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575 神々の黄昏・10

◆ ◆ ◆



 完全に予想外の出来事だった。いや、今までの経験からすれば、予想出来る出来事だったかもしれない。少なくとも、我が神(リンネ)なら予想通りだと言っただろう。


「お……ばけ、殿……」

「千代さん!!」

『くっ……!』


 背後から一突きだった。ヘクトールの攻撃を避けるために、大きく後ろへ跳躍したところを、無慈悲な一突き。青黒い大槍が、姫千代の心臓を貫いていた。


『遅かったなデイポボス!!』

『ああ、トラブルでな。それより早く片付けるぞ。地下施設を取り戻す必要がある』

『ネメシスが守っているはずだ、問題ない!!』

『奥で戦闘音は聞こえたが、通信は繋がらなかった。さて、残るは硬いだけのチビか』

「フリオニールさ」


 まるで羽虫でも払うかのように、大槍の一撃でヒュリエスの体がバラバラに吹き飛んだ。何も出来なかった。また、守れなかった。

 また、全滅だ。最後まで俺を信じて戦ってくれた皆を、守れなかった。


『おい、まだもう1匹残ってんだよ。硬いだけの雑魚がよ』

『ん? ああ、巨大化する騎士が残っていたのか。小さくなりすぎて気が付かなかったぞ』

『手足をバラしても死なないと思ったら、こいつは中身が空洞なんだ!』

『鎧に宿った怨霊ってやつだろうな。黒き神は死者を操る力があると聞いたぜ。ただ、消滅しちまったならそりゃあ出来ねえだろうけどなあ!!』

『なるほどな。消滅しては復活も出来ぬようだと、ネメシスが人間界で情報を得ていたな』


 俺にはもう、何も出来ない。今はただ、こいつらが1秒でも長くここで時間を無駄に使ってくれることを祈るだけしか出来ることがない。

 再生能力は、もう使えない。巨大化にすべてを注いだ分、再生する力が残っていない。ただ、踏み潰されるのを待つのみだ。


『おい、てめえ随分手こずらせてくれたな、ええ? おい!!』

『無駄なことをしている時間はない。さっさと』

『――フリオニール!!』

『白い巨人!! カサンドラとドルスは、やられたのか!? 連絡を入れる余裕もなく!!』

『ヘクトール、俺達で止めるぞ!』

『パリス、死に損なっている奴らを蹴散らしてくれ! まだ周囲に潜んでいるはずだ!』

『ああ、任せておけ』


 マリアンヌ……。1人でこいつらと戦おうと言うのか……。無茶だ、流石の新型機でも、やられるだけだ……。1人では、こいつらには勝てない……。

 

『最期に言い残すことはあるかよ、鉄くず野郎』


 言い残すこと、か……。そうだな……。


『……俺は、戦利品を集めるのが趣味でね』

『ああ?』

『最初に自爆したデイポボスのパーツ、あれは紛れもなく俺達が一度掴んだ勝利だ。そうだろ?』

『…………何が言いてえ』

『記念に墓まで持っていっても良いだろって言ってんだよ。ぶっ壊れたパーツぐらいくれよ、これは俺達がぶっ壊したんだーって自慢するのにさ』


 完全敗北ってのも癪に障る。せめて、一部勝ったっていう証拠が欲しいよな。これで我が神に『少しは役に立ったんだよ』って言えるしな。


『なんだ、くれないのか? 図体はでかいくせに、ケチな野郎だな』

『……そらよ。あの世への駄賃だ、釣り銭は要らねえぜ!! こいつもくれてやらあああ!!』


 ああ、ありがとよ。図体だけじゃなく、器もデカいやつだな、お前は。そうさ、お前達は強い。そして俺達は弱く、1人じゃとても勝てそうにない。だから……。


『フリオニール!? よくもフリオニールを!! あ、あっ……!?』

『遂に弾切れか! ヘクトール!!』

『キェアアアアアアアア!!』

『雑魚も弾切れ野郎も、纏めてぶっ潰してやるぜ!!』




 ――――まだ、こんな俺を信じてくれる仲間のために。




「…………が、ん、ばって」

『レーナは、まだか……!! 一時撤退を……!?』

『なんだ、後ろ!?』

『なんの光だ!! おい、パリス!!』

『知らねえよ!! なんだ、この光は!? あの鎧野郎か!?』


 ――――俺は…………人間への未練を、捨てるぞ!!



◆ ◆ ◆



『シャルナーデがフリオニールに【完全なる不死鳥のお守り】を渡しました』

『アラート:フリオニールが取り返しのつかない選択をしました』

『システム:フリオニールに【不死鳥の加護】が発動、英雄(・・)フリオニールが復活します!!』

「あ゛…………」

『あれは、いったい何が……!?』

「うちの英雄がね、復活した光かな」


 そっか、自分には英雄なんて相応しくないって、ただの1人の人間だってずーっと逃げてたのに、この土壇場で英雄として蘇っちゃったか。


『1人復活した程度で……』

「そうかな? 英雄って昔から一騎当千と言われてるし、たった1人だと思ったら大間違いかもよ? それに……!!」

『【魔神流星斬】を発動、Block! トロイが鍔迫り合いに持ち込みました!』

『それに、なんですか!!』

「英雄は人間離れしてるものよ」


 今、フリオニールのステータスを開いてチラッと……一瞬だけそれ(・・)を見た。私の見間違いじゃなければ、フリオニールは人間を……辞めている。


『フリオニールが【シールドアサルト】【極光連斬】【次元連斬】【次元連斬】を発動』

『エリアアナウンス:暴虐なるパリス、損傷甚大! 撤退を開始!』』

『何!? 今のは――』

「隙ありよ!!」

『【魔狼爆滅脚】を発動、クリティカル! トロイに44,700Gダメージを与え、大きく吹き飛ばしました!』


 シールドアサルトからの3連撃。私の知っている限り、この連撃を同時に繰り出すことは到底不可能。そう、普通の人間には絶対にね。神ですら不可能な連撃よ。

 じゃあどうやってこの連撃を繰り出したのか? その答えは、私がさっきチラリと見たステータスの最下部にあるのよ!!



【名前】英雄フリオニール 【レベル】1000

【属性】ワールドヒーロー属性・不死属性・死霊系・中型 【性別】なし

【クラス】英雄

【称号】英雄・唯一無二 【魔界侵食度】0

 ………………

 …………

 ……

【装備】

右手:□■ムーンライト・フォルトゥナ・ドッペル+20【O】

左手:□■ムーンライト・テュケー・ドッペル+20【O】

右手2:■渦巻く直剣(レヴァンタン)+20【O】

左手2:■逆巻く曲剣(リヴィアサン)+20【R】


頭:□英雄の鎧+20【O】

体1:□英雄の鎧+20【O】

体2:□完全なる不死の英雄の魂+50【O】

足:□英雄の鎧+20【O】


アクセサリー【1】:エクストラアーム・デイポボス

アクセサリー【2】:エクストラアーム・デイポボス

アクセサリー【3】:追加武装・右手2

アクセサリー【4】:追加武装・左手2



『4本腕……!?』

「言ったでしょ、英雄ってのはね!! 人間離れしてるものなのよ!!」

『しかし、所詮付け焼き刃です! 手数が増えたところで』

『フリオニールの追加効果により【追撃・極光連斬波】【追撃・次元連斬波】【追撃・次元連斬波】【幸運・見えざる刃】【幸運・見えざる刃】【幸運・見えざる刃】【幸運・クールタイムリセット】が発動!』

『エリアアナウンス:英雄フリオニールが暴虐なるパリスを撃破しました!』

「手数が、なんだって?」

『手数が……。手数が……』

『(ば~ん)』


 英雄ってのはね、人間離れしてるものなのよ。腕が4本ぐらいあっても不思議じゃないの。復活した時にデイポボスの残骸を吸収してね、腕を増やしたっておかしくはないのよ。多分。


『白銀のレーナが【スナイピングショット】を発動、クリティカル! ヘッドショット! トロイが204,800Gダメージを受けました』

『うっ!? どこから……!!』

「探してる時間はあげない」

『【魔狼流星斬】を発動、Block! トロイに攻撃を弾かれました』


 さすがレーナちゃん。向こうの戦力は十分だと判断した瞬間、トロイちゃんとの戦闘の援護にきてくれたわ。私でさえどこから狙撃してきたのか全然わからない……。多分、フリーになった時、狙撃特化の構成へ変更してきたんだね。そうなると、もう1人も……。


「ちょおおおおお~わぁあああああ~!!」

『新手!?』

『ペルセウスが【プリンセスメテオール】を発動、Block! トロイが攻撃を弾きました』

「行くよ、合わせることは考えなくていい!!」

「当然! 合わせられる気がしませんもの!!」

『ネメシス!! ネメシス、何をしているのですか!!』


 呼んでも来ないってことは、そういうことよ。うちのカーミラちゃんとめーちゃんが死んでないし、相手に動きもないってことは……どこかで釘付けにしてるってことよ。どうせ、思いもよらぬ方法でとんでもないことをしてるに決まってるんだから。


「ふぅ~……はぁああああ!!」

『ペルセウスが【プリンセスハリケーン】を発動』

『【魔狼斬滅波】を発動、スキルリンク! 【魔狼ハリケーン】が発動しました!』

『乱気流!! スナイパーが居るというのに、長所を潰すとは』

『白銀のレーナが【スナイピングショット】を発動、ピンホールショット! トロイが270,500Gダメージを受けました』

『ぐっ!? お、同じ場所に……!!』


 さあ、風がこっちに向いてきた。勝負はここから、焦ったほうが負ける……!! 一手一手確実に、勝利への一手を進ませて貰うよ!!


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