に乗るな!!」

「ならここで白黒付けようじゃないの!! 先にぶっ倒れた奴が敗者!! 最後まで立っていたほうが勝者だ!!」

「望むところだ、格闘戦で私に及ばなかったのを忘れたかぁ!! 後悔させてやるぞ!!」

『――――おぉぉおおっと!! 挑戦者メルティーナが、ワールドチャンピオンリンネに、決闘を申し込みましたぁあああ!! ガトランタ王、これはもう合意と見てよろしいですね!?』

『…………』

『あれ……? ガトランタ王? お~い……?』

『うっ!? うぅむ!! 決闘を、認める!! これよりガトランタコロッセウムにて、1対1のデスマッチを執り行う!! 皆、勝者を予想し、盛大に賭けるが良い!!』


 格闘戦で及ばなかっただぁ~? 噛みつきまで使って来たクソボケカスがイキりやがって~……!! その綺麗なツラが見るも無惨なタコみたいに膨れ上がっても、ぶん殴り続けてやる!

 ん……? あ? ちょっと待って、賭け(・・)……?


『ほ~らね? ワタシの言った通りになったでしょ~?』

『ん、ねえねはリンネのことをよくわかってる』

『本当に、決闘になっちゃったわ~……!!』

「リンネ殿!! リンネ殿が負けるとは思いませぬが、相手は元光の女神!! こう、ぐっと踏み込んで、鳩尾(みぞおち)にズドン、ですよ!!」

「……ふふっ、オッケー千代ちゃん。サポーター席でどーんと構えて見てなさい!」

「リンネ様~!! お腹が空いていませんか? 大丈夫ですか? タコ焼きがありますよ!」

「ティアちゃん、今から殴り合いって時にタコ焼きは遠慮したいかなぁ……!」


 皆、ティス様が元通りにしてくれて……。ああ、本当に……!!


「ひんへ、これ、おいひい!!」

「ゼオお姉ちゃん! 今りんねーさま、食べ物は要らないって言ってた!」

「リンネ、固形物はマズいだろう? ほら、液体栄養食があるぞ」

「ちょっと血を吸わせて頂けませんか? とってもフレッシュで、美味しそうで……」

「ゼオちゃん、要らない。マリちゃんも要らない。デロナちゃんありがとう。カーミラさんは……何をシレッとした顔で吸血姫の時の姿に戻ってるんですか。駄目に決まってるでしょ」


 本当に!! 食いしん坊ばっかりだな、うちの従者は!!


『リンネ……』

「あ、シリアスオニールだ!! リアちゃん、こいつを荷物持ちにして私の勝利祝賀パーティ用の買い出しに行ってきて!!」

「にゃぁああ~……面倒くさいです」

「ツニャ缶買い放題」

「あ~!! あ~あ~あ~!! 行きます行きます!!」

『ワウワウ~!! (僕も行く~!!)』

『ぴゃう~!! (僕も行くよ~!!)』

『(´;∀;`)そんなぁああああああ!!』


 おお、ジャンボが実体を取り戻してる……。そうか、皆……全盛期の姿に復元されて……。


『……うむ。健闘を祈る』

「リンネ様の勇姿!! この不肖メルメイヤ、一瞬たりとも逃さないよう録画致します!!」

「ありがと、ヴァルさん。私の格好良いところ、見ててよね。めーちゃんは……パンツを映すのだけは禁止ね」


 めーちゃん、今度はラッキーショットなんて撮影しちゃ駄目だからね? あれ、えっと……エスちゃんは……。


「リンネ様」

「うわああ天使!! ふんっ!!」

『ヒュリエルに攻撃を受け止められました』

「困りました。後でまた転生を頼みませんと……」

「ああ、エスちゃんがエルサイズの時の!! あ、ごめん、視界から外れておいて。エスちゃんを撫でたい気持ちと、天使をぶん殴りたい気持ちが衝突してるから」

「はわわわ……」


 はわわわって、声は可愛いのに天使の姿をしてるのが、うぅん!! 赦せぬ……!! ティアちゃんに頼んで、後で悪魔化して貰わないとね。


「…………」

「ん……?」


 何よ。何見てんのよ、メルティーナ……。はっは~ん……さては……。


「羨ましいか?」

「…………何?」

「羨ましいかって言ってんのよ」

「ふざけるな」

「私には大勢いる!! 信じ合える仲間も、素晴らしい友人も、尊敬するお方も、大勢が私を支えてくれている!! お前はどうだ、メルティス!!」

「私にそんなものは必要ない!!」

「本当にそう? 嬉しかったんじゃないの!! ヘルミナがお前のために、身を挺して世界の決定に異を唱えたことが!!」

「……ッ」


 図星ね。お前は間違えたんだよ、メルティーナ。本当は1人が嫌で、ヘルミナのことが好きだったはずなのに、独占欲が強すぎるあまりに別け隔てなく愛を振りまくヘルミナを拒絶した。

 

「舌戦は、私の勝ちってところかな?」

「ほざけ……!!」

「負けたほうがこの世界から出ていく!!」

「何……?」

「私が負けたら、もうこの世界に帰ってこない。でも、お前が負けたなら、この世界から消えて」

『あら!! それだったら、ちょうど良い送り先があるわよ~リンネちゃん!』


 ん、え? どど、どうしたんですか、ティス様……?


「せやな、ちょうどええ場所があるなぁ?」

「あ~エリスちゃんも、ピーンと来ちゃったかも~」

「だな。そりゃあ面白い提案だ」

「んっふっふ~。そうだねぇ、第1ワールドケテル(・・・・・・・・・)から、追放ってのは凄く面白い提案だ~」


 だ、第1ワールド……? ケ、テル……? は、はい……?


「ん、リンネ、多分死んでたから。知らない?」

「そうですわ!! リンネさん、実はこの世界は第1ワールド!! ケテルという世界だそうですわ!! そして第1ワールドがクリアされたことで!!」

「第2ワールドコクマーへの転移権が認めらいっだぁあああ!?」

「もってぃ!! ペルセウス嬢ちゃんに言わせたらんかい!!」


 だ、第2ワールド……コクマー……!? え、まさか……じゃあ、もしかして!!


「お? リンネちゃんはもう気がついたって顔をしてるよ~!!」

「流石、博識だな。そうだ、お察しの通りってやつだ」

「もってぃ!!」

「むぐっ……」

「そうですわ!! この世界は生命の樹に準えた名を冠する1つの世界!! 10の世界の内の1つ、ケテルだったのですわー!!」

「ん、だからメルティーナが負けたら、その世界に追放」

「な、な、な……!!」


 な、ななななな、ななななななな!?


「なんっだってえええええええええええええ!? じゃあこの世界は守護天使メタトロンが存在しているってことぉ!? 天使の世界ってこと!? こんな世界は破壊する!!」

「いやいやいやいや!! 待って落ち着いて、名前を冠しているだけで、守護者はティティエリティス様だから!!」

「あ、そうなんですか」

「うわあ急に落ち着いた……」


 あ、そうなんだ。守護天使のほうは居ないのね。良かった、この世界を破壊しないといけないところだった。天使はね、やっぱり滅ぼさないと。


「それじゃ……。あんたがそれでいいなら、この条件で決まりよ」

「望むところ」

『待って!! 私も……全ての力を剥奪されても構わない……! だから、もしメルティーナが負けたら、私を一緒に、送って……』

「勝手なことを!!」

「私は構わない。バビロン様は?」

『ん~? 良いんじゃな~い? 好きにすれば?』

『ありがとう……。ありがとう……』


 決まりね。私が勝ったら、メルティーナはその第2ワールドのコクマーとやらに追放! 私が負けたら、潔くこの世界から出ていってやるわ。まあその時はどうせ……。


「リンネさんが負けたら、私もコクマーとやらに付いていきましょうか……。ふふふ……」

「万が一にも、リンネ殿は負けたりしませぬ!! あ、でも、えっと……その時は此方も……」

「まあリンネちゃんが負けると思えないから、僕はもうリンネちゃんが第5ラウンド辺りで勝つ方に賭けちゃおうっかなぁ~!!」

「わたくしはリンネさんが勝つ方に、全財産を突っ込みましたわ!! 負けたらどうせ引っ越しますし、このお金は使えませんもの!!」

「思い切りが良すぎ~」

「ティアラはえーっと、タコ焼きさんは賭けられますか……?」

「ティア、それは多分賭けられない。かけられる違いだが、ソースぐらいならかけられるだろうな」


 全員、私に付いてきてくれるだろうけどね!! 良かったわね、負けた時に一人ぼっちじゃなくて。ヘルミナにあーだこーだ文句を言うくせに、嬉しそうにしやがって……ムカつくわね!!


『それでは、赤コーナーよりワールドチャンピオン!! リンネ選手!! 青コーナーより挑戦者、世界中を苦しめた大罪人!! メルティーナ選手!! 入場してください!!』

「かかってこい!! ぶっ飛ばしてやる!!」

「ほざけ小娘!! 叩きのめしてやる!!」

『両者、準備はよろしいですね!? レディーーッ!! ファイッ!!』


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